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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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406.隠れNPCシャドウ

「お!」


 宝箱から”Lvアップの実”が出て来た。


 これで、昨日手に入れた“万能プランター”を生かせる。



『クエスト開始から二時間が経過した! これより、隠れNPCシャドウを送り込むぞー!』



 カプアさんと共に浮かぶプレートの上を目指していたら、いきなりそんなアナウンスが聞こえてきた。


「来たか」


 厄介そうな敵だけれど、隠れNPCの固有サブ職業が手に入るなら悪くない。


『”隠れNPCシャドウ”の出現数は四十七体! 第三ステージから第五十ステージまでのが一体ずつだ! では、武運を祈ろう! ガハハハハハハ!!』


「心にも無いことを……あれ?」


 三から五十なら、四十八体じゃないとおかしくないか?


「コセさん、アレを!」


 カプアさんの視線の先から、真っ黒なシルエットの女が、プレートとプレートの間を火の玉のように跳び越えながら近付いてくる!


「コイツが……隠れNPCシャドウ」


 しかも、俺達の前に現れたのは……そのシルエットからおそらく……アマゾネス。


挿絵(By みてみん)


 つまり、シレイアの偽物と戦わなくてはならなくなったらしい。


「後ろからも」


 向こうは、アマゾネスのように大刀などの武器を持っていない……素手で戦うタイプの隠れNPCか。


挿絵(By みてみん)


 少なくとも、俺が知っている隠れNPCではないのは確か。


「向こうはお願いします」

「了解です」


 俺は、アマゾネスシャドウと戦うことにした。



●●●



「一難去ってまた一難か」


 獣の聖域で見掛けた、トゲ鎧の戦闘狂お姉さんを見付ける。


 しかも、隠れNPCシャドウ、三体に襲われているようだ。


『“大悪魔化”』


挿絵(By みてみん)


 一体のシャドウが形を変え、巨大な人獣のような形をとる!


「ぶっ飛びやがれ! “紅蓮砲”!!」


 彼女と一緒にいた異世界人の男が巨大な悪魔に攻撃するも、倒しきれない。


『“大海魔法”、マリンスプラッシュ』


「ぁぁあああああッッ!!!」


 その隙を突くように人魚のようなシャドウが水の魔法を放ち、男を板の端から落下させてしまう。


挿絵(By みてみん)


 下手したら、そこらのプレーヤーを相手にするよりも厄介。


「クソ、やってられるかよッ!」


 鳥人と思われる女が翼を羽ばたかせて背を向けた瞬間、下半身が蛇のようなシャドウの目が赤く光り……光を浴びた女を石化させてしまう。


挿絵(By みてみん)


 その石を容赦なく砕く悪魔。


「アイツら……さすがに、分が悪すぎんだろ」


「“雪玉発射”!」


 悪魔以外の二体を牽制し、一番厄介そうな半人半蛇へと突っ込む!


挿絵(By みてみん)



「“極寒断ち”!!」



 半蛇のシャドウを、“極寒忍耐の破邪魂”で両断! 消滅させる!


「僕は、レジスタンスの協力者です!」

「助かる! “六腕”!」


 以前にも使用していた能力で、左右の肩辺りにそれぞれ二本ずつ黒い腕を浮かばせる戦闘狂。


「装備セット3」


 六つの腕それぞれに、それぞれ別の金棒を装備させた?


挿絵(By みてみん)



「“三重武術”、“衝撃棒術”――インパクトブレイク!!」



 右腕の三つの金棒で悪魔を打ちのめし、すぐさま左腕の金棒三つで“逢魔棒術”を叩き込んで倒してしまう。


 さすがに強い。


「“獣化”」


 白い牛人間となって、逃げようとする人魚の前へと回り込み――“氷塊の鎚盾”の鈍器部分で頭を攻撃――すかさず胴体を両断して終わらせる。


『ハアハア」


 クエストを始めてから二時間以上……さすがに疲れてきた。


「さっきの人獣の姿、見覚えがあるな」

「僕も、貴女がこの前、聖域で戦っているのを見ました」

「なるほどね。だから私を、レジスタンスの一員だと思ったわけか」

「へ、違うんですか?」

「間違いでもないけれどね。タイキの奴に、傭兵として雇われてやってるって所さ」


 僕達と同じ、協力者の立場を取ってるって事かな?


