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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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378.魔神・狂血鬼

「……似合っているではないか、トゥスカ」


挿絵(By みてみん)


「兄さん……」


 思い出などほとんど無い兄は、獣の聖地に聳える石の城内部の玉座に……鎮座していた。


「オクネルの見立てはさすがだな」

「お褒めにあずかり光栄です、我が王よ」


 聖域内で襲ってきたコヨーテの女獣人……どうやら兄の女だったらしい。準幹部のような立ち位置にいる様子。


「ん? そのドレスは気に食わんか、トゥスカ?」

「素敵なドレスだとは思います……」


 キラキラした白いドレスと、時間を掛けてセットされたフワフワした髪のこの姿は、是非ともご主人様に見せたいくらい。


「異種族に対する弾圧……控えて貰う事は出来ませんか?」

「……なにを言い出すかと思えば、くだらん事を」


 玉座から立ち上がるヴァルカ兄さん。


「お前の意中の男が、他種族なのは分かっている。腹立たしいことにな!」


 ――凄まじい怒気!


「異世界人に対して怒りを覚えるのは……理解できます」


 私達獣人を買う権利があったのは、主に異世界人だから。


「でも、他種族全てになんて!」


「……そこまで洗脳されたか、トゥスカ」

「洗脳だなんて!」


「獣人はもっとも数が多く多種多様。そして、奴等は獣人を見下している」


「そんなこと!!」


 少なくとも私の仲間に、獣人という理由だけで見下すような人達は居ない!


「俺は見てきた。異世界人に尻尾を振る同胞を、獣人達が捨て駒にされる姿を! だから俺は、死を覚悟で反逆を起こした!」


 もしかして、私がご主人様に対して最初にしたような事を……。


「首の骨を折ると言って脅したら、奴等は簡単に俺を奴隷から解放した……まさか、そんな小者に自分がずっと扱き使われていたとも気付かず――俺は!」


 憤る兄に、涙を流しながら嗚咽を漏らし始めたオクネルさん……。


 この二人は……他種族を憎まずには居られないほどに……深く傷付き、また恐れてしまっているんだ。


 他種族を信じて……裏切られてしまうことを。


 だから呪文のように、己を呪縛するがごとく他種族を……己の敵を罵倒し続けている。


 もう、その思い込みから彼等が抜け出すのは……不可能なのかもしれない。


「少なくとも、私が愛した人は……種族なんて枠に囚われるような小さな男じゃない」


 私が出会ったのがご主人様でなかったら……兄さんのようになっていたのかもしれない……でも。


「どうやら時間が必要なようだな。俺の怒気に当てられても己を曲げなかった事だけは褒めてやろう。オクネル、トゥスカを客室に閉じ込めておけ」


「はい」


「兄さん。レジスタンスという敵を作り上げたのは、兄さんのそのやり方その物よ!」


「覚悟の上だ。奴等を、裏切りの同族諸共に全滅させるのもな」


「そのために、解放軍の人間が死んだとしても?」


「既に犠牲は出ています、トゥスカ様」


 オクネルさんの諭すような声。


「昼の戦いでも、幹部が二人殺されました。その他にも大勢死に、怪我を負った者はそれ以上。なにより、我々が敗北すれば今まで以上に獣人が虐げられることになるでしょう」


「それでも、こんなやり方を続けていたら!」


「それが王命であれば、我等は愚直にそれを果たすのみ」


 オクネルさん……そこまで兄さんに心酔して……。


「いずれ主の特徴を聞かせて貰うぞ、トゥスカ。この聖地に現れたときは、この俺自らの手でお前を奴隷から解放してやろう。その男の化けの皮と共にな」


「私の夫は、コセは……脅しに屈するような人じゃない」


 あの人は――とても誇り高い人だから。



●●●



「第三十一ステージのボスは、魔神・狂血鬼。弱点属性は光、有効武器は針。危険攻撃は、血を広範囲に放射する“狂血魔法”、ブラッドイルミネーション」


 いつもの場所、赤黒い妖精の隣で説明する俺。


「魔神は翼が生えた鬼という感じで、ステージギミックにより、床から血が染み出してどんどん競り上がってくる」


 飛べないと不利になる状況が増えてきたな。


 天空遺跡に辿り着くには機動力のある飛行手段が必要だから、そのためのアイテムも用意されていた。ジュリーの両親は、その辺ちゃんと考えてアイテムを配置していたんだろうな。


「光属性となると、要はマリナか」

「分かりました」

「それじゃ、行くぞ」


 妖精の横にいつもの蜂蜜瓶を置き、扉の中へ。


 すぐに奥で赤黒いラインが灯り、赤灰の石の身体を空へと飛び立たせる!


