397.憤怒の戦士
「ぅおおおおおッッッ!!!」
「く、間に合わなかった!」
レジスタンス幹部、鳥人のコルファンが、異世界人が乗るなにかに激突……プレートに叩き潰されて絶命した。
これで、レジスタンス過激派幹部は三人に。
「ヒャー!! 血肉が一瞬で消えちまうのは微妙だが、おかげで、俺様のストリームバイクの手入れをせずに済むってもんだぜぇ!!」
「下郎が」
黒い流線形の金属塊に乗る男を睨みつける。
「獣人の女か――良い悲鳴が聞けそうじゃないか!!」
金属塊の後ろ、異音と共に風が吹き荒れ――私に向かって突っ込んできた!
「くたばれ!」
”アジャストメント・ギミック・クロスボウ”を構え、“魔力矢”を連続で放つ!
「――“猪突猛進”!!」
“ストリームバイク”の前面にエネルギーの膜が生まれ、“魔力矢”が全て弾かれた!?
「“瞬足”!」
「逃がさないぜぇぇ!!」
あの男、方向転換しながら左手で銃を抜いた!?
「“木の葉”――“木の葉旋舞”!!」
指輪で大量の木の葉を呼び出し、それらを目くらましに使用すると同時に、舞わせて盾へ!
「砲身が二つ。同時に二発撃てるのか」
「この俺の”ダブルバレルガン”を防ぐとは、やるじゃないか!!」
「うるさい奴」
ラキ様とは大違い……でもないか。
トゥスカさんのコセという男への想いを聞いた後だと、私のラキ様への想いは……本物だったのかと疑いたくなってしまっている。
「”氷炎魔法”――アイスフレイムバレット!!」
「しまった!?」
気を抜いているうちに、木の葉の大半を凍らされて落下――木の葉の盾を剥がされてしまった!
この隙に、次の行動に繋げなきゃいけなかったのに!!
「“猪突猛進”!!」
こうなったら、ギリギリで回避して即座に反撃に!
「――“超噴射”!!」
急な加速により――回避のタイミングを狂わされ――
「“隆起の大地”!!」
「――おわぁぁぁぁぁぁ!!?」
半透明の床プレートから、いきなり岩が生え伸びてきた!?
「な、なんだぁ!?」
「オールセット1」
男が斧から二振りの大剣に得物を変え、背中の黄金の翼で滑空しながら突っ込んでいく!
「く、来るな!」
「“神代の盾”」
「ク!!」
“魔力弾丸”を全て弾かれ、男が乗り物の操縦を優先しようとした時には――大剣の男は肉迫し、剣を振り上げていた。
「ハイパワースラッシュ」
「待ってく――べはぁぁッッッ!!!」
男の身体が両断され、光へと変わっていく。
……強い。
「く……」
“獣化”も含め、全ての手札を振り絞らなければ、この男には……。
「俺の名前はコセだ」
私を見るなり、名を告げられた!?
「貴男が……トゥスカさんが言っていた」
「やっぱり、貴女がカプアさんか。トゥスカとノーザンを助けてくれてありがとう」
「いえ、結局トゥスカさんは……《獣人解放軍》に捕まってしまったようです」
「……そうですか」
――目の前の男から濃密な殺気!!
この圧力……解放軍のリーダーであるヴァルカと同等の……。
『見付けたぞ、カプア!』
“獣化”した獣人三人に囲まれる!
しかも一人は、以前にトゥスカさんが眼球を潰した手長猿の獣人。
『この前俺の眼を潰してくれた女の代わりに、貴様の血で贖って貰おうか!!』
「代わりに?」
『お前が仲間に引き込もうとしていたあの女は、ヴァルカ王の妹君だそうだ』
『残念だったわね、カプア』
「トゥスカさんが……ヴァルカの妹?」
私は――騙されていたのか!?
「――おい、トゥスカは無事なんだろうな?」
先程以上の重圧に、呼吸が止まる!!
