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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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416.砂漠を越えろ

「凄いスピードだ!」


 大規模突発クエストで殺した男から手に入れた”ストリームバイクの指輪”Sランクで呼び出した黒バイクで、砂漠を突っ切っていた。


 砂漠の道は両端が盛り上がっており、どっちに進めば良いのかを教えてくれる。


「気持ち良いな!」


 地面から浮いた状態で走るストリームバイクは砂漠でも問題なく、スピードを出せば出すほど砂漠の熱を忘れられそうだ。


「す、少し先行しすぎでは?」

「へ?」


 後ろに乗るクオリアの指摘により、他の皆を置き去りにしていた事に気付く。


「おっと」


 ハンドルを回すのをやめ、注いでいたMPを止める。


「TPかMPを消費する分、コイツの方が速いのか」


 リューナはネレイス、ナターシャと共に高級軍馬に、マリナは猛禽恐竜、チトセさんとエルザは、俺のように突発クエストで手に入れていた反発バイクに乗って進んでいた。


 “反発バイクの指輪”はBランクのためか、ストリームバイクに比べると遅いらしい。


「……乗り物、怖い」


 クオリアがグッタリしている。


「スピードを出し過ぎたか?」

「というよりも、なにかに身を預けるという行為が苦手なのかと。ウプ!」


 まあ、その感覚は理解出来るけれど。


 目が見えないと、人一倍その感覚が強かったりするのだろうか?


「コセ様、下からなにかが近付いてきます」


 クオリアが強く抱きついてきた事で、緊急性を察する。


 急いでバイクを発進させ、さっきまでいた場所を呑み込むように出現した――巨大モンスターの攻撃を回避!


「これがジャイアントワームか。デカいな」


 地面から出ているだけで十メートルはあり、その口は、一度に車数台くらい丸呑みに出来そうなほど大きい。


 遭遇率が低く、一体ずつしか出現しない分、能力はかなり高めに設定されているそうな。


 リューナ達が来る前に仕留めるか。


「クオリア、俺に魔法を頼む。装備セット2」


 ストリームバイクから降り、“シュバルツ・フェー”を手にする。


「行きます! “瘴気魔法”――ミアズマプラズマ!」

「“黒精霊”」


 仲間の魔法を吸収する効果を使用し、スパークする黒の靄を黒銀の剣に集約!


『キュルルルルルル!!』



「“飛剣術”――ハイパワースラッシャー!!」



 隠れNPCシャドウ・アマゾネスから手に入れた“大戦士”のサブ職業により、今の俺は無属性の基本武術全てを使用できる。


 しかも、基本武術を修得する際に副次的に手に入れる“片手持ち”や“遠目”などの補助系スキルも全て含まれているという、地味なチートぶり。


「よし!」


 放った飛ぶ斬撃には”瘴気魔法”の力が宿っており、ジャイアントワームの頭部分を大きく切り裂いた!


 更に瘴気に宿っていたプラズマが、ジャイアントワームを内側から焼いていく。



「“霙竜魔法”――スリートドラゴンバイパー!!」



 マリナの氷水竜がジャイアントワームに食らいつき、その巨体を食い千切ると同時に全身を氷付けにして……光に変えてしまう。


 魔法を強化する装備やスキルが充実しているのもあって、今の魔法竜は途轍もない威力だったな。


「ご無事ですか、ユウダイ様」


 感情の込もらない声を掛けてきたのは、使用人NPCのナターシャ。


 リューナの馬が追い付くなり飛び降り、恭しく傍へとやって来ながらの言葉だった。


 ……こういう距離感は苦手だな。


「問題ない、すぐに出発しよう。さっきはありがとな、マリナ」

「まあ、当然よ」


 妙に胸を張っている……?


 マリナの態度を訝しみつつも、熱砂の砂漠を越えることを優先した。



            ★



 バイクの速度を皆に合わせて進んでいると、目の前にオアシスが見えてくる。


「た、頼む……休ませて」


 泣き言を最初に言いだしたのは、意外にもエルザ。


「ヴァンピールは陽射しが苦手なので、少し休ませた方が良いと思いますの」


 ネレイスに提案される。


「ですが、ここは安全エリアではありません。危険では?」


 ナターシャのもっともな意見。


「まあ、クオリアとナターシャで最低限の警戒をすれば良いだろう」


 そう言えば、オアシスには宝箱が置いてあることもあるって、メルシュが言ってたな。


「ネレイス、エルザはどれくらい休ませれば良い?」


 一緒に休むという手もあるけれど、この猛暑じゃむしろ体力と水分を失う。


「五分もあれば充分よ」

「……へ?」


 エルザが抗議の目を向けている……本人に訊かなくて良かったな。


「それと、皆はもっと小まめに水分補給をした方が良いわ」


「ああ……すいません」


 それは、俺の配慮ミスだな。


 なんだかんだで気が急いているようだ。


「よし、五分から十分ほど休憩にしよう」


 同時に、ナターシャの問題も見えてきた。


 使用人NPCであるナターシャは合理的な判断をしようとするけれど、俺達と違って熱中症になったり疲れたりしないため、その辺の違いが分からない節がある。


「……お、運が良いな」


 オアシスに生える南国風の木の麓に、宝箱を発見。



○“砂漠魔法のスキルカード”を手に入れました。



 魔法なら……まあ、悪くないか。


「ナターシャ様」


 クオリアの鋭い声。


 て、クオリアはナターシャに対しても様付けなのか。


「私が片付けましょう――装備セット1」


 ナターシャの白メイド服が、黄金に銀の装飾が施された鎧に包まれ、その手にはロードナイトが使用していた大型のランスが握られる。


挿絵(By みてみん)


 そんなナターシャの前に砂の中から現れたのは、巨大な黄土色のサソリ。


「デザートスコーピオンですか。“煉獄魔法”――インフェルノ」


 俺が使っていたサブ職業により、紫炎をぶつけて注意を引くナターシャ。


『キキェーーッ!!』


 巨大な鋏による攻撃を、“ロイヤルロードシールド”で受け止めた。


 橋の砦町で手に入れた“重装歩兵のスキルカード”により、ナターシャには、重い装備を装備していればしているほど筋力が上がるスキル、”重装の心得”が適用されている。


 同時に、“王国兵士”のサブ職業により、騎士や王国に関する装備の性能、スキルの効力を僅かに上げていた。


「“聖騎士武術”――パラディンストライク」


 “聖騎士のスキルカード”より得たスキルで、反対側から迫ってきた硬い鋏を、“ロイヤルロードランス”で貫き消す。


「“光線魔法”――アトミックレイ」


 残っていたデザートスコーピオンの身体も、極大の光の中に消えていった。


「片付きました、ユウダイ様」

「ありがとう、よくやった」


 恭しく報告し、すぐに警戒に戻るナターシャ。


「性格設定か……」

「性格はどんな風に設定したの?」


 声を掛けてきたのはマリナ。


「いや、なにもしなかった」


 愛嬌があって従順とか、言動はキツいけれど実はドMとか、色々設定はできたみたいけれど……考えているうちにだんだん虚しくなったというか。


「だから、接する人間次第で人格が変化する割合が大きいらしい」


 今のナターシャは、ゲーム攻略に必要な知識を持っているだけの、まっさらな赤ん坊と同じなのかもしれない。


「基本的に、マスターに迎合していくらしいけれど」

「それって、主人が最低最悪なら、使用人NPCも最低最悪になるってこと?」

「かもしれないな」


 NPCに対して、自分の意思を持って欲しいと思う俺は、的外れなのだろうか……。


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