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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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412.ネレイスのサカナ

「……戻ってきたのか」


 クエスト終了後、数時間ぶりに鬱陶しい陽射しと熱に身体が晒された。


 ……この手と唇に、まだトゥスカの余韻が残っている。


「全員無事か?」


「ああ、なんとかな」

「怪我などはありません」

「でも疲れた……」

「SSランク持ちと遭遇した時は、どうなるかと思ったが」


 リューナ、クオリア、チトセさん、エルザは特に怪我もないようだ。


「……」

「マリナ、どうした?」

「ベッツにー」


 妙に大人しいからなにかあったのかと思ったけれど、普通にソファーから立ち上がって部屋の隅へ……なんか怒ってないか?


 心当たりを探ろうとすると、いきなりチョイスプレートが現れる。



○クエストクリア報酬により、10000000(一千万)Gが配られます。


○隠れNPC所持者には特典で、“シュメルの指輪”も配布されます。



 契約者であるメルシュは別の空間に転送されたはずだけれど、俺もちゃんと貰えたか。



○強キャラ、”アルファ・ドラコニアン・アバター”を倒した特別報酬として、オールランクアップジュエルセット×3をプレゼントします。


 鎧の形状が変化したときに戦ったアイツか。


 “オールランクアップジュエル”は下手なアイテムよりも無駄にならないから、地味にありがたい。



○使用人のチップを以下から選択できます。


★戦闘メイドのAIチップ ★戦闘執事のAIチップ



 迷わずメイドの方を選択。


「あれ?」

「どうした、リューナ?」

「ああ……これを見てくれ」


 そう言い、リューナが自身のチョイスプレートを見せてきた。



○貴方が殺して奪った隠れNPCを召喚しますか?



「リューナ、隠れNPCと戦闘をしてたのか」


「いや、そんなはずは……そう言えば、あの異様に綺麗な人魚は、どこか人間離れしていたような……」


「召喚したらどうだ?」

「だが、これ以上人数が増えたらパーティーを二つに分けなければならなくなる」


 エルザの言葉に、リューナがそう返す。


「この中で、AIチップを手に入れたのは?」


「俺は手に入れた」

「私もだ」

「私もです」


 リューナとチトセさんも手に入れていたらしい。


「パーティーが増えればルートを選べるから、メリットも大きい。しかも、すぐにでも人員を三人分確保できるんだ。悪いことばかりじゃない」


「そうだな。クオリアに預けた“鳥獣戯画”で、頭数も増やせるし」


 エルザの考えを援護する。


「なるほど……だがまさか、人魚だと思ってたアイツが隠れNPCだったとは。呼び出すぞ」


 彼女がYESを選ぶと、青白い光が集まり――澄み渡るように真っ青な鱗の人魚が出現。


挿絵(By みてみん)


 リューナが言っていた通り、スーシャ達とは違う造形美の持ち主だ。


「隠れNPCのネレイスですの。皆様、よろしくお願い致します♪」


「「「ど、どうも」」」


 優雅に一礼される……最初から俺達に協力する気満々な事に違和感が。


「そう言えば、名前は決めないんですか?」


 つい最近エルザと契約したからか、チトセさんが気付いた。


「私の事は、ネレイスで構いませんよ」

「お前の名前……サカナなのか」


「「へ!?」」


 驚く俺達に、契約者となったリューナがネレイスの情報を見せてくれる。


「もしかして、前の契約者が付けたのがそのまま?」

「――そうなのですよ!! あの男、私が人魚みたいだからって適当に「んじゃ、サカナで」とか言って、本当にサカナって名前にしやがったんですの!!」


 前の契約者を、相当嫌っていたらしい。


「お前、もしかしてわざと私に殺されようとしていたのか?」

「さて、なんの話かしら」


 道理で、俺達に友好的なわけだ。


「お前、武器はともかくスキルは幾つかあるんだな。隠れNPCは、固有スキル以外はLvアップ時に手に入る物だけだと思っていたのに」


「そこも、今回の突発クエストの特徴です。マスターは、私が倒された時に所持していたアイテムやスキル、それらを丸ごと手に入れたというわけですの」


 文字通り、他の契約者から隠れNPCをそのまま奪った形になるのか。


「ねー、そろそろ他のステージメンバーの安否を確認してみない?」


 マリナからの提案。


「状況を整理してから、17時に報告しあうことになっている。私達も、それまでに報告すべき事を纏めておこう」


 俺が昨日も気絶していたため、代わりにリューナが仕切ってくれる。


「そう言えばユウダイ、なんか鎧が変わってない?」

「――実はな!」


 マリナが指摘してくれたことが、地味に嬉しい!



●●●



「よう、メルシュ。俺達の方は全員無事だぜ」


 ”神秘の館”、玄関前の廊下にあるコンソール前にいた、メルシュに報告する。


「……ザッカル」

「まあ、少なからず怪我した奴は居るんだがな」


 少なくとも、手脚を失うような事にはならずに済んだ。


「……ノーザンも無事だって。ウララが隠れNPCを手に入れたみたいだし、向こうは順調に戦力を充実させることに成功したみたい」

「俺も、新しい鎧や高ランク装備を幾つか手に入れたぜ」


 なんか元気ねぇな、メルシュの奴。


「コセ達は?」

「そっちは、あとで直接話すことになってるよ……」

「……なにかあったんだな」



「アオイが死んだ」



 玄関扉から現れたルイーサに、いきなり告げられる。


「…………本当か?」

「ああ……この目で、その瞬間を見た」


 ルイーサの顔……憔悴しきってんな。


「アヤナの様子はどう?」


 メルシュがルイーサに尋ねる。


「部屋に閉じ籠もったままだ。皆が声を掛けたが、反応はない」


 双子の妹ともなれば、兄弟や姉妹を失うのとも……また違うんだろうな。


「……メルシュ、ザッカル……頼みがある」


 ルイーサが、重苦しそうに口を開く。

 

「頼み?」

「まさか、レギオンから抜ける気か?」

「いや……少なくとも、私は攻略を続けるさ。助けて貰う際に、コセとそう約束したしな」


 ちょっと安心している俺。


 初めて会ったときは、勘違いで襲っちまった相手なのにな。


「頼みたいのは……コセに、アオイの件を伝えないで欲しいってことだ」


「お前、それでレリーフェが……」


「――コセは!! ……なによりも、トゥスカ達との合流を優先すべきだ。アオイの死を伝えるのは……そのあとでも良い」


 もう、取り返しのつかない事だから……か。


「……分かった」

「うん、そうだね」


 やれやれ、俺もコセに隠し事をする側になっちまったか……。


「うん?」


 ルイーサの背後から、また誰かが来る。


「ちょうど良かった。メルシュ、話があるんだけれど」


 やって来たのは、スヴェトラーナとルフィル……だけ?



「私達、このステージに残ることにしたから」



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