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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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426.特殊クエスト・吸血皇を滅ぼせ

「つまり、エルザがヴァンピールだから強制になったわけか」


 エルザの暴走から一時間後、宿にてようやくメルシュ達と連絡が取れた。


「三十四ステージの隠れNPCは特殊で、エルザがトドメを刺すと手に入れられる特別仕様みたい」

「エルザが?」


 隠れNPCと契約出来るのは一人一体のみ……どういう事なんだ?


「詳しいことは、ジュリーも忘れちゃったって」

「おい、名前!?」


 情報源がバレたら、ジュリーと協力者の身が危険に!


「もう、奴等にバレてるよ。ちなみに、ジュリーの協力者だった女はクリスの親戚だったみたい。この前の突発クエストで、クリスが直接レプティリアンから聞いたって」


「もしかして、クリスが隠れNPC扱いでこの世界に来たのは……」


「協力者への罰だったようだよ。ちなみに、彼女がその後どうなったのかは分からない」


 レプティリアンと関係があったクリスがゲームに参加させられたのは、そういう理由か。


「クリスは大丈夫なのか?」

「実は今の話、まだ私しか知らないんだよね。アオイの件もあって、みんなには言い辛かったみたいでさ」


 下手をしたら、ジュリーとギクシャクしてしまったかもしれないしな。


「クリスを気に掛けてやってくれ、メルシュ」

「うん。でも今は、クエストの話に集中しよっか」

「……そうだな」


 今は目の前のことに……トゥスカ達と合流するまでは。



             ★



「ようやく着いた」


挿絵(By みてみん)


 十八時前、森の中心に聳える崖、その上にある吸血皇の城の門扉前へと辿り着く俺達。


 出来る限り、TP・MPの消費をしない飛行手段でここまでやって来た。


「メルシュ様の話では、18:00になると同時に大量のモンスターが街中に放たれるのでしたね」


「しかも、クエストを受ける受けないに関係なくだったな」


「だから、十八時には全てのお店が閉まってしまうんですね」


「宿の中に居れば関係ないらしいけれど、町や村に危険な時間帯があるのが当たり前になってきたなー」


 ナターシャ、リューナ、チトセさん、マリナが話し出す。


「城の奥から、沢山の気配が近付いてきます」


 クオリアがそう口にした瞬間、俺が開いていたチョイスプレートの時刻が18:00を刻んだ。


「門扉の隅へ」


 八人全員が門扉に貼り付いた瞬間に扉が勢いよく開き――――城の中から大量の蝙蝠や悪魔、虫モンスターなどが現れ、町の方へと一直線に向かった。


「あれ程大量のモンスターを相手にしていたら、ここに辿り着くまでにだいぶ時間をロスしていただろうな」

「これだけでも、かなり時間に余裕が生まれるらしい」


 教えてくれたのはメルシュだけれど、たぶんジュリーからの情報なんだろう。


「さっさと行くぞ」


 庭に出現した藍色の甲冑モンスター、リビングアーマーに向かって“光線拳銃∞”を撃ち出すエルザ。


 あの銃はなんの消費も無しで“魔力光線”を撃てるから、取り敢えずの攻撃はエルザに任せるか。


「前は私が」


 ゴツくて華美な“ロイヤルロードランス”と“ロイヤルロードシールド”を構えたナターシャが、エルザがうち漏らしたリビングアーマーを打ち倒しながら突き進んでくれる。


「ねえ、ドアが!」


 城の巨大扉が、勝手に開いていく!



「お待ちしておりました、今宵のお客様方」



 豪奢な内装のエントランスが飛び込んできたと思ったら、いきなり執事風の老人が現れた!?


「わたくしめは、主の部屋への案内係をさせて頂いております、スジャと申します」


「なんだ、モンスターじゃないのか?」


 リューナの疑問は、俺達も同様だった。


「主の部屋への入り口は四カ所ございますが、一カ所につき一パーティーしか通ることが出来ません」


 嫌でも戦力を分散させなきゃならないのか。


「エントランスの階段を上った先にありますのが”淑女達の花園”、右扉から繋がるのが”数多の墓所”、左扉は“千花の庭園”、正面が”コックの戦場”となります」


「コセさん、どうします?」


「どう……」


 聞いていないんだが、メルシュ?


