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3.スキルカード

「へー、これも食べられるんだ」


 滝の周りの草を採取していた。


 "盗賊"のサブ職業のおかげで、なんとなくだけど食べられる物とそうでない物が分かるようになったのだ。


「ドライ」


 食べられないと判断した草や細い木の枝を、”生活魔法”のドライで乾燥し、燃えやすくしておく。


 本来は木を切ってから暫く置いておかないと、水分が多くて焚き火には使用できないもんな。


 魔法って便利だ。


 僕が持っているスキルは、”剣術”と”生活魔法”のみ。


 サブ職業によって”回復魔法”と”盗術”が使用可能になっている状態だ。


「攻撃面が心許ないよな。マッチ」


 ”生活魔法”のマッチで小さな火を灯し、枯れ草を燃やす。


 木の枝を短剣で削り、グレイウルフの肉を刺して火で炙る。


「あつっ! もっと長いのを使った方が良かったか」


 グレイウルフの肉は全て火を通していく。


 チョイスプレートに入れていれば痛まないとは思うけれど、いつでも肉を焼けるわけじゃない。


 いざという時、すぐに食べられるようにしておきたかった。


「どっかに鍋とか無いかなー」


 拾った草をそのまま食べるのは怖いし、お湯自体は”生活魔法”のヒートですぐ沸かせるけれど、水を入れておく器が無い。


 器があれば、持ち運べる水の量も増えるのに。


 水がある場所から離れるのが怖いな。


「そろそろ良いか?」


 少し焦げてるけれど、中は大丈夫かな?


「戴きます」


 手を合わせて頭を下げ、命に感謝する。


「ハフハフ。うん、大丈夫そうだ」


 薄目に切ったから、ちゃんと中まで火が通っている。

 問題は無さそう。ただ――


「……不味い」


 妙な臭みがあるし、凄く硬い。


 焼きすぎのせいで硬いわけではないはず。


 香辛料とか薬味って……大事だな。



            ★



「うっ!!」


 昼食を食べた僕は、先へと進んだ。


 暫くはグレイウルフや複数のゴブリンと戦ったのだが、今回僕の前に現れたのは……一メートルくらいの巨大蜘蛛(くも)


 急に槍が欲しくなってきた!


 ゴブリンから手に入れた武器はあるけれど、リーチの長い"粗雑な毒槍"は破壊されたからか無くなってしまってるし。


 巨大蜘蛛が飛び上がって襲ってくる!


「おわっ!」


 躱しざまに、"粗雑な骨クラブ"で迎撃!


「この武器、結構役に立つな」


 蜘蛛は……まだ生きていた。


「悪いな」


 経験値みたいなのがあるみたいだから、脚が折れて動きが鈍くなっているコイツを逃がす道理は無い。


 一度襲ってきてるし。


 二本の脚を踏みつけて、クラブで胴体と頭を潰す。


「ううっ」


 死ぬと全部光になって消えるとはいえ、飛び散った血が身体に付着するのは辛い。


 ――カサカサという物音。


「……最悪だ」


 新手の大蜘蛛が現れる……数は数十匹。

 しかも、地上と天井、左右の壁からも!


「誰か……僕に攻撃魔法をください」



            ★



「し、死ぬかと思った!」


 逃げながら確実に一匹、また一匹と始末していき、ようやく全滅させた。


 その間に、身体に何度……うえぇぇ!!


「あれは……」


 最初の穴蔵のような、光に照らされていた場所がある!?


 大きな岩を登り、壁から柔らかい光が差し込んでいる場所になんとか到着。


「ふー、一安心だ」


 ここはおそらく、安全エリア。


 その証拠というわけじゃないけれど、さっき僕が登ってきた所には見えない壁が出現しており、戻れなくなっていた。


「今日はここで休もう」


 時間を確認すると、既に十九時過ぎ。


「それにしても、これはなんなんだ?」


 獲得アイテムの中に、蜘蛛のモンスターを倒している際に手に入れたであろうアイテム、”Gスパイダーのスキルカード”があった。


 一度タップしてみる。



○このスキルカードを使用しますか?



 相変わらず、詳しい説明が無い。


 これって、あの蜘蛛のスキルが手に入るって事だよな?


