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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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389.発掘村

「ようやく起きたか」


「へと……エルザか?」


 窓の方に居るから、眩しくて顔を確認できない。


「まさか、半日以上眠りっぱなしとはな」

「半日……――半日以上!?」


 あまりの驚きに無理矢理上体を起こしてしまったため、頭がグラつく!


「安心しろ、まだ八時前だ。十一時になったら、さすがに叩き起こすつもりだったがな」


「……そうか」


 まさか、腕の痛みのせいで半日以上寝込むことになるなんて……今までは、そこまでではなかったのに。


「お前が気を失った状況と、これまでの経緯は四人から聞いた。それでだが、昨日お前の腕に吸い込まれたのは、おそらくこれだ」


 ライブラリの中の写真を見せてくれるエルザ。


「”ダンサーズ・マスターソード”?」


 赤い柄の、白い綺麗な大剣。


「本来は、この剣を手に入れるはずだったと?」

「予備スキル欄にある剣のスキル武器を、強化した状態で複数呼び出し、操ることが可能なSランク。ライブラリにNEWというマークが付いていたし、間違いないだろう」


 そう言えば俺、この腕の痛みのことメルシュ達に言ってなかったな……うわ、最初から俺に、レリーフェさん達を怒る権利なんてないじゃないか。


「へと……ボス戦は?」

「お前が寝ている間に終わらせた。ここは次のステージの発掘村だ。それより、その左腕に対する私の見解をお前に伝えておく」


「……助かる」


 医者の診断みたいで恐いけれど、聞かないわけにもいかないだろう。


「お前の左腕は、おそらくなにかに変わろうとしている」


「……なにかって?」


「さあな。おそらく、アップデート時にお前の左腕の中に様々なデータが入り込んだが、それが不完全であるせいでおかしな事になっているのだろう。“ダンサーズ・マスターソード”のデータを取り込んだのも、不完全から安定した状態になろうとしている証。元素が安定した状態を求めて、結合しようとするようにな」


「つまり俺の左腕は、Sランクくらいの強力な武器になるかもしれない?」


「完成されたSランクのデータを取り込んで尚不完全であるならば、もしかしたらそれ以上の物に変わる可能性がある。まあ、あまり私の考えを当てにはするな。仮説に仮説を重ねたような推論でしかない」


「この尋常じゃない痛みの慰めになるなら、せいぜい期待させて貰うさ」


 それに……やっぱりこの現象が、悪い物ばかりだとは……どうしても思えない。


「それにしても、随分暑いな」


 汗で身体がベトベトだ。


「発掘村の周囲はほぼ砂漠だからな。ちなみに、他の女共は化石収集に出掛けたぞ」

「化石収集?」

「この村特有のイベントだ。お前が眠っている間にメルシュ達と情報交換をしてな。今日の突発クエストをクリアしたら、少しでも早く先に進めるようにという女達の配慮だろう」


「気を遣わせてしまっているのか……」


 本当に、色々情けない。


「お前はレギオンのリーダー。多少の我が儘くらい許されるさ。それよりも、無様な姿だけは晒すな。お前への信頼を失うような言動だけは」

「ああ……分かってる」


 俺がそんな真似をすれば、レギオンが崩壊……一人一人の命を、今まで以上に危険に晒すことになるのだから。



            ★



「本当に大丈夫なの、ユウダイ?」


 シャワーを済ませ、戻ってきた四人と軽い食事をしたのち、俺達は猛暑の中、12:46分が来るのを待っていた。


 クオリアとエルザ以外は、U字のソファーに座っている。


 宿泊した家の壁は黄土色で、陽射しがよく差し込んで鬱陶しい。


「ああ」


 実際の所は分からないけれど、不安に思っても仕方ない。


 悪く考えると、暗い坩堝(るつぼ)から抜けられなくなりそうだ。


 他人を認識してからずっといた、あの雑多な場所で……また、もがき苦しむ事に。


「暑いですね」

「こういう時、本当に魔法の家が恋しくなる……て、おい! お前、また下着を!」


 クオリアのスカートパタパタに、熱いツッコミを入れるリューナ……なんかホッとしてしまった。


「私は寒いところで育ったから、熱いのは苦手」

「私もです」

「以下同文だ」


 マリナ、チトセさん、リューナは寒い方が慣れているらしい。


「私は、暑さよりもこの陽射しの方が苦手です」


 確かに、クオリアは日陰が似合いそう。



○戦士.Lv54になりました。使用人作成機能が解禁されます。



 ふと、チョイスプレートを確認してみた。


 俺が眠っている間に、例の使用人を作れる機能が使用可能になったらしい。


「やり方は……結構細かいな」


 最初に男か女かを選び、最初から自分で作っていくノーマル素材パターンと、既に出来ている八種類のモデルに手を加えるパターンがあるらしい。


 俺は……最初から全部自分でやりたいな。


「使用人は基本的に魔法の家内で動く物だから、魔法の家に帰れないお前が今作っても意味ないぞ?」


 エルザに指摘される。


「それは知ってるけれど……」


 集中する事で暑さを紛らわせたかっただけだし!


「チトセさんは、使用人NPCは作成したんですか?」


 チトセさんのLvは56だから、とっくに作成可能なはず。


「いえ、私は魔法の家を持っていないので」

「キャラデザだけでも可能みたいですよ?」

「というか、この前チャレンジしてませんでした?」


 マリナからの意外な情報。


「……絵心なくて諦めました」

「すみません」


 苦手な人は苦手か。


「そう言えばお前、もし使用人NPCを作るなら、性別は女にしろよ?」


 リューナに言われる。


「……なんで?」

「今更、ユウダイ以外の男が家に居るのもね……」

「NPCだと分かっていても、緊張してしまいそうです」


 チトセさんも、女の方が良いらしい。


 俺も、女の子の方が良いとは思ってたけれど。


「まあ、コイツなら理想の女の造形を作って、エロいことしまくるんだろうなって。NPCなのを良いことに」

「するか、そんな恥ずかしい真似!」


 俺に失望されるような言動をするなとか言っておいて、なんでエルザは俺の名誉を傷付けようとしてくるの!?


「一応言っておくと、使用人NPCとはヤれるぞ。まあ、例のチップを組み込まないと、超精巧なオナホと変わらんだろうが」


「頼むから、もう黙ってくれ」


 そんな風に言われたら、戦力以外の理由では使用人NPCを作成しづらいじゃないか!


 漠然と、好きなアニメキャラをモデルにしようかと思っていたのに!


「そろそろ時間だ、皆」


 リューナの言葉の直後、俺達の身体が光へと変わりだした。


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