「私のパーティーは上に行くぞ!」


「「「やっぱり」」」


 俺とチトセさんとマリナが、リューナの言葉に対してハモってしまった。


「な、なんだよ……」

「なら、俺たちは右に行くか」


 砂漠を越えたときと同じ面子で、リューナ達は”淑女達の花園”。俺達は”数多の墓所”へと向かう。


 他の二カ所も気になるけれど、今はこれ以上パーティーを分散させる余裕は無い。


「どちら様も、ごゆっくりお楽しみくださいませ」


 吸血皇の執事の声が、やたら不気味に聞こえた。



●●●



「さてと」


 エントランス左右の階段を上り、豪奢な通路へと足を踏み入れる私とサカナに、チトセとエルザ。


「メイドさん?」


 通路の両脇に(はべ)っているメイド達は、私達に向かって礼をしていた。


「宴はこの先にて開かれております。どうぞ、ごゆるりとお楽しみくださいませ」


 こんな対応をされたら、調子が狂うな。


「さっさと進むぞ」


 エルザが淡々と進み、通路奥の扉を開く!


 途端にオーケストラの躍動するような音色が流れ出し、ドレスを着飾った沢山の女達が躍り始めた。


 しかも、女性二人がペアになって社交ダンス? をしているようだ。


「フフフフ!」

「フフフ」

「ウフフフフ」


「……期待外れだな」


 美人揃いだが、喜怒哀楽もないモンスターではつまらない。


「いったいなにを期待していたのですか、エリューナさん?」

「このマスターも、それなりに問題はあるようですのね」

「とっとと片付けて、あの男を殺しに行くぞ!」


 チトセもサカナもエルザも、好き勝手言いやがって。


「ん?」


 前触れもなく曲が止まり、この部屋に居る者達が一斉にこちらを見た!



「「「キャハハハハハハハハ!!」」」



 全ての顔が歪み――亡者悪鬼が如き醜い顔となって、襲いかかってきただと!?


「――“神代の剣影”!!」


 黒のシャシュカ、“終わらぬ苦悩を噛み締めて”に九文字を刻んで、青白き剣の影を鞭のように振るい――六体を両断!!


「“大海魔法”――マリンバイパー!!」

「シャワーモード!」


 ネレイスの海水蛇とチトセの溶解液により、見る見る数を減らしていく化け物共。


「コイツらは大して強くない! 消耗しすぎるなよ! “鞭化”!」


 エルザが漆黒のジャベリン、“ブラッドアブゾーバー”の柄から先を撓らせながら伸縮――只の一撃で四体を屠る。


「“心霊術”、ポルターガイスト」


 パーティー会場の料理やらテーブルやらが、一斉に飛んで来た!?


「“蒸発魔法”――イヴァポレイションボム!!」


 チトセが水蒸気爆弾を撃ち出した瞬間、急いで身を屈める私達!


 すぐに爆発の衝撃が部屋を覆い、飛んできた物事、大半の亡者悪鬼を葬り去ったようだ。


「さっきのはアイツの仕業か」


 オーケストラの指揮者と思われる男!


「援護をしろ、エルザ!」

「仕方ないな!」


 指揮者とは斜めに駆けながら光線を撃ち、私が正面から最速で接近できるようにしてくれる!


「“心霊術”、パッチンラップ」


 奴が指を鳴らした瞬間――軽い衝撃波に襲われた!?


 威力が低い分、必中の能力といった所か!


「“心霊術”、生き霊」

「“逆さ立ち”」


 地面から生えてきた腕の群れを勘でジャンプしながら回避し、天井へと落ちながら“神代の剣影”を振るい――指揮者の身体を切り裂いて仕留める!


 すぐに“逆さ立ち”を解いて着地。


 その間に三人は、残りの亡者悪鬼を仕留めてしまったようだ。


「さすがだな」


 ツェツァ達に負けないくらい頼りになる奴等だ。


「……ツェツァ、ルフィル」


 二人は、アテルとかいう男の元で上手くやれているのだろうか。



○”心霊術士”のサブ職業を手に入れました。

○“宮廷指揮者の指揮棒”を手に入れました。

○“高級シルクドレス”×18を手に入れました。

○“亡者悪鬼の指輪”×4を手に入れました。

○”生贄の遺骨”×36を手に入れました。



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