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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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355.もたらされる情報

「トゥスカ達から、コンソールに連絡が来たよ!」


「本当か!?」


 早朝、薄緑のネグリジェ姿のままコセと話していたはずのメルシュが、慌てた様子で俺達の前にやって来た!


 久し振りに戻ったら、トゥスカとノーザンが居なくてなにかあったのかと思ってたが……連絡が取れなくなってたのかよ。


「それで、二人は無事なの?」


 アヤナが尋ねる。


「うん、一回《獣人解放軍》に捕まったらしいけれど、助けてくれた人達が居て、今はその人達の魔法の家に居るみたい」


「どうして、わざわざコンソールの方に連絡して来たんだよ?」


「捕まった時に、隙を見て家の鍵を破棄したんだって」

「《獣人解放軍》が、こっちに攻め込んで来ないようにするためか」


 メルシュの言葉に、リンピョンが補足するような形に。


「とにかく、トゥスカさん達が無事で良かったです」


 タマを始め、大半が安堵しているように見える。


「つうかよ、なんでソイツらはその”獣の聖地”ってのを根城にしてるんだ?」


 獣人の数が多いらしいが、それだけなら待ち伏せなりなんなりで、レジスタンスにもやりようは幾らでもあんだろう。


 こっちには、いつでも逃げ込める魔法の家なんて便利な物があんだからよ。


「”獣の聖地”には、獣人を大幅に強化するスキルが手に入る場所があるからだろうね」


 そう言ったのは、ダンジョン・ザ・チョイスをよく知っているジュリー。


「トゥスカ達の情報では、その場所を《獣人解放軍》が占拠しちゃってるから、ソイツらに与している輩じゃないと、その強力なスキルが手に入らないってわけ。余程Lvと装備に差が無ければ、一対一でもトゥスカとノーザンは勝てないだろうね。神代文字を使えばなんとかなるかもしれないけれど、()()()()()んだよね」


「……へー」


 メルシュの言葉に、ワクワクしてきている自分が居る!


 そこに行けば、俺はもっと強くなれるって事だろう?


「三十六ステージか」


 まだ十六ステージ分もあるが、楽しみで仕方ねーぜ!!


「でも、もしかしたらその状況が一変するかもしれない」


 メルシュの声が、一段低くなる。


「……良い方に転ぶってわけじゃなさそうだな」


 メグミが話を促す。


「SSランク武具、“エンバーミング・クライシス”の使い手が現れて、解放軍メンバーを多数殺したみたい。それで、向こうはピリピリしてるって。トゥスカ達は、その杖の能力を知りたくて連絡してきたんだって」