 あの蜘蛛共、飛び掛かってくるばかりで、それ以外は何もしてこなかったんだよな。


 蜘蛛の糸とか吐かれなくて本当に良かった!


「……使ってみるか」


 OKを押す…………何も起きない?


○スキル、"壁歩き"を修得しました。


「そ、そっか。うん」


 変なスキルじゃ無くて良かったー! 万が一蜘蛛男みたいになっちゃったらどうしようとか思ってた! スキルは地味だったけど!


「あれ? いつの間にか戦士.Lv3になってる」


○戦士.Lv3になりましたので、武術系スキルの制限が解除されます。


 新しいサブ職業が手に入るわけではないようだ。


 ”剣術”スキルの表示から、リストが出て来た。


《剣術》

●パワーブレイド ●パワープリック

●ブレイドサークル ●パワースラッシュ


 使えるのはこの四つか。


「技名なんだろうけれど、詳細が分からない」


 なんでこの辺は優しくないんだ?


「TPって、この技を使うためのポイントなのか?」


 チョイスプレートには、HPが無い代わりにMPとTPが表示されている。


「ちょっと試してみるか」


 立ち上がり、鉄の短剣を構える。


「パワーブレイド」

 

 剣が光った!


 暫くすると、光が消える。


「やっぱり、TPを消費するんだ」


 チョイスプレートを確認してみると、TPが減っていた。


 TPを消費するのが武術系スキルって事かな?


 ”盗賊”のサブ職業で得た”盗術”というのも、TPを消費しそうだ。


 やっぱり、こっちの方も制限が解除されていた。


《盗術》

●スティール ●罠解除 ●鍵開け


 さすが盗賊。


 いや、盗賊と言うよりは泥棒だな。


「こうして見ると、”盗賊”を選んで正解だったかもな」


 罠解除なんかは、これから必要になることが多そうだ。


「それよりも、”剣術”を試さないと」


 ちゃんと実戦で使えるように!


 魔法が使えなかった分、かなり嬉しいし!


「パワープリック! ――おわっ!?」


 パワーブレイドの時と違い、パワープリックは剣先に引っ張られる感覚が?


「パワースラッシュ!」


 パワースラッシュは、勝手に剣の刃先が横を向くように引っ張られた!


「プリックが突きで、スラッシュが斬り。ブレイドは……プリックやスラッシュよりも使い勝手が良いって所かな?」


 ブレイドは引っ張られるような感覚は無かったし、消費したTPは同じくらい。


 公平性を考えれば、多分スラッシュやプリックの方が威力が高いんだろうな。


「後は――ブレイドサークル! …………ん?」


 何も起きない?


「でも、TPはどんどん無くなってる。なんで?」


 ブレイドサークルを解除と念じると、TPの消費が止まった。


「詳細が分からないのが地味に痛い」


 今のでTPを八割以上無くした。


 MP同様少しずつ自然回復しているようだし、寝ている間に全回復はするだろう。


 洞窟の中は寒くないため、毛布にくるまるだけで一夜を過ごすのに問題は無い。


 グレイウルフの肉を少しだけ食べて、さっさと眠ることにした。



◇◇◇



『順調ですねー、コセ様』


 ダンジョン内の情報は筒抜けなのです。


『さて、コセ様が居る場所は……ほう、次はボーナスポイントではありませんか!』


 この先の選択は、本当にコセ様の命運を分ける物になりそうですね~、フフフフフフフ♪


『暫くは独りで苦しむことになりますが、いずれ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 今その選択が正しく思えても、未来の失敗に繋がっているかもしれない。


 これはそういうゲーム。


『貴方は私の一推し。このゲームをもっともうぉっと! 盛り上げてくださらねば~』


 お願いですから、終盤ステージまでは生き残ってくださ~い!


 まだ貴方は、第一ステージすらクリアしていないのですから!


『それにしても、醜いですね~』


 他の映像には、人間らしい人間達の欲望が渦巻いている。


『皆で苦しむのと、一人で苦しむの。果たしてどちらの方が、まだ()()()()()()()()()()()


 人間というのは、どいつもこいつも救いようが無い♪


 数々の映像の向こうでは、それを実感させてくれる出来事が飽きるほど繰り広げられていた。


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