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40.殺人術と新装備

「ご主人様」

「宝物庫の番人か」


 選択した右側は迷路になっており、ここまで幾つも罠が仕掛けられていた。


 その割には、まだ何も手に入れられていない。


「バンディット……に似ていますけど、強そうですね」

「バンディットの上位モンスターなんだろうな」


 数は三。


 通路は狭く、大きめの武器を振るう事は出来ない。


「どうします?」

「俺が行く」


 ”兇賊”のサブ職業、“殺人術”を試してみよう。


 岩の角から飛び出し、急接近。


「絞殺」


 右手で首を絞め、”殺人術”の絞殺を発動。


 バンディットの上位種は、泡を吹いて光になった。


 別のが短剣を抜いて斬り掛かってくる。


「撲殺」


 光って見える部分の一つである、心臓の位置に拳を叩き込む。


「ダメか」


 よろけただけで、また動き出す。


 蹴りを入れて距離を稼ぎ、“グレートオーガの短剣”を抜いて”瞬足”で体当たり!


 二体まとめて壁に叩き付けた瞬間に、三つ目の”殺人術”スキルを発動する。


「圧殺」


 ズン! と強い圧力が敵に加わり、どちらも光になって消えた。


 ”殺人術”スキルの絞殺、撲殺、圧殺。取り敢えず一通り試せたな。


 ”殺人術スキル”自体には、人体の構造状の弱点を見極める力があるようで、大体どのタイミングで使えば効果を発揮するかが分かる。


「この”殺人術”って、上手く決まれば即死させられたりするのかな?」


 短剣を突き刺したバンディットはともかく、壁に叩き付けただけのバンディットを殺せたのがちょっと不思議だ。


 それを言ったら、最初の首を絞めたバンディットもだけれど。


 片手で、ほんの二、三秒絞めただけで殺せてしまったからな。


「……ちょっと気持ち悪いな、このスキル」


 即死効果があるかもしれないし、素手で使えるし……いざというとき便利そうだけれど、巨体のモンスターなんかには使えなさそう。


「す、進みましょうか」


 俺の奥さんが、ちょっと引いている。


「ああ、うん」


 二人で歩を進めると、重厚そうな扉が見えてきた。


「開かないな――鍵開け」


 扉の鍵を開け、少しだけ扉を開けてトゥスカに目配せ。


「大丈夫です、中には誰も居ません」


 トゥスカの”索敵”スキルでの確認を終え、部屋の中へ。


「「おおーーーーーーー!!」」


 様々な武具が、部屋の隅から隅まで並んでいる!


 ちゃんと飾るように、綺麗に置いてあるとは。中々壮観だな。


 奥の角には、入口と同じ扉。


「凄い! ここにある物、全部持っていけるのか?」


 適当に触れてみると、○収拾しますか? と出た。


「ご主人様、こっちもです!」


 トゥスカのテンションが高い!


「ブーメランがありますよ! ブーメランですよ、ご主人様!!」


 ブーメランにテンションを上げる俺の奥さん……可愛い!


 トゥスカが手にしたのは、V字でオレンジ色の巨大ブーメラン。


「“荒野の黄昏は色褪せない”……へ?」


 ブーメランを収拾したトゥスカが、妙な声を出す。


「どうした?」

「ちょっと……ブーメランの名前が変だったので」


 さっきの、“荒野の黄昏は色褪せない”が武器名なのか?


「まあ、格好良いじゃないか…………ブフッ!」

「ご主人様!!」


 顔が真っ赤になる俺の奥さん……可愛い!

 

「とぅ、トゥスカさんを笑ったわけでは…………フフフフフ……ブハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」


 だ、ダメだ! トゥスカの可愛らしい反応と相まって、笑いが止まらない!!


「……ご主人様?」

「お、お腹が……お腹が痛い……フフ……グフフフフフフフ…………プッ……フフフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 は、腹がよじれるーーーッ!! わ、笑いが止まってくれねーーーーーッ!!


「い、いい加減にしてください!」

「ご、ごめ……クククククククッハハハハハハハハハ!」


 さっき滅茶苦茶テンション上がってたトゥスカが、ブーメランの名前を知ったときの反応がフラッシュバックして…………ブッ!


 それに今のトゥスカの顔、夜の営みの時よりも恥ずかしそうで……ククククククククク!


