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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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364.魔神・受胎母像

「第二十四ステージのボスは、魔神・受胎母像。弱点無し、有効武器無し、ステージギミック無し、危険攻撃も無し。耐久力が優れている点を除けば、魔神その物はこれといってなにもしてこないし、その場から動きもしないから」


 メルシュのぉ、いつもの抗議でぇす。


「それじゃあ、最弱のボスじゃね?」


 アオイがツッコミを入れまぁす。


「厄介なのは、一定時間ごとにお腹から小魔神を生み出してくること。小魔神が倒されると産むまでの間隔が短くなるけれど、倒さないと延々と増え続けるだけだから、小魔神を倒さずに引き付ける人間と、受胎母像を攻撃するチームに別けることをお薦めするよ」


 なんだかぁ、厄介そうですねぇ。


「それと、受胎母像が一定以上のダメージを受けると二体同時に生み出すようになるから、気を付けてね」


 大体いつもそうですけれどぉ、短期決戦が望ましいみたいでぇすねぇ。


 メルシュとユイはぁ、今回もパーティーを組むみたぁいです。


「なら、私達はさっきと同じ手で行こう。リンピョンが小魔神を引き付けて、他の面子で一斉攻撃だ」


 メグミの提案はぁ、理にかなっている気がしまぁす。


「じゃあ、私達から行かせて貰うから」


 スヴェトラーナがそう言った時、偶然目が合い――睨まれた。


 私がアメリカ出身と聞いてぇ、嫌いになったようでぇす。


「……彼女の名前に愛称、それにあの服装……彼女はおそらく」


 私の想像通りならぁ、彼女が西側諸国、日本などのアジアも敵視するのぉ……当然でしょうねぇ。


 特に私はぁ、血筋的に罰せられても文句を言えませぇん。


「クリスちゃん、どうかした?」


「なんでもありませぇんよ、サトミ」


 コセ達を最深部まで送り届ける……それが私の役目。


 もし……もし、私の存在その物がコセの邪魔になってしまう時が来たら――私は、花のように散ろう。


 この銃、“甘い花弁の刹那”の名のように、甘い記憶を抱いて刹那に散る。


 私は、クリスティーナという女は、そういう終わりを迎えて死にたいのだから。


「終わったみたいですよ」

「さすが、早いな」

「それじゃあ、次は私達の番ね」

「ハーイ!」


 ビューティフルなサトミがリーダーの四人パーティーでぇ、ボスルームに入りまぁす!


『――ゥォォォォォォォォォォォォォ』


 奥に白色のラインが走り――お腹の大きな灰石の女神が照らし出され、美しくも不気味な歌声を響かせる。



『ぅ――ぉおおああああああああああッッ!!!』



 石のお腹が割れ――ピンク色の液体と共に生まれ出でたのは、小魔神・銛人魚。


 私が初めて相対した魔神であり、見学だけで一切戦っていない相手。


「お願い、リンピョンちゃん!」

「お任せください! ”跳弾”!」


 リンピョンが一人で突っ込み、石像の人魚の頬に蹴りを入れて引き付ける。


「“魔力砲”!!」

「“竜光砲”!!」


 さっそく、サトミとメグミの大威力の光線が腹ボテ女神に直撃!!


「“金星砲術”――ヴィーナスキャノン!!」


 左手で構えた黄金と橙色の銃口から魔法陣を展開――高熱の金色光弾を発射!!


 同時に、銃形態にしてある“甘い花弁の刹那”の引き金を引き“魔力弾丸”を連射する!



『ぅ――ぉおおああああああああああああああッッッッ!!!!』



 先程以上の絶叫を轟かせ、二体の小魔神が――お腹の中から体液を飛び散らせながら這い出て来た!


「させないわよ。“颶風魔法”――ストームダウンバースト!!」


 動き出す前にサトミが母像ごと重圧を叩きつけるも、仕留めきれてはいない。


「“金星砲術”――ヴィーナスブラスター!!」


 二人から離れ、女神の銃から熱線を放ち――兎のような小魔神は仕留める!