「鬼と聞いていましたけれど……獣に近い食人鬼という感じですね」


 首が頭よりも太く、三角状に広がっているからか、確かに二足歩行の獣というイメージが強い。


「“二重魔法”、“光線魔法”――アトミックレイ!!」


 マリナの二つの極線のうち、一発が魔神・狂血鬼に直撃した!


「“空遊滑脱”――“逆さ立ち”」


 リューナの身体が、空に吸い込まれるように逆さに昇っていく……いや、落ちていって居るのか。


「“飛王剣”!!」

「“飛剣・靈光”!!」


 魔神戦でお決まりとなりつつある、リューナとの上下からの飛剣同時攻撃を、二人で前に出ながら食らわせる!


「血が!」


 既に床は、数センチほどの血の池溜まりに。


 俺は“地天衝のブーツ”を使って、マリナとチトセさんは頭の翼で、鳥獣戯画・夜鷹は腕の翼で飛ぶ。


「まず――”空衝”!!」


 血の池から伸びた腕に脚を掴まれるも、足裏からの衝撃で蹴散らす!


 さほど長くは伸びてこないけれど、血が増えればどうなるか。


「――“飛王剣”!!」


 奴が口から放った石の槍を、TP十分の一と引き換えに迎撃!


「“吹雪魔法”――ブリザードトルネード!!」

「シャワーモード!!」


 リューナの凍結の竜巻で左翼が凍り付き、その隙にチトセさんのピンクの薬液が魔神の下半身に……あの薬液、ネバネバというかベトベトで、関節に入り込んでいる。



「“六重詠唱”、“硝子魔法”――グラスレイ!!」



 動きが鈍った隙を突き、マリナの六つの魔法陣から現れた円形の硝子から光線が放射――魔神の石の身体を融かしていく!


『――ガァァァァッッ!!』


 魔神・狂血鬼が魔法陣から放った血の放射――ブラッドイルミネーションを盾代わりに、マリナに突っ込んでいく!


「まずい!」

「速い!」


 虚を突かれた俺とリューナじゃ――間に合わない!!


『キュルル!!』


 鳥獣戯画・夜鷹が“光線魔法”を使ってくれるも、魔神の突進は衰えない!



「武器交換――“ブレイクショットガン”」



挿絵(By みてみん)


 チトセさんの冷たい声と共にその手に握られたのは――黒くてゴツい散弾銃!?


「“装甲炸裂弾”――ファイア!!」


 武具効果を使用してから引き金を引き、魔神とすれ違う刹那に強力な散弾をぶつけて――その巨体の軌道をずらした!!?


「“二重魔法”――“閃光魔法”、フラッシュカノン!!」


 ブラッドイルミネーションが消えたのちに二つの閃光の玉をマリナがぶつけ、激しい光が周囲を照らし――魔神・狂血鬼の身体は跡形もなく融けていった。



○おめでとうございます。魔神・狂血鬼の討伐に成功しました。



「フー、一時はどうなるかと思った」

「だな」


 今回、俺とリューナはあまり活躍出来なかったな。


「助かりました、チトセさん。夜鷹も」

『キュルル!』

「いえ……」


 チトセさんの様子がおかしい。


「それにしても、それがお前本来の武器か」


 リューナさんに指摘され、そそくさと薬液銃に戻してしまうチトセさん。


「ええ……まあ」


 理由は分からないけれど、本気で使いたくなかったらしい。


 俺の、チトセさんの前の得物は重い武器という予想、外れてたかな。


 まああの銃、砲門が六つもあってかなり重そうだけれど。



○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。


★狂血鬼の投げ槍 ★吸血回復のスキルカード

★サブ職業:狂血魔法使い ★投槍術のスキルカード



 俺は”吸血回復のスキルカード”を選び、マリナにはサブ職業を選んで貰う。



○これより、第三十二ステージの流刑の孤島に転移します。



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