「…………フンッ!!」


 トゥスカが、俺を無視して武器を次々と収拾していく。


「ご、ごめんなさい…………フフ……ブフフフフフフハハハハハハハハハハハハ!!」


 堪えようとすればするほど、笑いが込み上げて止まらねーよーーーッ!!


「ご、ご主人様のバーカ!! バーカ! バーーカ!!」


 拳を作って、腕を何度も伸ばしながら抗議してくる俺の奥さん…………可愛い!


「なんか……凄い恋人みたいなやり取り」


 お付き合いとかせずに、実質夫婦になったからなー。


 式は挙げてないけれど……獣人式の結婚式ってどういうのだろう?


「フンッ! …………フン♡!」


 トゥスカが、再び武具の回収をしていく。



            ★



「うーん……イマイチだなー」


 “鋼鉄のフルプレートメイル”に“戦士の軽鎧”。


 七種類も鎧が手に入ったけれど、“偉大なる英雄の鎧”よりも性能は低いようだ。


 全身を完全に覆うような鎧は好みじゃないし、鎧は大した物が無いな。


「……ご主人様、どうでしょうか?」


 トゥスカが、新しい甲脚を見せてくれる。


 さっきまで装備していた“疾風のグリーブ”よりも、女性的な流麗なデザイン。


「トゥスカの綺麗な脚に、とても良く似合ってるよ」

「な!! …………ご、ご主人様は私の脚……だ、大好きですもんね♡」


 はい、私は美脚好きです。ごめんなさい。


 トゥスカに出会うまで、自覚なかったけれど。


「それで、その装備の名前は?」

「…………」


 一瞬で心閉ざしたよ。


「もう笑わないから」


 さすがに笑いすぎたな。


「……“漆黒のブーツ”です」

「普通じゃないか」


 またおかしな名前なのかと思ってた。


「でも、ブーツの形でも硬そうだな」

「ええ、分類としては甲脚。鎧装備欄を使用します」


 そうなんだよな。甲脚は鎧装備欄を埋めるんだ。


 だから、俺が“偉大なる英雄の鎧”を装備している限り、甲脚は装備出来ない。


 甲手は、武器ではなく指輪の装備欄を埋める。


 何故か、甲手を装備してしまうと装備した方の手には指輪を装備出来ない。


 更に、鎧によっては甲手が装備出来なくなってしまうパターンもあるようだ。


 このゲームのシステムは、結構装備の制約が多いんだよな。


 “偉大なる英雄の鎧”装備時は、衣服装備欄を使用できないし。


 全ての鎧が、衣服を装備できなくするわけではないみたいだけれど。


「ご主人様は、何か良い装備はありましたか?」

「まだ全部は確認出来ていないけれど、今のところは無いな」


 グラフを見れば、なんとなく単純な性能は分かるけれど、副次的な効果なんかは分からないからなー。


 性能は低くても、良い効果を持っている可能性もあるし。


「“雷切りの大剣”とか、”焔穿ちの槍”とか、場合によっては役立ちそうだけれどな」


 取り敢えず、“雷切りの大剣”をサブ装備にセットしておく。


「装飾品の類は無いんだな」


 指輪とかの。


「左側の方にあったのでしょうね」

「なるほど」


 向こうを通っていたら、どんな装備が手に入ったんだろう?



●●●



「うぅ~、新しい武器が欲しい!」


 別れ道の左側、盗賊の宝物庫内にてユリカさんが駄々をこねている。


「タマだって、そう思うでしょ?」

「へ!? ……まぁ」


 私の武器、突発クエストで手に入れた”猛毒の槍”か“水の槍”なので……ちょっと心許ないのは確かです……。


「ユリカ」


 ジュリー様が、金色の指輪をユリカさんに放る。


「何これ?」

「魔法の威力を少しだけ上げてくれる、“強魔の指輪”だよ」


 そう説明しながら、ジュリー様はズラリと並んでいる宝箱を漁り続けていく。


「あった」


 ジュリー様があるカードを手にする。


「右も左も、手に入る物はランダムだから賭けだったけれど……手に入った。“因果応報のスキルカード”」


 そのスキルカードを、私達に相談せずに使用してしまうジュリー様。


 ジュリー様は、いったい何をしようとしているのだろう?


 このまま……私はジュリー様に付いていって良いのでしょうか?


 ダンジョンに入るまで、こんな風に思うなんて想像もしなかったのに。


イチャイチャするコセ達と、早くも亀裂が生じ始めたジュリー達。



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