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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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353.腐葉土村

「なんか……この地面、凄く変な感じ」


 スヴェトラーナが踏んでいるのは、腐葉土村の地面。


 踏むとフニュンと沈んでいく感覚があるため、気持ちは分かる。


 実際、足が二、三センチくらい沈むし。


「あった」


 ユイと合流するべく残ったメルシュ達以外のメンバーで、腐葉土村を回っている私達。


 ……二十四ステージの隠れNPC、ヤクザを手に入れるためのアイテムは手に入らなかった。


 おそらく、既に誰かが契約したのだろう。


「いらっしゃい」


 何気なさを装いながら店の中へと入り、目当ての物を探す。



○以下の中から購入できます。


●TP泥団子   1000G

●MP泥団子   1000G

●OP泥団子   1000G

●治癒の泥パック 1300G



「……なんで泥が売られてんのよ」


 スヴェトラーナが、引き攣った顔で尋ねてくる。


「泥には全部解毒効果があって、TPの泥団子なら、総TPの四分の一を即座に回復できる……食べれば」


 オリジナルの時は、実際に食べるわけじゃないから全然気にならなかったけれど……食べるのか。


「いざという時のために……試しておこうか」

「ほ、本気で言ってんの、ジュリー?」

「世界には土食文化が各所にあったって言うし……だ、大丈夫のはず。アメリカのセレブだって、デトックス効果を期待して食べてるって聞くし」


 取り敢えず一つだけ購入し――食べる!


「……ど、どうなのよ?」

「…………微妙」


 マズくはないけれど、ジャリジャリして……うん、不快。


 オリジナルでは序盤の便利アイテムだったけれど、買うのは止めておこう。


「はい、バニラ」

「アウ!」


 モモカが泥団子を購入し、それをバニラがベロベロに舐め始めた!?


「アウ~ン♪」


挿絵(By みてみん)


「「お、美味しそうに舐めとる」」


 動物が鉄分やミネラルを補給するために、土や線路を舐めるのは知っていたけれど。


「うん、美味しいー!」


 モモカまで、丸々一個食べて満面の笑みを!?


「土か……一回、試してみようかな」

「じゃあ、私も」

「良いですね。私の分もお願いします」

「ほ、本当に食べるつもりなのですか?」


 スヴェトラーナを始め、山猫獣人のサンヤ、エルフのルフィルまでチャレンジするつもりらしい……ヒビキは、そんな三人に引いている。


「うッ!!」

「うーん、ま、不味くはないけれど……」


 スヴェトラーナとサンヤは、ダメだったようだ。


「うん、懐かしい味です。良い土を使用されているようですね」


 ルフィルには好評……エルフ族には土食文化があるのかな?


「これは……イケるわ」


 いつの間にか、サトミさんまで泥団子を食べている!


「私のレパートリーがまた増えそうよ、リンピョンちゃん!」


「さ、さすがに冗談ですよね、サトミ様……」


「クッキーにしてみるのもありかしら? でも、まずはクリーミーなスープに入れてみる?」


 今夜は、土料理だらけになってしまいそうだ。



○泥団子を百個以上購入しましたので、“泥職人”のサブ職業を入手しました。




●●●



「じゃあ、アテル達の大半も次のステージに進んじまってるのか」


 カオリ、アデール、バッファ、ビクビクエルフに見覚えの無い女を入れた五人と、腐敗の王都内で情報交換を行っていた。


「まさかそっちも、あのアップデートの時に同じように襲われてたなんてね」


 カオリの言葉からして、《日高見のケンシ》の方でも襲撃があったらしい。


「こちらは靄に落ちた者は居ないが、靄に触れてしまった事で後遺症に悩んでいる者が居る。そちらは問題ないのか?」


 アデールが尋ねてくる。


 さすがに、人数はぼかしたか。


「後遺症ね。そういう話は聞いてないけれどな。どういう症状があったんだ?」


「触れた部分が痛んだり、急に熱っぽくなったり、目眩がしたりですって」

「なんか、スキルそのものが本来と違う発動の仕方をしたって話もあったな」

「症状そのものは、日に日に良くなってきているらしい」


 少なくともカオリ、バッファ、アデールの四人はなんとも無いってわけか。


「で、なんでそこのエルフは顔を隠してるんだ?」


 丘を降り始めてすぐにフードを目深に被って、耳まで見えないように。


「結成されたエルフのレギオンに、自分の事を知られたくないんだとよ」

「バッファさん……ゴニョゴニョゴニョ」


 耳元で、囁くような声で喋っているエルフ。


「あいよ。つうわけで、コイツの事は他言無用な」


 バッファに滅茶苦茶懐いてるんだな……ちょっとだけ、キョドってる時のカナみたいに見えるぜ。


「というわけで、明日から一緒に攻略を始めたいのだけれど、構わないかしら? ザッカル」


 ユイの姉、カオリに尋ねられる。


「まあ、こっちとしても助かるぜ。で、ソイツらの名前くらい教えてくれよ」


「私の名前は……」

「コイツのは、この街では訊かないでやってくれ」


 バッファの奴、随分面倒見が良いじゃねぇか。


「しゃーねーな。で、そっちのは?」


 金髪と茶髪が入り乱れたショートと、小麦色の肌を持つ女。


 金の鎧の下に、俺のと似たピッチリとした黒い物を着ている。


 得物は……腰の棒か?


「どうも、キヨミって言うっす」


挿絵(By みてみん)


 やたらニタニタしていて、妙にかんに障る女だ。左耳に複数のピアスを付けてるしよ。


「うちの新入りよ」


 カオリが紹介する。


「マリサさんにまた奴隷に堕とされたときはどうしようかと思ったっすけど、色々あって《日高見のケンシ》に入れて貰えることになったっす!」


 ……コイツ、立ち振る舞いに隙がねぇ。


 体幹も足裁きも、洗練された物を感じるぜ。


 どうやらこの女も、油断ならねぇ相手らしい。


「もしかして、この前の突発クエストに?」


「マリサさんを襲ったら、返り討ちに遭っちまいまして」


 マリサ……確か裏技で、数秒間だけ十八文字引き出せるっていう女。


 第十九ステージではパーティーを率いていたっていう、幹部メンバーと思われる女だったか。


「まあ、宜しく頼むぜ」

「いずれ、殺し合う仲っすけれどね」


 握手をすると滅茶苦茶力を込めてきやがったから、強く握り返してやった。


「イツツツ!! ……さすが獣人っすね~」


 腰の棒の位置からして、コイツの利き腕は右。


 にも関わらず、その右手は武器を振るう人間のそれとは思えない程度の硬さ……腰の棒の方はフェイクか、メイン武器じゃねぇな。


 やれやれ、ライバルレギオンに、またヤバそうなのが加わったもんだぜ。


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