 すると、棍棒を持った猿のような魔神が私を狙ってきた!


「“可変”!」


 “甘い花弁の刹那”を剣に変形させ、黄金の銃と銃剣で猿魔神の棍棒の降り下ろしを受けとめる!


「クリス!」

「お二人は、魔神を仕留めてください!」


 これくらい――一人でもなんとかしてみせます!


「“薔薇魔法”――ローズレーザー!!」


 猿魔神に直撃させようとするも、躱されてしまう!


『ケケケ!!』


 棍棒を伸縮させた事に気付くのが一瞬遅れ、横合いからぶたれて左腕の甲にッ!!


 この感触……骨に罅が。


「まだ私――コセの役に立ててません!」


 左手の“ゴルドヴィーナス”を捨てて、“甘い花弁の刹那”を手に――前へ!!


『ケケケケ!!』


 再び横から振るってきた棍棒を剣で上げ去なしながら――更に前へ!!



「“薔薇剣術”――ローズスラッシュ!!」



 猿の小魔神を袈裟斬りにし、仕留め消す。


「……アンビリーバボー」


 私の“甘い花弁の刹那”に……神代文字が三つ刻まれている。


「私が、文字を刻めるなんて……」


 遺伝的に、絶対に無理だと思っていたのに……。


「コセの……おかげかもしれませんねぇ」


 彼が私を受け容れてくれたから、()()()()()()()()()事が出来たのかもしれませぇん。



「“薔薇魔法”――ローズフラッシュ!!」



 “甘い花弁の刹那”から力を流しこみ、魔法の威力を強化!


 無数の大花弁を魔神・受胎母像に纏わり付かせ――花弁の中で散らせた。


挿絵(By みてみん)


「……私にはもう少しだけ、コセを癒してあげる資格があるようでーす」


 いつの間にか銃身には六文字が刻まれていて、“甘い花弁の刹那”の形状と共に……その名を“甘い蕾の中の逢瀬”へと変えていた。



○おめでとうございます。魔神・受胎母像の討伐に成功しました。



 受胎母像が倒されたからか、リンピョンが戦っていた小魔神が突然消えてしまいまぁす。



○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。


★受胎母像の御神体 ★魔神装備引換券

★小魔神召喚の指輪 ★サブ職業:魔神殺し



「受胎母像は高く売れる以外の使い道が無くて、引換券は今までの魔神の名前が付いた武器一つと交換だったか」

「指輪で呼び出せる小魔神は、これまで戦った魔神からランダムだから戦術的に扱いづらく、サブ職業の“魔神殺し”は、魔神系の敵にだけダメージアップ補正が働くんでしたね」


 メグミとリンピョンがぁ、改めて説明してくれまぁす。


「実質、御神体一択ってメルシュちゃんは言っていたけれど、”魔神殺し”も悪くないわよね~」


「ほとんどボス戦でしか使えないそうですけどぉ、使いどころはありまぁすねぇ」


 今回のように小魔神に襲われる機会も今後あるそうですしぃ、いつどんな突発クエストに巻き込まれるかぁ、分からないですからねぇ~。


「クリスちゃん。ボス戦前と打って変わって、今はとても幸せそうな顔をしているわね。いったいどん事を考えてるのかしら~」

「サトミよりも、ずっとずっとエッチな事をコセにシてあげたいなってぇ、考えてまーす!」

「あら、私だって負けないんだから♪」


「お前らな……」

「まだ暫くはお預けでしょうから、そういうこと言わないでくださいよ」


「フフフ! メグミとリンピョンもぅ、一緒にいっぱい気持ちいいことしましょうねぇ~♪」


 よくよく考えたらぁ、ここに居る全員、同じ男の女でしたぁ。


 なんだかそれだけで親近感が湧いてぇ、血の繋がった家族よりも絆を感じてしまいまぁす!


 私は念のためぇ、“魔神殺し”のサブ職業を選びましたぁ!



○これより、第二十五ステージの”魔人の皇都”に転移します。



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