 なるほど。解放軍一強だったパワーバランスが、崩れかけてるってわけだ。


「で、どんな武器なんだ、それは?」


 ネグリジェ姿のレリーフェが、メルシュに尋ねる。



「……分かんない」



 気まずそうなメルシュ。


「マスターか私が視認した物や、パーティーメンバー、レギオンメンバーの持ち物じゃないと詳しい情報は引き出せないから、どうしようもないんだよね」


 まったくの未知数の、強力な武器ってわけか。


「俺のSランク、“滅剣ハルマゲドン”であの威力だ。それ以上の力を秘めてると思った方が良いだろうな」


「「「いや、お前のではないだろう」」」


 ほぼ全員からの総突っ込みを受ける俺。


 まあ、コセから借りてそのままになっちまってるだけだけれどよ。もう俺のみてぇなもんだろう。


 コセがあのアルファ・ドラコニアンにトドメを刺した武器って考えると、マジでウットリしちまうし。


 あの時の俺とコセの連携、今思い出しても神懸かってたよな~。


「まあでも、名前から多少は想像出来るわよね~。クライシスって、確か世界恐慌とかって意味じゃなかったかしら?」


 サトミが面白い事を言い出す。


「で、エンバーミングってどういう意味?」


 ナオが何気なく尋ねた言葉に、知っていそうな奴等の顔が曇る。


「おいおい、世界恐慌よりもヤベー意味なのか?」

「う、ううん、そうじゃないけど……」


 カナが、言っても良いのかと逡巡しているようだ。



「エンバーミング言うのはぁ、遺体に防腐処理や修復を施したぁ、物でぇす」



 答えたのはクリス。


「なんのために、遺体にそんなことをするのですか?」


 クマムが尋ねる。


「欧米では土葬が主流なためぇ、死体が疫病の原因になる事などをぉ、防ぐ目的がありまぁす」


「そういや、俺の故郷は地中深くに埋めるのが習わしだったな」


 当時はなんでこんなにわざわざ深く掘るのか疑問だったが、ある程度土を被せたら、動物が掘り返さないように重くて大きい石を置く風習はあった。


「防腐処理された遺体の世界恐慌……? どんな能力なのか、全然想像できませんね」


 スゥーシャと同じく、俺にも全然イメージ出来ねー。


「考えられるのは、ゾンビの集団を操るとか?」


 ユリカが口を開く。


「それだけだと……イマイチ強い感じがしないね。向こうの世界でならともかく、スキルやアイテムの効果を使えばどうにでもなりそう」


 アオイの言っている事はよく分からないが、集団って聞くと、俺はスタンピードラットを思い出しちまうな。


 今思い出しても、あの頃の記憶は忌々しい。


「今のような話は、一応トゥスカ達には伝えて置いたから……あとは、遭遇しない事を祈るしかないかな」


 メルシュが話を締める。


 SSランク……遭遇するにしても、もっと後だとばかり思っていたが……俺も、もっと気を引き締めねぇとならねぇか。



●●●



「”エンバーミング・クライシス”……言葉の意味が分かると、随分不気味に思えてきちゃった」


 メルシュと連絡を取り、一応の成果をウララとカプアに伝えた。


「ありそうなのは、アンデッドの類いを大量に操る能力でしょうか。決め付けるのは危険でしょうが、一応レジスタンスメンバーに伝えて置きましょう」


 カプアが情報を流してくれるらしい。


「……トゥスカちゃん、良かったらコレを使って」


 ウララがチョイスプレートを操作して出現させたのは……変わった形の白い……ブーメラン?


「ウララ様、それは!!」


「”多目的ガンブーメラン”、Aランク。私の弟が使っていた武器よ」


「弟さんが……おられたのですか?」


 いつも飄々としているウララが、今にも泣きそうな顔を……。


「来て。二人に見せたい物があるの」


 ウララに連れられ、私達は立ち入りが禁止されていた三階を超え……四階へと足を踏み入れる。


「……これは」


 とある部屋に通されて目に入ったのは、ベッドに横たわるウララそっくりの人物。


「私の双子の弟、ラキよ。このステージに来るまで、とっても元気だった子」


「それじゃあ、あのブーメランは彼の? 貰って良かったのですか?」


「ええ……たぶん、このゲームをクリアするまで……ラキが目を覚ますことは無いでしょうから」


「へ?」


「ラキ様は、祭壇に転移直後に命を狙われ……脳天に、斧を振り下ろされてしまったのです」

「幸い一命は取り留めたけれど……あれからずっと、眠ったままなの。植物状態という奴かしら」


 このダンジョン・ザ・チョイスでは、死ねば死体は光になって消える。


 消えていないって事は、生きてはいるはずだけれど……。


「もしかして、二人の叶えたい願いって……」


 ウララがベッドに片膝を乗せ、弟の頬を撫でる。


「ラキを……弟を目覚めさせること。昔のように、笑ってくれるように」


 双子の絆が、そうさせるのでしょうか。


「これからなにが起きるか分かりませんが、お二人の力を、どうか私達に借してください……どうか」


 深々と、頭を下げるカプア。


「……いずれにせよ、例のスキルを手に入れないと、僕等は役不足でしょう」


 ノーザンの言葉は、冷静に判断している証拠。


 それ程までに、この”獣の聖地”にある聖域で手に入れられる獣人専用のスキル、“獣化”は……桁外れなのだから。


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