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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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387.欠陥品

挿絵(By みてみん)


「…………あれ……?」


 俺、いつの間にか眠って――。


「まずい!」


 時間は……既に16時を過ぎていた。


「どれだけ寝てたんだよ」

「およそ二時間ですよ、コセ様」

「……何してるんだ、クオリア?」


 何故か、俺に向かってスカートをたくし上げて紫パンツを見せ付けている烏鳥人。


「殿方は、性的興奮をすると元気が出ると聞いたことが」

「否定はしないけれど、精神に毒だからやめてください」


 必死に視線を背ける……あのパンツ、布面積が少ない上に刺繍が凝っててエロ過ぎる。


「そもそも、下着の一部はスリット部分から見えているのですから、そこまで気にしなくても良いのでは? 戦闘中ならば、幾らでも見えてしまうでしょうに」


「それとこれとは別だから」


 戦闘中でもパンツに気を取られるって、只の発情期バカじゃねぇか。


「同族は、目の見えない私を異性とは認識していませんでしたけれどね。私が盲目だと分かると、心臓の高鳴りがスーッと冷めていくんですよ」

「……」


 昔は特に、病気や身体の欠陥などで縁談が破断になるなんて聞いたことはあるけれど……異世界でもそうなのか。


 まあ、気持ちが分からないでも無いけれど。


「余計な事を言ってしまいましたね。お詫びというわけではありませんが、パズルはほぼ解けていますよ」

「へ?」


 台座を確認すると……一ピース以外全て埋まっていた。


「……どうして完成させなかったんだ?」

「私が完成させては、不興を買うかと」

「そんなこと……」


 そんな風に、自分を卑下してしまうのが当たり前の環境で育ったってことか。


「……クオリアが俺を愛してくれるなら、一生涯養うって誓うよ」

「はあ……?」


 結構恥ずかしいことを言ったのに、そんなキョトンとされても……。


「養ってくださるなら、私の身体が欲しいと言ってくださっても一向に構いませんが?」

「なんでだよ」


 愛するって感覚が、よく分からないって事なんだろうか。


「このダンジョン・ザ・チョイスには、結婚すると手に入る指輪があるんだけれど、本当に愛し合っている者同士だと、最高ランクの指輪が手に入るんだ」

「それを献上すれば宜しいのですか?」

「いや、それはクオリアの物だから。もし最高ランクの指輪が生まれたら、クオリアの夫として責任を取るよ。一生涯」


 自分がモテてると勘違いしている奴みたいなセリフで、非常に居たたまれない気分だ。


「……私は誰かの妻になる気もなければ、子供も欲しくありません。ただ普通に生きて、安らかな最後、老衰で死にたいだけなのです」


 これ……俺から告白してフラれたってことにならないか?


「いや、だって……養って欲しいって」

「はい、養って欲しいだけです。そのために抱かせろと言うのなら、考えても良いと言っているのです」

「愛人とかになりたいってこと?」

「違います。養ってもらう代わりに返せる物が、私には他に思い付かないだけです」


 妙な方向に純粋というか、真っ直ぐというか……。


「なんか、クオリアのことがとても心配になってきたよ」


 変な男に引っ掛かりそうで怖い。


 埒があかないと思い、取り敢えず皆と合流するために最後のピースを嵌めた。



○パズル報償として、貴方に最適な武器をお渡しします。


○そのために、幾つかの質問にお答えください。



「こういうパターンか」


 こっちのルートはSランクが一つしか手に入らない代わりに、自分に合った物をある程度絞り込むことが可能。



○貴方の得意な得物は?


○好きな属性は?


○積極的に前へ出るタイプ?



 膨大な選択肢から大剣、特になし、YESをそれぞれ選択。



○速度と攻撃、どちらを重視?



「速度と攻撃……」


 俺の戦い方は鈍重だけれど、だからこそ速度を補う選択をした方が良いのか……。


「……攻撃で良いか」


 今更、中途半端な攻撃能力が加わっても仕方ないし。



○武器交換、セット機能を多用する機会が多い?



 YES。



○スキル武器を複数所持している?



「スキル武器って……“竜剣”とかの事か?」


 他には……タマの”咎槍”みたいな?


「でも、こっちの方が面白そうだ」


 俺はYESを選択した。


 すると、奥の扉が開くと同時に、目の前に光が集まって剣の形に――掴もうと伸ばした左腕の中に、光が途轍もない勢いで吸い込まれていくッッッ!!?




「――――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああッッッッッッ!!!!」




「こ、コセ様!?」


 俺の左腕の中に解けて――鉄を叩いて武器を鍛えあげるがごとく、熱くて強烈な痛みに感覚が無くなっていくッッッッ!!!


「ぁぁ……ああ」


 膝を付いて、必須に痛みを堪えるッッ!!


「ハァー……ハァー……ハァー……ハァー」


 今にも熔け出してしまいそうな程、左腕の肘から先が熱い……。


「ごめ……クオ……リア」

「コセ様!!」


 再び痛みが引くのと同時に、俺の意識は急速に…………。



●●●



「ようやく来――コセ!?」

「ユウダイ!!」

「まさか!」

「なんだ?」


 私が“騎士の高級軍馬の指輪”で呼び出した白馬にコセ様を運ばせていると、ポータルの向こうで待っていたエリューナ様とマリナ様、チトセ様が急いで駆け付けてくる。


「もしや、また左腕が?」

「ええ。急に痛み出したようで、気を失いました」


 エリューナ様のあの口振り……どうやら、これが初めてでは無いようですね。


 新しい武器が出現しようとした瞬間、その武器を構成するはずだった因子がコセ様の左腕に吸い込まれ、グチャグチャに混ざり合っていくのが分かった。


 なんらかの持病などという言葉では片付けられないような、途轍もない現象に立ち会ってしまった……そんな気がしてならない。


「この人は、いったい何者なのか……」


 私の未来を案じるような、奇特な人。


 多くの鳥人の女の中から、真っ先に盲目の私を買った方……やっぱり、とっても面白い人のよう。


「どうする? 魔法の家が使えない以上、ここで野宿するか?」


 エルザ様の提案。


「いや、ここじゃプレーヤーに襲われる可能性はゼロじゃないし、明日のことを考えると、今夜はコセをゆっくり休ませたい」

「でも、コセさんがこんな状態じゃ……」


 エリューナ様の言葉に、反論するチトセ様。


「いや、幸いボスの情報は私が持っている……クオリア、“鳥獣戯画”を使ってでもコセを守れ」


 装備の都合上、取り敢えず私が使うことになったユニークスキルという奴ですか。


「分かりました、エリューナ様」

「世話が焼けるな、バカユウダイ」

「攻める人数は四人。私達で引き付ければ、なんとかなるはずです」


 どうしてこの三人は、他人の事でそこまで一生懸命になれるのだろう?


 気絶するほどの痛みに定期的に襲われている……この人は私と同じで、身体に欠陥を抱えた失敗作。


挿絵(By みてみん)


 私の傍には……こんな風に私のために一生懸命になってくれる人……誰も居なかったのに。


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