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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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381.ヴァンピールのエルザ

 島の上を目指して細い起伏のある夜道を進んでいる間、チトセさんはただ付いてくるだけ。


「コセさん、どこに行くつもりですか?」


 プレーヤーらしき人影が見えたせいか、ここに来て声を掛けてくるチトセ。


「出来ることを、今のうちにしておこうと思っているだけです」


 というのは後付けで、本当は勢い任せに進んでいるだけ。まったくの嘘というわけでもないけれど。


「……あった」


 頂上にあった、古びた家の前に立つ。


 明らかに他の家よりも古い、小屋のような家の前に。


 すると、本来は開かないはずの扉が独りでに開く。


「こ、コセさん? ……これって、ミイラ?」


 家の奥には、鎖で吊されたミイラが。


「これを使ってください、チトセさん」


 チトセさんに、隠れNPC獲得のためのアイテムを渡す。


「これって、マリナさんに使わせるはずだったんじゃ……」


「早く」


 ダメだな、チトセさんに当たってしまっている。



○“神祖の血漿石”を使いますか?



 恐る恐る、YESを選択するチトセさん。


「キャ!!?」


 すると、ミイラが蠢き出す。



○以下から一つを選択出来ます。


★ヴァンピールをパーティーに加える。

★吸血人のサブ職業を手に入れる。

★狂血強化のスキルカード・吸血強化のスキルカードを手に入れる。



「契約を」

「……そんなに、嘘を付かれていた事がショックだったんですか?」

「……」

「トゥスカという人が、そんなに特別なんですか?」

「……ああ」


 なによりも、トゥスカだけは……絶対に失いたくない。


「解ってます。こんなのは八つ当たりだって」


 レリーフェ達が教えていようと黙っていようと、俺に出来た事なんてなにも変わらない。


 下手をすれば、冷静を欠いてチトセさん達を危険に晒していた可能性の方が……でも、トゥスカが苦しんでいたかもしれないときに、自分が暢気に過ごしていたかと思うとッ!!


「……羨ましいな」

「へ?」

「私……そんな風に心配されたことなかったから」


 チトセさんの悲しそうな表情に、少し冷静になる。


「当てつけで家出して警察に補導された時、母親が迎えに来た事があるんですけれど……言ってたんです。こんな恥ずかしい真似、二度とするなって」


「恥ずかしい……真似?」


「私の心配よりも、気にしていたのは世間体。自分はバツ2のくせに、むしろだからこそ……子供よりも自分の体裁の方が大事だったんでしょうね」


「チトセさん……」


「私、実は結構不良だったんですよ。勢いに任せて、売春に手を染めようかとも思ったんですけれど……出来なかった。まあ、おかげで後悔せずに済みましたけれど」


 チトセさんがやけになってしまうくらい、劣悪な家庭環境だったって事か。


「俺のことは……軽蔑しないんですか?」

「まあ、少々。でも、一年間大樹村で過ごしている間に、精神的に色々学びました。うちの父親にとっての異性は遊びで、母にとっては縋る対象。どっちも、コセさんみたいに相手を大切に想っていたわけじゃない」


「……過大評価ですよ、そんなの」


 少なくとも俺は、トゥスカとそれ以外の女で明確に差を付けている。



「もし私も、コセさんに愛されたいって言ったら……どうします?」



「へ?」

「フフフ! 冗談ですよ、冗談」


 顔を逸らし、チョイスプレートを操作するチトセさん。


 すると、ミイラの干からびた身体が瑞々しくなっていく。



「――私の前でイチャイチャしやがって」



 ミイラは、切れ長の目のショートボブカット黒髪美女となり、素っ裸だった蒼白の身体は黒いコートに覆われていく。


 チトセさんの告白ジョークと美女の裸体で焦りが無くなってるんだから、俺は救いようがない。


「死の淵から呼び覚ましたお前に、名付けの権利をくれてやる」


挿絵(By みてみん)


 ヴァンピールが、チトセさんに向かってそう言い放つ。


「名付け……じゃあ、反抗期で」

「待て待て待て待て待て!」

「あれ、ハンコウキはダメですか? じゃあヨロシクとか、ジョートーとかどうでしょう?」


 不良系キラキラネームが好みなのか、この人?


「お願いです、俺に決めさせてください」


 ヴァンピールが可哀想過ぎる。


「仕方ないですねー」


 本気で面白くなさそうなチトセさん……マジかよ。


「じゃあ……エルザで」


 パッと思い付いた割に、なかなか良い名前ではないだろうか。


「仕方ないですねー」


 同じ言葉を繰り返されたんだが?


「エルザか、良いだろう。おい」


 俺に声を掛けてくるヴァンピールのエルザ。


「……礼を言う」


「ああ、はい」


 嫌だったんだ、やっぱり。



○定員オーバーのため、チトセがパーティーから外れました。




●●●



「というわけで、僕は一旦パーティーから外れることになったので、お二人と組ませてください」


 カプアさんとウララさんにお願いする。


「分かったわ。それじゃ、改めて宜しくね、ノーザンちゃん」

「はい、宜しくお願いします」


 三人でパーティーを組むと、もう一人、眠っているウララさんの双子の弟もパーティーメンバー入っている事に気付く。


「そう言えば、僕達以外の人とパーティーは組まないんですか?」


 僕を入れても四人。まだ二人分の空きがある。


「解放軍との戦いが終わった後、一緒に攻略を進めてくれる方でないと意味がありませんから。その上で信用出来ないと、この場所に連れて来るのは怖い」


「では、どうして僕とトゥスカ姉様をここに?」


 カプアさんに尋ねる。


「状況的に致し方なかったのと、お二人の様子を暫く観察していて、ある程度信用しても良いと判断したからです」


「そんなに前から、カプアさんにマークされてたんですか」


 全然気付かなかった。


「ところで、そろそろ《龍意のケンシ》というのがどういう集まりなのか訊いても良い?」


 ウララさんに尋ねられる。


「どうというのは?」


「どんな風に集まって、どういう人達がどういう目標を持って攻略に望んでいるのか。ゲーム攻略に積極的なのは、理解してはいるんだけれど」


「詳しいことは僕の一存では言えませんが、どういうメンバーで、僕がコセ様を慕うようになった経緯くらいは良いでしょう」


 トゥスカ姉様が居ない事への不安を紛らわせるように、僕は自分でも驚くほど饒舌に語り出した。



●●●



「最近、誰も来ないわね」

「このまま私達、殺処分になってしまうのかしら……」


 女鳥人だけの牢が並ぶ奴隷商館にて、鳥人達が口々に不安を吐露していく。


「毎日毎日、飽きない方々ですね」


 買われなければ死、買われても地獄……果たして、どちらの方が救いなのか。


 まあ、全ては買い手次第ですか。


「……誰か来たみたい」


 入り口側の女の声に辺りは静かとなり、皆の息を呑む気配だけが微かに漂う。


 すぐに複数の気配が近付いてきて……男を先頭に二人の女が。


 ……この気配、一人は本当に人間なのですか?


 なにやら、ここを管理しているNPCとやらと話している様子。


「……彼女か」


 男が私を認識し……近付いてきた?


「明後日の突発クエスト、参加してみる気はありますか?」


挿絵(By みてみん)


 彼の意外な言葉に、心が躍り出す自分が居た。


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