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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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421.鋼の騎士団

「リューナ、これを」


 崖の上で皆と合流後、リューナに青い宝石が嵌められた質素な白い指輪を渡す。


「なんだこれ?」

「“共有のティアーズ・ブルー”。同じ色の指輪をパーティーリーダー同士が装備していると、お互いのパーティーの経験値が両方のパーティーに与えられる」


 このダンジョン・ザ・チョイスは、経験値が分散式ではなく、倒した相手によって決められた(あたい)が入る仕様。


 つまり、パーティーメンバーが増えても損をしないどころか、増やしてモンスターを一体でも倒せる方がお得。


「へー、便利だな。だが、同じ色のということは、知らない人間にも入るんじゃないのか?」

「経験値を共有出来るのは、同じステージに居る者のみ。同じレギオンに所属しているなら話は別だけれど。ちなみに、別レギオン同士だと経験値は共有されない」


 ある意味、無所属の方が得かもしれない。


 たまたま同じ色の指輪を装備している無所属パーティー同士が、同じステージに居るなんて状況は滅多にないだろうけれど。


「共有のティアーズですか。私も、グリーンなら一つ持ってますけれど」


 チトセさんが実体化して見せてくれたのは、翠の宝石の白い指輪。


「一つだけじゃ意味の無い指輪か。これって、色を変更したり出来ないのか?」

「鍛冶屋に行けば可能ですの。少々お高いですけれど」


 話に入ってきたのはネレイス。


「まあ、今はブルーが三つもあるから、カラー変更するのは暫く先だな」


 なにはともあれ、これでレギオン間のLv格差を埋めやすくなった。


 強敵を倒して数Lv上がったとき、恩恵が自分のパーティーだけなのはなんだか申し訳なかったし。


「岩場か。ここを超えれば、もうボスだっけ?」


 マリナが尋ねる。


「ああ。私達には飛行手段があるから、余裕を持って辿り着けるだろう」


 エルザが保証してくれると、今日中に次のステージに辿り着けるという確信を持てるな。



●●●



 ユウダイ様率いる八人で岩場を進んでいると、一際大きな岩の上に出たさい、翼の生えた猿のような小悪魔の“インプ”や、大きな肉食蜂である“ビッグワスプ”、土で出来た腕の“クレインハンド”の群れが現れた。


「数が多いな」


「お待ちを、ユウダイ様」


 我が主を止める。


「ナターシャ?」

「私にお任せを」


 もっと、ユウダイ様の役に立たねば。



「“鋼の騎士団”」



 サブ職業、“鋼の戦士長”のユニークスキルにより、TP・MPを消費し、私のロイヤル系装備そのままのマネキン騎士を四体召喚。


 金属以外の武装はコピーさせられませんし、Lvは私よりも10低く設定されているためステータスが下がっていますが、裏を返せばそれ以外はまったく同じ能力を引き継いでいると言うこと。