「助けて貰った礼に、一つ面白い話をしてやるよ」

「面白い話?」


 なぜだろう……急に嫌な予感が。



「レジスタンスのリーダー、タイキには気をつけな」



「……理由は、なにかあるんですか?」

「アイツは、良くも悪くもザ・凡人なんだ。そんな男が、この前の作戦を見事と言って良いくらい上手く段取りやがった。今までの奴からは考えられねぇ」

「それは……参謀的な人間が付いたとかですかね?」


 他に思い付かないし、それだけなら喜ばしい気も。


「その参謀的な人間について、なんの情報もねーのよ。それに、奴が作戦で受け持った場所に居た解放軍の獣人は、幹部諸共全滅したらしい。それでいて、タイキの軍勢は犠牲者ゼロとか抜かしてやがった」


「“獣化”が使える獣人の戦闘力が脅威だから、陽動目的の作戦だったはずなのに……確かに変ですね」


 ……なんだか、本当にとんでもない事態に陥ってしまっている気がしてきた。



●●●



挿絵(By みてみん)


「――“連結”」


 “覆われし太陽の金光”と“覆われし太陽の銀光”の柄頭を合わせ――双剣と成す。


「“飛剣・靈光”!!」


挿絵(By みてみん)


 瞬間的な十八文字から放った巨大な斬撃により、ワイズマンの隠れNPCシャドウを両断した。


 アップデート中に襲ってきた奴を殺して手に入れたスキル、使い心地が良いな。


 本当は他の二体も巻き込むつもりだったが、躱されてしまったか。


 しかも、生き残った二体のシャドウは逃げへと転じてしまう。


「そう上手くはいかないな」


 ――十八文字引き出した影響で、膝をついてしまう!


「あ、アデール、追撃を」


 貴重なサブ職業を手に入れるチャンス、逃す手は無い!


「その状態のマリサを、一人に出来るはずないだろう」


挿絵(By みてみん)


 フランス人にしては律義というか、真面目というか。


「それに、ワイズマンのサブ職業が手に入ったのは大きな収獲だ。ますますお前を死なせるわけにはいかなくなった」

「遺言機能で、私が死んでもアテルの手に渡るって」

「まがりなりにも、お前はアテル様を超える神代文字を刻める。私などよりもよっぽど、アテル様の役に立てるというもの」


 本来の限界は九文字だから、十八文字は本当に数秒しか維持できないっていうのに、コイツは。


「誰が死んだって、アテルは悲しむぞ?」

「無論、心得ているとも。だが、私の願いは既に、アテル様に托してある」


 飼い慣らされたフランス人達を、DS諸共粛清したい……か。


「お前は……ストイック過ぎるよ」

「それ程に腐っているのだ、奴等は。故郷の人間達に限った話ではない。あの世界は、本当に優しい人間の勇気と尊厳を踏み躙る。聞き心地のいい言葉と、もっともらしい支離滅裂な言葉を信じる……本当の現実を見る勇気が無い、ご都合主義者で溢れかえってしまっているから」


「本当に救いが無いよなー、アイツらって」


 そう……人類自身が、人類を救いようのない場所まで堕とし続けてしまったんだ。


 本当に価値あるものを全部ドブに捨てて、大して価値のない物に価値があるように見せかけて、世の中はそんなものばかりで溢れかえっている。


 物心ついた頃から、その事を感覚的に理解していた私達は全員、世間一般的には異常者。


「アデール……絶対に、アテルの望みを叶えような」

「当然だ」


 正直、もう私には、人類なんてどうでも良い。


 私の望みは、私が異常者ではないと確信させてくれたアテル達の望みを……叶える手助けをする事だけだ。


イラストを押すと”隠れNPCシャドウ”の正体が明らかに!

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