『な、なんだ……お前は』
「トゥスカの夫だよ」
そうだ、トゥスカさんは異世界人の男と愛し合っているって……知っていたはずなのに。
『お前が、姫様を誑かした張本人か!!』
『その罪、万死に値するぞ!!』
『異世界人、絶対に許さない!!』
「他人の意志を捻じ伏せて、罪の意識も無く自分達のルールを押し付ける――殺したくなるくらい嫌いなタイプだ」
――――私の身体中が、目の前の男から直ちに逃げろと訴え掛けてくる!!!
●●●
「アレが、チップをドロップするというモンスターか」
真っ青な下半身を持つ女人魚と交戦しているようだが、人魚の攻撃はほとんど効いていないようだ。
『死ね、人魚!!』
「だから、私はネレイスだと言っていますのに!」
「ネレイス?」
人魚と何か違うのか?
「“大海魔法”――マリンバイパー!!」
“氾濫魔法”のリバーバイパーよりも青味の強い大蛇が、ロボットを締め上げた。
だが、黄金色の魔方陣のような物、”黄金障壁”を纏って身を守っているようだ。
「“大海魔法”――マリンウェーブ!!」
二つの波がクロスするように、ロボットを攻撃!
「もうMPが……」
『な、なんてダメージだ。しかも……錆びているだと!?』
「私の“大海魔法”は、金属を錆び付かせて耐久力や切断力を低下させますの」
『ふ、ふざけるなよ! この俺は、レプティリアンなんだぞ!!』
「レプティリアン……だと!?」
私の故郷を――父をあんな目に合わせた奴等の背後にいたとされる――クソ蜥蜴共!!
「――“神代の剣影”!!」
“空遊滑脱”を使用した状態で猛スピードで近付き、黒のシャシュカ――”終わらぬ苦悩を噛み締めて”を鞭のように振るって攻撃する!
「あの方……十二文字も」
『ぐぁああ!! やめろ、貴様!! ……その顔、ロシア人か?』
「なに?」
思わず、攻撃の手を止めてしまう。
『キュルルルル!! その半端な堀の深さ、やはり当たりか! あの負け犬国家が』
「――お前」
『憐れよな~。ウクライナにある生物兵器を使わせないために防衛戦争を仕掛けたって言うのに、その宣言は数多のメディアでは取り上げられず、興味の無い人間は一様に知りようがない。メディアは連日ロシア叩きで、バカなノルディック共は戦争反対と謳いながら、世界中の国家が戦争に、寄付という名の戦争犯罪に荷担するのをよしとしている……クククキュルルルル!! どうやったらあんなバカな種族になることが出来るのか、この俺に教えてくれよッ!! 負け犬のスラブ人!!』
このダンジョン・ザ・チョイスの裏には、奴等が――DSが存在していたのか!!
「お前は――お前達は絶対に許さないッ!!! 装備セット2」
両腕にシャシュカ――右手に”終わらぬ苦悩を噛み締めて”を、左手に”雪原を撫でる夜風”を握る!
コセにも見せないようにしていた、私の切り札であり奥の手!!
『負け犬ごときが! お前達はとっくの昔から、俺達の家畜なんだよッ!!』
バルカン砲の腕から飛び交う光の雨を、”空遊滑脱”で縦横無尽に避け――間合いに入り込んだ。
「”二刀流剣術”――クロススラッシュ!!」
どちらにも十五文字刻んだ剣を交差させ……レプティリアンが操るロボットを両断した。
「ハアハア……中に入っていたわけじゃ無かったか」
ロボットの挙動から、そんな気はしていたが。
『この俺が、もうゲームオーバーに……』
「いつか、本物のゲームオーバーにしてやる」
どんな手を使ってでも、絶対に――ッ!!
「誰だか知らないけれど――死んで貰いますわ」
ネレイスとかいう人魚が私に、レプティリアンが消える横で不意打ちを仕掛けてきた!!