「ユウダイ様の敵を、殲滅しなさい!」


 “ロイヤルロードランス”を眼前で掲げた礼状態から言葉を発することなく、一糸乱れぬ動きで戦闘態勢へと移行――突撃を開始。


「これが、“鋼の戦士長”の力か」


 ユウダイ様が見ておられる。


 向いてるからと貴重なユニークスキルを預けてくださったのです。使いこなして見せねば。


 次々とモンスターを撃破していく、鋼のマネキン騎士達。


 現在、召還時に与えているTP・MPは一体につき10パーセント。


 騎士達は私と同じスキルやサブ職業の能力をほぼ全て使用でき、与えたTP・MPのどちらかが尽きると消えてしまう。


 設定を変更すれば、一体に注ぐTP・MPを増やすことも減らすことも可能。


 騎士が倒される前に消した場合は、所持していたTP・MPは私に還元される。


 つまり、調整次第で騎士の数は実質無限であり、上手くやればTP・MP消費無しで何度でも騎士を呼び出せるのです。


「問題があるとすれば、遠距離の……特に上空の敵は厄介ですね」


 今はユウダイ様の“煉獄魔法”で対処していますが、もう少し消費の少ない術が欲しいところ。


「終わりました、皆様」


 これで、私の有用性を示せたでしょうか。



○“小悪魔召喚の指輪”×4を手に入れました。

○“大きな蜂針”×6を手に入れました。

○“肉食蜂の顎”×4を手に入れました。

○“肉食蜂の翅”×2を手に入れました。

○“クレインハンドのスキルカード”×3を手に入れました。



●●●



「――拒絶の腕」


 この前の大規模突発クエストで手に入れたもう一つの“拒絶の腕の指輪”を使用し、両腕に連動する翠の双巨腕を顕現させる。


「”拒絶”!!」


 両腕から同時に衝撃波を叩き付け、洞窟の中で遭遇した灰石の巨人、リトル・ウルリクムミに罅を入れた。


「“超噴射”!!」


挿絵(By みてみん)


 “龍の戦士鎧”の脚部と背に新たに取り付けられた紅のパーツ、“クリムゾンバーニアスラスター”から紅の噴射を放って――洞窟の壁に叩きつける!!



「“二重武術”――衝撃拳!!」



 巨腕の拳から亀裂に更なる衝撃波を叩き込んで、完全に砕き壊した。


「フー……名前にリトルと付いているのに、なかなか厄介だったな」


 狭い洞窟内に不似合いなほど大きかったから、タンク役でもある私が正面から受け持つ必要があったのだ。


 場所と巨体のおかげで攻撃を外す心配は無かったが、多人数で戦うのがほぼ不可能な状況……地味に難所だったのかもしれないな。


「ナイス、メグミちゃん!」

「ガウガウ!」


 サトミが労ってくれたと思ったら、バニラが抱き付いてきてホッペを舐められる。


「こらこら」


 本当、こうしてるとペットみたいに思えてしまうよ。


 それにしても、どうして私はこんなにもバニラに懐かれているのやら。


「サトミ様、安全エリアです」


 その奥には、ポータルも見える。


「今回は広範囲を移動していた気がするけれど、ボス部屋まで早かったわね」


「まだお昼過ぎですからねぇ」


 ジュリー達による案内があればこそなんだろうが。


「サトミ、お腹空いた」


 モモカが訴える。


「それじゃあ、ボス部屋前で昼食にしましょうか。皆が待っているかしれないもの」

「うん!」


 変わらず元気で明るいモモカ。


 モモカは、アオイが居なくなってしまった……死んでしまった実感が……まだ無いのかもしれないな。



●●●



「“大海魔法”――マリンスプラッシュ!!」


 岩場の上空に現れた悪魔、アークデーモンに海水の奔流をぶつけて皮膚を裂き、血管を筋肉ごと破り散らす。


「“逆さ立ち”――“業王脚”!!」


 私の新しいマスターが自身の上下を反転させ、上昇落下しながらもう一体のアークデーモンを倒してしまう。


 ユニークスキル、“空遊滑脱”を使いこなしているからこその芸当。


 さすがですの。


 瞬間的にとはいえ、二つの武器に十五文字刻んだ規格外の人間と思い、命を狙うことでわざと倒して貰ったわけだれど……まさか、他にもあれ程文字を扱える面子が揃っていたとは。


 名前はサカナのままになってしまったけれど、あの時の私の判断は正解だったようです。


「お、もうボス戦なんだな」


 岩場を登っていった先には、ボス部屋の扉が。


「いつもみたいに、ポータルの先ってわけじゃないんだ」

「ここのダンジョンは別れ道が無いタイプだからな。まあ、当然だろう」


 マリナの言葉に、説明するエルザ。


「そう言えば、遺跡村から古城遺跡までの道も、途中に別れ道は無かったか。もしかして、次のステージと地続きになっている?」


 さすがに、彼は鋭い。


 本質を捉えようとする人間なら、これくらいは当然か。


「そろそろお昼にしません? ボス戦を終えた後だと、だいぶ後になってしまうでしょうし」


 チトセの提案。


 転移した後だと、祭壇を下りて宿を見付けてからになるだろうから、どう見積もっても一時間は先になるでしょう。


「そうですね。軽めの昼食にしましょうか」


 さて、私の元マスターは、まだ第三十九ステージで生き残っているのかどうか。


 まあ、どっちでも良いのだけれど。


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