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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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382.烏鳥人のクオリア

 NPCに訊いて回り、孤島の地下中腹部にあるという、ろくに光も届かない奴隷商館へと辿り着いた。


「ここの奴隷達にも、明日の突発クエストの説明はされていますか?」


 奴隷商館の女部屋を取り仕切っている、お婆さんNPCに尋ねる。


「ええ、皆さんと同じように」


 前々から想っていたけれど、奴隷商館のNPCは他のNPCよりも融通が利くな。


 お店をやっているNPCは、その辺のよりも思考が優秀に設定されているようだ。


「この中で、一番無口なのは誰ですか?」


「この子かしらね」


 ダメ元で尋ねてみたけれど、まさか本当に写真が表示されるとは。


 写真と同じ顔の女性を探すと、すぐに見付かる。


 白い美脚を大胆に晒す、黒い目隠しをした銀髪ロングの女性。


挿絵(By みてみん)


 目隠しには、金糸で縦に眼が三つ描かれている。


「明日の突発クエスト、参加してみる気はありますか?」


 彼女の口元が、僅かに綻ぶ。


「盲目の私に、身体では無く戦力をお求めで?」

「ええ、そうです」


 いきなり妙な事を尋ねられたけれど、取り敢えず無視。


 今欲しいのは、即戦力になるやる気のある人間。


「この通り目が見えませんが、戦力になると?」


「五感のどれかが無くなると、残りの感覚器官がそれを補うと聞いたことがあります。知りたいのは、ゲームを攻略して自由になる気があるかどうかです」


 さすがに、盲目の人間が戦えるくらい動けるようになるというのは、漫画の読み過ぎだろうか……。


「……私は魔法使い。魔法による遠距離戦が得意です。機動力を生かした戦いは求めないでください。それと、このゲーム攻略後も衣食住提供の約束を。私が求めるのは、安らかに死を迎えることですから」


 なにかを達観している彼女の空気感に、惹かれる物を感じる。


「君を買わせて貰うよ」


「……面白い方」


 その微笑みは、なにを意味するのか。


「私の名前は、クオリアと申します」

「コセと言います」


 彼女を、彼女の装備ごと、760000(七十六万)Gで買い取った。



            ★



「心配していたら、まさか女を二人も連れ帰って来るとはな」


 帰宅早々、リューナに半眼を向けられる。


「あの……色々ゴメン。今は落ち着いてる」


 それでも、トゥスカの身を案じると気がおかしくなりそうな感覚に襲われるけれど。


 今は、意識して考えないようにしていた。


「明日の朝にでも、レリーフェ達に謝っておくんだな」

「落ち込んでいるように見えたよ、レリーフェさん」


 もう少し、優しい言葉をくれても良いんじゃ無いっすかね。


「どちらも女性ですか。二人とも、良い声ですね」


 クオリアが口を開く。


「異世界人のエリューナだ。親しい人間にはリューナと呼ばせている」

「烏鳥人のクオリアです。目が見えませんので、その辺ご理解ください」

「同じく、異世界人のマリナ。宜しく」


 順に握手していく三人。


「それで、そっちのは?」

「ヴァンピールのエルザだ。恩があるから取り敢えず協力してやるが、父親に出会ったら奴の首を優先させて貰う」


「……なんの話?」


 マリナに尋ねられる。


「そういう設定があるんだよ」


 第三十四ステージで、そのイベントが発生するらしい。


「取り敢えず、エルザにはこれを渡しておくよ」


 “吸血回復のスキルカード”と、サブ職業の“狂血魔法使い”を渡す。


「分かってるじゃないか、コセ」


 エルザの固有スキルは、狂血系と相性が良い。


「エルザはどういう風に戦うんだ?」


 リューナが尋ねる。


「得物はこれ、”ブラッドアブゾーバー”だ」


 彼女が手にしたのは、真っ黒なランス。


 ただ、やたら細くて軽そうだ。


「鞭やランスとしても使用可能だが、コイツは投げ槍だ。つまり、近、中距離戦闘が得意ということになる」


「なるほど。チトセとは相性が良さそうじゃないか」


 狂血は水と鉄の二属性。


 俺達の誰とも能力が被らない。


「それで、クオリアは?」


「私は純粋な魔法使いタイプですが、杖代わりにこの装身具を使います」


 銀の板のような物が手首から肘先まで伸びており、その先からは紫の布が棚引く。


 彼女のスリットの深い黒ドレスも合わさって、妖艶と不気味さが同居している気がしてしまう。


「ユウダイ、どこ見てんのよ」


「へ?」


「舐め回すように私の身体を見てましたね。特に太股の辺りを」


「わ、分かるんですか、そういうの?」


 舐め回すように見ていた覚えはないけれど。


「目が見えないせいか、視線や気配には敏感なのです」


 なんとなく、それだけじゃ無い気がする。


「鳥人なんですよね? 翼は?」


「普段は不便ですから、消しています。ここは狭いので、今はお目にかけられませんが」


 そのため、身体的特徴は異世界人とほとんど変わらない。お尻の上辺りからは黒い羽毛の尻尾羽が生えているけれど。


「明日の昼過ぎには突発クエストがあるし、朝にでもお互いの能力を実際に確認して置いた方が良いだろうな」


「じゃあ、今日はもう休みましょうか」


 チトセさんの提案により、眠ることに。


「それじゃあ行くぞ、コセ」

「心配掛けた分、今日はタップリ相手シて貰うから」


 リューナとマリナに捕まる。


「えっと……はい」


 トゥスカの状況を考えると気後れするけれど……俺も二人に癒されたいと思ってしまっていた。


「……えと、三人は別のお部屋でしたか」

「色男め」

「アハハ……クオリアさんとエルザには、明日の突発クエストについて説明するね」


 チトセさんの乾いた笑いと気遣いが……なんか痛い。



●●●



「……ハアハア、ハアハア」


「また痛むの、アテル?」


挿絵(By みてみん)


「大丈夫?」


挿絵(By みてみん)


「……起こしちゃったか」


 眠っている時に背中が激痛に襲われ、痛みを堪えていたことが両隣で眠っていたサキさんとカオリさんにバレてしまう。


「……その痛み、いつになったら無くなるんだろうね」


 パドマさんとマサコさんも、僕のように体調不良に襲われている……アップデートの日、異形の人間と戦っているときに靄に触れてしまった事で。


「大丈夫……もう、大分治まってきたから。足が吊ったような物だよ」


 二人がその身体を、左右から密着させてくれる。


 お返しに、サキさんとカオリさんの髪を指で梳かす。


「本当に大丈夫だよ。こんな痛み、そのうち問題なくなるさ」


 そういう予感があるから。



●●●



「待たせた」


 家の外で待っていたマリナ、リューナ、チトセさん、エルザ、クオリアと合流する。


「ちゃんと謝ったか?」


 リューナに尋ねられた。


「メルシュには。レリーフェさんには会えなくて……」


 たぶん、合わせる顔がないとか思ってるんだろうな……ハァー。


「それじゃあ、さっさと孤島での用を済ませて、今日中に次のステージに進みましょうか」


 チトセさんに促される。


「はい」


 明日一日は時間が潰れると考え、今日は思い切って攻略を進めることにした。


 半分くらい、皆が俺に気を遣ってくれたからだろうけれど。


「俺は……幸せ者だな」


 今はこんなにも、俺のことで一喜一憂してくれる人達が居るのだから。


第10章 混迷の争奪 完結です。



次章の投稿は、少し開く予定です。

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