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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第12章 残滓が消えぬ間に

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425.ピラミッド型都市の神秘

「階層がどうのって話だったけれど……これって浮いてるんだ」


 第一階層の中心部から流れ落ちる滝のような物から突き出し、ゆっくり下に動く足場に乗って第二階層に降りてみると……第一階層を支える柱などはなく、十メートル以上高い場所に浮いている事が分かります。


 第一階層を下から見ると空洞も多く、第二階層に太陽の光が届かない場所はほとんど無さそうです。


「ここには、色んなお店があるんでしたっけ?」


 下で合流したのち、メルシュさんに尋ねる。


「うん。ここは珍しく色んなお守りが売られているから、一通り買うつもりだよ」


「メルシュ、ここからは別行動で」

「それじゃ、二時間後には第三階層で合流を」


 ジュリーさんとユリカさんのパーティーが離れていく。


 第三階層へは、乗ってきた滝のエレベーターでそのまま下れば良いそう。


 反対側には上りの滝エレベーターがあるため、今から第一階層に戻ることも可能のようです。


「それじゃ、私も食材の買い込みに行こっかな」

「私は武器が見たい」


 サトミさんとルイーサさんのパーティーも離れていった。


「じゃ、クマム達は付いてきて」

「はい」


 河を一緒に超えてきた面子で、多種多様な像? が並んでいるお店の前へ。


「いらっしゃい。安くしとくよ」



○以下から購入できます。一律2500Gとなります。


★耐火のお守り ★耐水のお守り ★耐雷のお守り

★耐氷のお守り ★耐鉄のお守り ★耐風のお守り

★耐土のお守り ★耐光のお守り ★耐闇のお守り

★耐竜のお守り ★耐古のお守り ★耐霊のお守り

            :

            :



「色々ありますね」

「簡単に手に入るから大した効力は無いけれど、地味に役に立つ物だからね。全部三十ずつ購入するよ」


 もしかして、レギオンメンバー全員分を購入するつもりなのですか?


「クマム」

「どうしたの、ナノカ?」


 魔神子の隠れNPCである彼女をナノカと呼ぶの、まだちょっと違和感がある。


「さっき、こっちを見ている奴が居た。たぶんエルフだ」

「エルフが? 数は?」


 メルシュさんが尋ねた。


「見えたのは一人。すぐに姿を消した。得物は、手にしていなかったから分からない余」

「武器を見せないようにしていたとしたら、戦い慣れしてそうだね」


「それって、厄介な相手にマークされたってこと?」


 ナオさんに尋ねられる。


「断言は出来ないけれど、油断しない方が良いって事は確かだね」


「なら、さっさと用を済ませて皆と合流しましょう。ここはNPCが多いから、紛れて接近されちゃうかも」


 メルシュさんの発言に対し、カナさんからの暗殺者のような指摘。


「ですね」


 頭にターバンを巻いた半裸の褐色肌NPCが沢山おり、常に往来を行き来しているこの場所。


 黒い布を全身を覆う形で被った女性達も一定数居て、顔がほとんど見えない。


 彼等に格好を似せられたら、本当に気付けないかもしれない。


 狙われてるかもって思うと、隠れNPCであるナノカやメルシュさん達が、いつも以上に頼りになる存在に思えてきます。



●●●



「おお! あんたら、外から来たのか! よく辿り着けたな!」


 “吸血皇の暗都”の宿と思われる建物の中に入ると、細身のおじさんが声を掛けてくる。


「あんたら、冒険者だよな? 頼みがある……あの城の主、吸血皇を殺して来てくれ!」

「区長! 今まで、何人の冒険者が失敗したと思っているんだい!」


 今度は、宿の女将と思われる女性が騒ぎ出す。


「たとえ成功したって……」


「だ、だが、どちらにせよ、冒険者様が先に進むには、吸血皇と戦う必要があるのだ。問題あるまい!」


「もしかして、ボス部屋に入るには、まず城に行かなきゃならないってパターンなのか?」


 リューナが口を開く。


「あの古の扉は、城の主たる吸血皇によって封じられておる。奴を殺さなければ、扉を開くことは出来ん」

「たとえ出来ても、あの男が死んでいるのはたったの三日だけだろう。奴を完全に滅ぼす方法なんて、この世にありはしないのさ。黙って今まで通り……一月に一人、若い娘を差し出せば良いじゃ無いか……ぅう!」


 エプロンの裾で顔を隠す、女将さんNPC。


「以前、彼女も娘を差し出した事があったんじゃ。暗黙のルールとして、最初に出来た娘は十二の時に奴に捧げる事になっているんだよ……わしも、初めての娘を」


「つまり、吸血皇を倒さないと先に進めないってわけなんだ」


 マリナが結論を述べてくれる。


「宿に着いたら、夜になる前に連絡するようにって言われてたけれど……」


 ジュリーならなにか知っているはず。


「頼む! 復活するにしても、三日平穏に暮らせるだけでもありがたい!」


「平穏に?」


 三日だけでも平穏って、どういう意味だ?


「もし奴を完全に滅ぼせるなら、特別な報酬も出そう! 頼んます、冒険者様!!」


 普通の手段だと復活するみたいな事を言っているし……まずは情報収集が先――



○依頼を受けますか?



 いきなりチョイスプレートが現れた!?


 しかも、NPC以外のメンバー全員に表示されている!



○今すぐ受けなければ、区長から特別な報酬を受け取れなくなります。



「ノゾミからは聞いていないぞ、こんなの」


 リューナ……確か、ノゾミっていうオリジナルプレーヤーから情報を得ているんだっけ。


「となると、変更された仕様ってわけか」


 知っていれば、ジュリーはもっと早く教えてくれていたはず。


「私は受けるぞ。マスター、コセ」

 

 チトセさんと俺に訴えてくるエルザ。


 報酬は惜しいけれど、今は危険な気がする。


「なんの情報も無いんだ。今はまだ……」


「言ったはずだ――父親を殺すのを優先させて貰うと!」


挿絵(By みてみん)


 エルザの強い眼力。


 もしかして……設定を遵守した強制行動に入っているのか?


 普段、自分達のことを設定がどうとか言う隠れNPCにしては、態度が堂に入りすぎている。


「近くに来たからなのか解る。あの城に、奴は居る!」

「おい、エルザ!」


 勝手に、チトセさんのチョイスプレートで依頼を受けてしまうエルザ!


「エルザさんは強制イベントモードになっています。どうしようもありません」

「この依頼は個人で受けるタイプみたいですの。私達が受けようが受けまいが、チトセとエルザだけで強制イベントに突入してしまいます」


 NPCであるナターシャとネレイスが教えてくれる。


「仕方ない。みんな」

「構わないさ。どちらにしろ、城に行かなきゃいけなかっただろうしな」

「今夜はゆっくり休みたかったのに」

「養いポイント、一つ追加ですよ」


 リューナ、マリナ、クオリアが同意してくれる……養いポイントってなんだよ、クオリア。


「おお、ありがとう! ありがとう!」


 区長が鬱陶しい。



○18:00より特殊クエスト、吸血皇を滅ぼせを開始します。



「六時からか……あまり時間が無いな」


 今すぐじゃないだけマシか。


「まだ二時間ある。今のうちに宿で身体を休めよう」

「軽く食事も済ませましょうか」


 リューナとチトセさんの協力的な態度がありがたい。


 完全に早めに休む気でいたから、とんだ誤算だ。



○夜明け、04:00までに城の主、吸血皇を倒せなかった場合、クエストは失敗となります。



「……今夜どころか、朝方まで休めないかもしれないな」


 厄介なことになった。


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