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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第11章 虹色の奇蹟

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385.超有能

「上から来るぞ!」

『ギギャ!!』


 森を進む私達を頭上から強襲してきたのは、大刀を持った人型モンスターであるバーバリアン四体。


 そのうちの一体攻撃を黒のランスジャベリン、“ブラッドアブゾーバー”で受け止め、この投槍の効果で衝撃を吸収。


「“鞭化”」


 更に柄から上の部分を鞭に変え、その血肉を削り取る!


 “ブラッドアブゾーバー”の”血肉吸収”により、この投げ槍の性能を強化。


 生物相手でなければ意味が無い時間制限付きの効果だが、効果が切れる一分以内に再び血を食わせれば、持続時間はその度にリセットされる。


「さすがに強いな」


挿絵(By みてみん)


 バーバリアンは身体能力特化の脳筋モンスター。動きも良いうえに武具の扱いにも長けているため、正面からの白兵戦では分が悪い。


「“血液噴射”」


 私の専用装備、“ブラッドジュースの指輪”に付いている黒い血の結晶から液体を飛ばし、口の中へと飛ばし込む。


「これが“吸血強化”か」


 契約者かパーティーメンバーの血を経口接種することで、自身の肉体を強化する私の固有スキル。


 血が躍るように熱く、獣に堕ちてしまいそうだ!


「ハハハハハハ!!」


 制限時間四分の間に仕留めきるべく、鞭で手脚を削っていく!



「“槍化”、“狂血投槍術”――ブラッドジャベリン!!」



 “ブラッドアブゾーバー”を血ぬれの巨杭となし――赤き鬼であるバーバリアンを貫き殺した!



●●●



「ここは……動きづらいですね」


 人型モンスターの斧による攻撃を、なんとか足裁きのみで躱していく。


 大振りの一撃を回避した直後、その眉間に”反響のテッキ”の先端をぶつけ……動きがおかしくなった?


「状態異常の混乱という奴ですか」


 威力の高い魔法をそのまま放てば、皆さんを巻き込みかねない。



「“瘴気魔法”――“直情の発露”」



 魔法を発動せず、左手の先に展開した魔法陣より瘴気を劇的な勢いで噴射……一撃でモンスターを消滅させた。


「クオリアさん、今のは?」


 チトセさんに尋ねられる。


「この装身具、“鬱屈なる感情の発露”の効果です。チトセ様」


 魔法の威力を凝縮して放つ、近距離用の攻撃手段。


 近接戦に持ち込まれなければ、使うことはまずないでしょうが。


「クオリアは、超高火力魔法使いと思った方が良いのかもね」

「MPを増やす装備やスキルは、アイツに優先的に回した方が良いだろう」


「お褒めにあずかり光栄です、マリナ様、エリューナ様」


 ステッキを地面に付けて、礼をするクオリア。


「別に、私達まで様付けしなくても良いんですよ?」

「いえいえ、これが私の主義ですから」


 目の見えない私は、決して一人では生きていけない。


 誰かに頼らざるおえない時があるのを知っているからこそ、こうして(へりくだ)った態度を普段からすることが重要なのです。


 私としては、養ってもらったうえで安らかな死を迎えさせてくれれば、なんの文句もありませんし。


「でも……」

「それが本音なら、俺は何も言わないよ。好きにしたら良い」

「ありがとうございます、コセ様」


 コセ様のおかげで一応、皆様納得して頂けた様子。


 でも、一番不満そうなのはコセ様のようですね。声音と心音で察しがつきました。


 そんなに、私の様付けが気に入らなかったのでしょうか? でも、心音が大きくなったのは、私が二人に礼を述べたとき……本当に、変なお方。



●●●



「少し待て」


 森での襲撃を何度かやり過ごして進んでいる途中、エルザに止められる。


 すぐさま木の上へと跳び、幹を剥がすエルザ。


「あれが、このステージ特有の宝箱か」

「良いのはあったか、エルザ?」

「いや、只の“万能樹液”だ」


 確か、色んな薬の材料になるっていう。


「では、私が預かりますね」


 チトセさんに、樹液入りの瓶が渡される。


「ここまで来て、ようやく一つか」

「見付けづらいから、見逃した可能性もあるな」

「隠れNPCであるエルザでも見落とすなら、俺達が発見するのは難しそうだ」


 マリナとエルザの会話に俺が混ざっていると、おもむろにクオリアが翼を生やして木の上へ。


「金属のようですね」


 バキバキという音が聞こえてきた数秒後、クオリアが降りてきた。


「目が見えないのに、よく分かったな?」

「エルザ様のおかげで、宝箱というのがどのような感じなのかを掴めました。微妙に空洞になっているのがそれのようですね。ここに来るまでにも、かなりあったかと」


 足手纏いになるかもと思われたクオリアの有能性……半端ない。


「この辺りにも結構ありそうです。時間を頂ければ集めて参りますが?」

「じゃあ……宜しくお願いします」

「十分ほどお待ちを」


 サブ職業のメダルを俺に渡し、飛び立っていくクオリア……あ、パンツ見えた。


「私も行く」

「ああ、頼む」


 ついて行ってくれるリューナ。


「……ねー、そのメダル……赤いんだけど」


「へ?」


 マリナに指摘されて見た手元のメダルは……ユニークスキルのそれだった。


「ユニークスキルの情報は聞いてなかったけれど……クオリアさん、マジで有能過ぎる」



○ユニークスキル、“鋼の戦士長”のサブ職業を手に入れました。




             ★



「ようやく、森を抜けたか」


 お昼過ぎ頃、ついにジメジメした森を抜けて島の中心地へと辿り着いた。


「ここは遺跡か?」

「どうやら要塞らしい。既に使われていない、朽ちた要塞だが」


 リューナが説明してくれる。


「要塞内部に、ボス部屋に繋がるポータルがあるらしい。ちなみに、要塞内に敵は出て来ないそうだ」

「敵が居ない?」


 そんなこと、今まであっただろうか?


「代わりに謎解きが用意されているそうだ。メルシュには、要塞前で連絡してくるようにと言われている」

「そうだったのか」


 今日、メルシュ達は元々攻略を休む予定だったから、スタンバイしてくれていたらしい。


「なら、さっそく」


 マリナ達がお昼を用意してくれている横で、魔法の鍵を使用する。


「こ、コセ殿!」


 空間を繋げてそうそう、レリーフェが緊張した面持ちで声を掛けてきた。


「昨日はすいません、レリーフェさん。もう頭を冷やしたので、気にしないでください」

「い、いえ……私も反省しました。今後は、包み隠さず報告させて頂きます」

「じゃあ、スリーサイズを報告して貰おうか」


 なぜか、リューナが妙な報告を求める。


「す、スリーサイズ? ま、まあ、コセ殿がどうしてもと言うのであれば……う、上から」

「いや、もう怒ってないので、本当に気にしないでください」

「……へ?」


「まったく、レリーフェさんの罪悪感に付け込むような真似をして」


 リューナを窘めておく。


「お前な……まあ、私から言うべきことじゃないか」


「ん?」


 やけに意味深だけれど、リューナのその含みはどういう事なんだ?


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