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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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391.日高見の前哨戦

「“死霊術”――ゾンビクリエイト」


 六体のゾンビを生み出し、突撃させる。


「“光輝斧術”――シャイニングスラッシュ!!」


 私のゾンビ全てが、一撃で倒されてしまう。


「君ってさ、隠れNPCだよね? オリジナルに“死霊術”なんて無かったはずだし」


「オリジナルプレーヤーですか」


挿絵(By みてみん)


 これは、ごまかしきれそうにない。


「うーん、もうちょっと可愛いのが良かったけれど、あんまり文句を言ってはいられないか」


「失礼な方ですね」


 光属性の近接戦攻撃特化……近付かれたら、私の方が圧倒的に不利。


「“死霊術”――デーモンクリエイト!!」


 不定形の、上半身だけの悪鬼を一体生み出す。


「“鎮魂歌”――ァァァァァァァァァ!!」


 光の円が彼の足元から広がり、せっかくのデーモンがあっという間に滅ぼされてしまう!


「相性最悪ですか」

「そうだね。でも、他のメンバーが隠れNPCを手に入れたら、その子と交換しちゃえばいいや」

「レギオンリーダー特権でですか、《不倫はブランド》のジュンイチ」

「へー、よく分かったね。無数にあるレギオンの中から、わざわざ憶えてくれたんだ。もしかして、僕がイケメンだからかい?」

「隠れNPCだから全て頭に入っているだけです。顔だけ男」

「……は?」


 自分をイケメンとわざわざ口にするのは、そこにもっとも執着しているか、そこにしか自分の価値を見出していない証拠。


「そもそも、顔だけで靡く女なんてたかがしれているでしょう」


 植え付けられた価値観に左右されるだけの、人形に過ぎないのですから。


「幾ら相手シても、一度として満たされた事など無いのでしょう?」

「……知った風な事を言いやがって、NPC風情が! だったら、お前が僕を満足させてみろよ!」



「これだから――発情魔のガキは」



「ヒッ!?」


 ちょっと本物の殺気を当てただけでビビる腰抜けが。


 ――誰かが、猛スピード近付いて来る!


「馬獣人のケルフェと申します」


挿絵(By みてみん)


「ネクロマンサーのメフィーです。《龍意のケンシ》の方」


 二つの盾と脚甲を装備し、黒髪を下側で結わえた真面目そうな獣人……カオリ達から聞いていた特徴と一致する。


「手こずっていたようですが、私が相手をしても?」

「お願いします。彼とは相性が悪く」


「承りました」


「邪魔――しないで欲しいんだけれどなーッ!!」

「マーリとキューリを扱き使っていた男にそっくりですね、貴男は」


 両腕の盾を構えたケルフェが、ジュンイチ目掛けて前に出る。



●●●



「ああ……た、助けて……」

「そっちから襲ってきたのにー?」


 右眼を抉った途端戦意を失った男の人魚に、近付いていく。


「ゴメンねー。今までは普通の良い子で居ようと思ってたんだけれど、この前昔のこと思い出しちゃってさ~」


 なにかの拍子にさ――ドス黒い感情に歯止めが利かなくなるんだよね。


「お、俺には大切な――」


 ”鋼鳥の狂群”を振り下ろして、人魚を絶命させる。


「あっそ」


 因果応報って言葉を知らなかったのかな?


「頭への一撃で絶命させるなんて、優しいですね」

「……誰?」


 後ろから、女の人に声を掛けられた。


「《日高見のケンシ》所属のパドマ」


 刀剣が得物の、オレンジの衣を着た……黒人?


挿絵(By みてみん)


「ああ、インド人の人か。私はコトリだよ。知ってるかもしれないけど」


 そういう人が居るって、聞いてたっけ。


「貴女には似た物を感じます」

「壊れちゃってるみたいな?」


 感情が振り切れすぎて、壊れてしまったかのような感じ。


「……そうね」


 私、この人とは仲良く出来そう。



●●●



「その格好、趣味に走りすぎじゃない?」


 どでかい注射器を手に戦う、白衣の天使と相対していた。


「私は~、ナースの隠れNPCなのですよ~」


挿絵(By みてみん)


 ああいう間延びした声、苦手。


 ちょっと垂れ目の、愛嬌のある見た目だけれど……スカートみじか!


