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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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419.スライムのバルンバルン

「ここからは、河の支流を選んで進んでいくよ」


 皆で河を下ってきたら、その河が四つに割れていた。


「途中からパーティーごとになるから、気を付けてね」


 メルシュの言うとおりなら、パーティーごとに似た場所に転移されるって事か。


「それで、どのルートにはどういう要素が?」


 クマムがメルシュに尋ねる。


「ルートは四種類あるけれど、転移するまでどの種類に出るかは不明なの。一つはスキル、一つは財宝と特殊なアイテム、一つは武具、一つは衣服関係に設定されているよ」


 パーティーは五つ。


 ジュリーがリーダーの、サキ、タマ、スゥーシャ、スライムのバルンバルンのパーティー。


 クマムがリーダーの、ナノカ、ナオ、カナ、メルシュのパーティー。


 サトミがリーダーの、リンピョン、メグミ、クリス、モモカ、バニラのパーティー。


 ユリカがリーダーの、ヨシノ、レリーフェ、ユイ、シレイアのパーティー。


 ルイーサがリーダーの、フェルナンダ、私、サンヤ、ヒビキのパーティー。


「ランダムって事は、好きに選んで良いんだよな?」

「出て来る敵もランダムだから、教えても意味ないだろうしね。ただ、ルートは出来るだけバラバラのを選んでね」


 どの支流がどのルートかは分からないけれど、一応は固定なんだ。時間とか日にちで変わるってこと? ……なんか、昨日くらいから小難しい事を考えがちだな、私。


「行こう、アヤナ」

「ええ」


 五人で、一番左の支流を進む。


 すると霧が現れ……すぐに晴れたと思ったら、さっきと変わり映えしない景色。


 湿気が高くて、陽射しも強い……気持ち悪いな。


 私達が選んだ河、ひたすら左側に伸びてるから、元来た沼地帯も見えてるし。


「皆さん、上流から舟が!」


 ヒビキの声に後ろを振り向くと、木造の中型舟? がこっちに向かってくる。


「弓を構えたっすよ!」


 サンヤの言うとおり、複数人がこっちを狙っていた。


 舟の上に居る奴等は、モンスター扱いってわけね。


「“河賊(リバイレーツ)”だ。舟に財宝を詰んでいるはず」


 フェルナンダが、私達が選んだルートが財宝系だと教えてくれる。


「あれ、丸ごと沈めても良いのよね?」


 矢が降ってくるなか、前に出ながらフェルナンダに尋ねた。


「ああ、問題ない」


「だったら――“光線魔法”、アトミックレイ!!」

 

 上空から、青白い裁きを墜とす!!


「ちょ! ヤバいっすよ、これ!」


 無意識に神代文字を使っていたせいか、あまりの威力により河が氾濫――全員ビショ濡れになってしまう。


「アヤナ……お前」

「さすがに、少々抗議したいのですが」


 ルイーサとヒビキから、非難の目を向けられる。


「……まあ、涼しくなって良いじゃない」


 いつもならもっとオドオドしながら誤魔化すか、渋々謝っていたであろう私。


 ……アオイを失った事で、私の中の何かが壊れちゃったのかな。


 あの子が生きて居たときは、こんな孤独感は欠片も無かった。


 双子じゃない皆はいつも、常にこんな……寂しさを胸に抱えていたのかな。



●●●



「“蒼穹魔法”――アジュアダウンバースト!!」


 河から次々と飛び出してくる水で出来た美女、“ワッカカムイ”をまとめて叩き伏せます!


「あとは私がやるよ! “万雷魔法”、サンダラスレイン!!」


 バルンバルンさんが放った魔法が、ワッカカムイにトドメをさした。


 マスターの命令で襲い掛かってきたとかで、スゥーシャが返り討ちにして奪ったスライムの隠れNPC、バルンバルンさん。


挿絵(By みてみん)


「身体が水なのに、雷を使うのですね」


「前のマスターも水属性特化だったから、代わりに色んな魔法を覚えさせられたんだよ。向こうは戦士だったし」


「ああ。あの女性、戦士だったのですか。それにしては、後方からばかり攻撃する変な人でしたけれど」


 スゥーシャは、結構辛辣な一面があります。


「そう言えば、なぜバルンバルンという名前に?」


 さすがに変すぎますよね?


「前のマスターが、おっぱいがバルンバルン揺れるのが好きだったみたい……女なのに」


「「おっぱいがバルンバルン……」」


 私とスゥーシャは、そんなに大きくない……まあまああるけど。


 ノーザンさんは、背丈が同じくらいなのに結構大きかった……このレギオン、おっぱい大きくてスタイルが良い人が多い。


「ほら、そろそろ行くよ」


 女神のように美しいジュリー様に促される……やっぱり、ジュリー様の美しさには憧れちゃいます。


 私も、あんな風にエレガントな女性になってみたいです!


「あ、皆。前にも言ったけれど、私の事はバルンとだけ呼んでね。このレギオンは良い名付けをする人ばかりみたいだけれど、ふざけた名前を付けることは、この私が許さないんだから♪」


「よっぽど嫌だったんですね……」


「大丈夫、ネーミングセンスには自信がある」

「そんなこと言われたら期待しちゃうよ~。試しに私に名前を付けてみてよ、ジュリー」


 あ、これはマズいです!


「そうだね……ガールアオっていうのはどうかな?」


「ガール……アオ」


 さすがに、この場の全員が愕然としてしまっている。


「マスター、それはさすがに……自分にサキって名前が付いたのが、とてつもない奇跡に思えてくる」

 

「まさか、バルンバルンの方がまだマシって思える日が来るなんて……ジュリー、もし子供が産まれても、貴女は絶対に名前を付けちゃダメだからね。旦那か友人に頼むんだよ? 絶対よ!」


「へ? じ、自分の子供か……どうするかな」


 子供……コセ様との子供……♡


「お話はその辺にしましょう。新手です」


 サキさんが教えてくれたのは、水と砂で出来たようなゴーレム達。


 その額には、カードのような物が貼り付いている。


「スキルゴーレム。周囲の物質を取り込んで生まれるという設定で、個体ごとにランダムでスキルを一つ使える奴等だよ」

「あまり強くないけれど、気を付けた方が良いよ。中にはレアスキル持ちも居たりするから。空白や名無し持ちも居るけれど」


 ジュリー様とバルンさんの言葉で、油断は禁物と気を引き締めます!


「どうやら、こっちはスキルルートだったようですね。“古代鞭術”――オールドラッシュヒット!」


 鞭を振るい、向かってくるゴーレムを打ち倒していくテイマーのサキさん。


「速い!?」


 連続で“瞬足”らしき物を使用した個体が、スゥーシャの側面を取った!


「――”チャランケカムイ”!!」


 青紫色のオーラを纏って、ゴーレムの拳を蹴り上げる!


「はああッッ!!」


 私の友達は、絶対に傷付けさせない!!


挿絵(By みてみん)


 “蒼穹を駆けろ”に九文字が刻まれ――筋肉質になったような青と紺のランス、“蒼天を駆け抜けろ”へと進化!!


「“猪突猛進”――“噴射”!!」


 “蒼天を駆け抜けろ”のランス部分の裏から青い息吹を放射し、スキルゴーレムに体当たりするように穿ち――他のスキルゴーレムも巻き込んで叩き潰す!


「ハアハア……ちょっと、ハリキリ過ぎちゃいました」


 良い汗かきました。


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