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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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347.大樹村

「……見れば見るほど凄いな、ここは」


 エリューナさんが、目の前の光景……大樹村に圧倒されている。


 俺達はボス戦終了後、いつもの祭壇に転移したわけだけど……その祭壇があったのは、バカでかい大樹の枝の先だった。


 その祭壇を降りてからは、上部が平らに掘られた塀付きの巨枝を歩き、幹を目指している。


 この道だけでも、車が三台は並んで通れそうな程広い。


「暗くなって来たし、早く泊まれる所を見付けないと」


 マリナの言うとおり、暗くなる前に安全を確保して置きたいところ。


「……凄い」


 幹まで辿り着き、穴を潜ると……そこには木をくり抜いて作られたと思われる広大な空間が!


挿絵(By みてみん)


「凄く広いし、凄く明るい……」

「良い雰囲気の場所だな。嫌いじゃ無い」


 二人とも、完全に魅せられてるな。


 まあ、俺も気に入ったけれど。


「この灯り、木の内部そのものが淡く光っているのか」


「プレーヤーらしき人間が、チラホラ見えるな」


 エルフが多い気もする。


「初めて村に来た人達だね」


 入口近くのお爺さんが話し掛けて来た。


「ここは大樹村。空を行けぬ者には不便な事も多いが、とても良いところだよ」


「そうみたいですね」


 この人はNPCみたいだな。


「お近づきの印に、どうぞ」



○“調合師”のサブ職業を手に入れました。



「全員が手に入れられる仕様なのか」


 これがあれば、自分で薬などのアイテムを調合出来るようになるんだっけ。薬や素材の効能も、ある程度解るようになるらしい。


「宿泊場なら、上の階層だよ」


「上?」


 ……端の壁が、上への螺線階段になっているのか。


 天井の一角に穴が空いており、そこに通じている。


「飛べない場合、とんでもなく時間が掛かりそうだな」


「確かに、飛べないとここで暮らすのは実質不可能か」


「さっそく行こうよ。村の探索なら、明日でも出来るんだし」


「私もそうしたい」


 二人とも、相当疲れているらしい。


「それじゃ行きましょうか――夜鷹」


 指輪で黒い鷹を呼び出し、腕に引っ付かせて上まで運んで貰おう。


「マリナ」


 彼女に手を伸ばし、手を取って貰う。


 さすがに、エリューナさんは定員オーバーか。


「……もう一踏ん張りか」

「すいません」


 よく考えたらマリナは魔法で浮けるんだから、空を走るエリューナさんの方が負担が大きかったかも……すんません。


 そんなこんなで、一直線に上の階層を目指し、辿り着く。


「……こっちは、そこまで人が多くないな。ほとんどNPCみたいだ」


「でも、凄く大っきい木造の建物……まるで木彫りみたい」

「だな」


 コンクリートのホテルを、大樹の中を彫って再現したかのようだ。


「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、上がるのは……重力が、ハァー……キツい」


 滅茶苦茶息が上がっているエリューナさん。


 ここまでの高さ、数十メートルはあっただろうからな。


「明日は、一日ゆっくり休みましょうね」

「もう一踏ん張りですよ、エリューナさん!」


「お、お前ら……自分達だけ楽して」


 やっぱり、エリューナさんを運んであげた方が良かったかも。


「ホテルは複数あるみたいですね。取り敢えず、一番近いのに入ってみましょうか」


「おう……」


 ちょっと面白くなさそうなエリューナさん。


「いらっしゃいませ、お客様」


 従業員らしきNPCが挨拶してくれる。


「あれが受付か」


 受け付けのカウンターどころか、内装のほぼ全てが、このホテルという木彫りの一部らしい。


 こんなのが実際にあったら、天才と言うより狂人の仕事だな。


「いらっしゃいませ。当ホテルの宿泊費は、一部屋120000(十二万)Gとなります」


「十二……万」

「高過ぎだろう……」


 確かに、高級感あるホテルではあるけれど。


「あれ、一部屋ってことは……」

「当ホテルは他のホテルよりも高い分、一部屋に何人お泊まり頂いても値段は変わりません。ちなみに、定員は六人となっております」


「一人だろうが三人だろうが、十二万って事か。親切なのかなんなのか」

「なら、他の所を探す? ここは高いみたいだし」

「一番安いホテルで、お一人様80000(八万)Gとなります」


「三人で240000(二十四万)……か」


 倍の値段になっちまう。


「この階層に人が少ない理由が分かった」

「確かに」

「……な、なんだ?」


 エリューナさんを見詰める俺達。


「……ハァー、分割で四万だぞ?」

「いや、奢りますよ」

「それじゃ意味ないだろう。一日ゆっくりしたいと言ったのは私だし……てオイ!」


 話している間に払ってしまう。


「じゃあ、明日の分はエリューナさんって事で」


 もう一泊する予定だし。


「て言うか、外国人ってお金とかにルーズなイメージがあるんだけれど?」

「一緒くたにするなよ、マリナ。真面目と言われる日本人にだって、滅茶苦茶テキトーな奴も多いだろう」


「「確かに」」


 俺の家族も同年代の奴等も、論理的に喋っているようで支離滅裂な奴等ばかりだった。


 常識って言葉が、心を見なくて良い理由になんてならないのに。


「まあ、世界的に日本の方が生真面目な人間が多いのは否定しないが……だから、良いように騙されてることにも気付かずに」


 エリューナさんから、今黒い感情が……。


「フー、さっさと行くぞ。部屋はどこだ?」



●●●



「……気持ちいい」


 個室の木の風呂とサウナを堪能したのち、ベタつきの無い肌でベッドに横になる私。


「……最高だな」


 こんなに充足感を感じるのは、いったいいつぶりだろうか。


「まるで……前に戻ったみたいだ」


 ツェツァやサンヤ達と、ゲーム攻略を始めたばかりの頃に。


「……殺人鬼のくせに、なに人並みの幸せ感じてるんだか」


 二十ステージに辿り着くまでに、仲間が何人も死んだ……気を許していた友人、ケイは……私を庇って……。


 いつだって最大の脅威だったのは……人間。


 このクソみたいなゲームに躍らされて、欲望に取り憑かれた主体性のない人形共。


 だから、生き残った私達三人は……人間を片っ端から殺してやることにしたんだ。


 性別も、年齢も、人格も、人種も関係なく……全員ッ!!


「……どうかしてる」


 これじゃあ、私の祖国を嵌めて、ツェツァの祖国を食い物にしてきた奴等と……同じじゃないか。


「私、今あの魔女の下着を着けてるんだよ♡? ん……ぁん♡♡」


「……アイツら」


 当たり前のように二人で浴室に入って行ったと思えば……やっぱりか。


「男……か」


 父親(アチェーツ)以外で、こんなに一緒に異性と行動を共にしているのは初めてか。


「不思議と、嫌じゃないんだよな」


 コセ達と接していることが。


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