「二刀流とは器用ですね~。お名前を聞いても~?」

「カオリよ」


 彼女とは相性が悪そう。


「私、隠れNPCとは未契約なの。貴女を殺したら勝手に契約することになってしまうから、見逃してくれない?」


「う~ん、貴女相手に後ろを見せるのは~、ちょっと心配で~」


 本音なんだけれど。


「――全力で排除させて頂きます~!」


 注射器を手に突撃してきた!!



「仕方ない――“二刀流剣術”――クロススラッシュ!!」



 交差させた二刀、“叢雲大蛇の太刀”と“二点天一流の打刀”で注射器を去なし――ナースの身体を、胸元を中心に四つに切り裂いた。


「お、お見事~……」


 光になって消えてしまうナース。


「隠れNPCにしては、呆気なさ過ぎる」


 ナースの隠れNPCっていうくらいだし、戦闘向きではなかったんでしょうけれど。


「……ていうか」


 これで私、さっきのナースの隠れNPCと契約した事に…………嘘でしょ。



●●●



 黒衣の男に大型のモーニングスター、“栄華の裏の真実”を叩き付ける!


「クソ!」


 石みたいな剣で防がれた!


「君はスヴェトラーナだよね? 僕はアテルって言うんだ。《龍意のケンシ》とは同盟を結んでるんだけれど?」

「私はアイツらと協力しているだけで、お前達なんて知らない!」


 偶然遭遇したこの男に、リューナとコセって男へのムシャクシャを全部ぶつけてやる!


「“爆裂棒術”――バーストブレイク!!」


 最大の六文字刻んだ“栄華の裏の真実”で、グチャグチャになれ!!


「困ったな――“神代の盾”」


 文字を十二文字刻んだ剣からでた青白い盾に、完全に防がれてしまう!


「リューナと同等の文字を……」


 むしろ、()()()()十二文字刻めていないリューナよりも上……。


「ツェツァ!」


 エルフのルフィルが、援護に来てくれる!


「二人で、このいけ好かない男を倒すわよ!」

「遠慮します。神代文字を十二文字も刻める方を、殺める気にはなれませんので」


「アンタね……」


 コイツらエルフの神代文字至上主義って、もうちょっとどうにかならないのかしら?


「むしろ、神代文字に差がある相手と戦うのは無謀です」

「そんなの、やってみないと分かんないでしょうが!」



「分かります。何故なら、文字が多い方に運命が味方するからです」



「運命……」


 そんなのって――


「だったらどうして――神様はあの時、私の国を守ってくれなかったのよ!! 爬虫類共なんかに……好き勝手」


 急激な感情のうねりと共に涙が込み上げ……膝を付いてしまう。


挿絵(By みてみん)


「爬虫類……レプティリアンの事か」


「へ?」


 この日本人は、レプティリアンを知っている?


「だったら、君の敵は僕じゃない。このゲームを仕組んだ奴等その物だ」


「それってどういう……」



「僕達をこの世界に送り込んだ奴等は、レプティリアン共に支配された地球人だからさ」



 手を伸ばしてくる……アテル。


「本当に……そんなことが?」


「僕は、奴等を根こそぎ滅ぼす。全ての穢い物を。僕自身も含めて、全てを浄化するためにゲームクリアを目指しているんだ」


挿絵(By みてみん)


 ――その強い自然体の眼差しと言葉に、胸が高鳴ってしまう!!


「僕に手を貸してくれる気は――」



『三十分が経過した! これより、強力なモンスターを十体送り込むぞー!』



 良いところで!


「二人とも、アレを!」


 ――金属のロボットが上空を飛行し、一体がこっちへ向かってきた!?


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