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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第10章 混迷の争奪

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345.狸獣人のカプア

「――おりゃリャリャリャリャリャリャ!!」

「あの……」


 魔法使いであるはずのナオさんが、杖を捨てて青と赤の鮮やかなガントレットと“ドラゴンナックルバスター”で、ディザストスビッグフットと正面からの殴り合いを始めてしまう。


 どうして物理が有効な相手を魔法使いであるナオさんが担当して、魔法が有効なミストオーブを戦士である私が対処する流れに?


「仕方ありませんね」


 霧による触手のような攻撃を転がるように避け、覚悟を決める。


「良いですよ、来てください」


 ”一輪の華花への誓い”に三文字刻み、霧の触手を切り払っていく!


「“天使法術”――エンジェルランサー!!」


 複数の光の槍を操り、本体の霧を大きく散らす!


 核を持つ敵……船の上で最後に戦った、巨大スライムみたいなモンスターを思い出しますね。


「行きます」


 ザッカルさんが二十ステージの突発クエストの最後に殺した人間の名前は……私にとっての因縁の相手と同じ名前だった。


 お礼代わりにと、私に迫ってきた恥知らず。


 只の同名という線もあり得るけれど、あのような志も無い薄っぺらい人間達が、この先に進んでいるとは思えない。


 だから――今の私は、とても清々しい気分なんです!


「ハァッ!!」


 霧を払いながら、接近していく!


 人の死を望むなんて、不謹慎だと思って居ました。


 でも、コセさんと一つになれたことで、そんなお為ごかしで生きていたってなんの意味も無いんだって――心で気付けたから!!


「”尖衝武装”」


 誓いの剣に、万物を貫くための赤い光を纏わせる!


「“瞬足”――“跳弾”!」


 背後に回ったのち、一気に距離を詰める!



「――ハイパワープリック!!」



 霧の守りを突破し、核となっている部分に切っ先を届かせ――霧に邪魔されて、貫通出来ずに半ばで止められてしまっている!?


 私はもう――――こんな所で止まらない!



 ――自分の意思で進むって、誓いを立てたのだから!!



「――ハァァァァァァァァァッッッ!!!」


 “一輪の華花への誓い”に六文字刻まれ――瞬きの輝きののちに、一回り大きい“大輪の花華への誓い”へ!!


挿絵(By みてみん)


「……ハアハア、ハアハア」


 意識が持っていかれそうな感覚と引き換えに発揮した力で、ミストオーブの中枢を完全に貫き……砕く事が出来ました。


「や、やれました」


 私も、ナオさん達みたいに限界を超えられた。


「――“深海重圧”!!」


 文字の力を流しこんだ水の掌底を左手で見舞い、ディザストスビッグフットにトドメを刺したナオさん。


挿絵(By みてみん)


 そのガントレットには、神代文字が九文字。


「ハアハア……追っ掛け甲斐がありますね」


 アイドルとしての高見を目指すより、ずっとやり甲斐を感じている私がいます。



○“ミストオーブのスキルカード”を手に入れました。


○“ディザストスビッグフットのスキルカード”を手に入れました。


○”災禍の霧の宝珠”を手に入れました。




●●●



「ガルルルガァァァァッッ!!」


 霧の中から現れた黒衣の人型モンスター、“ウィクショナリー”とバニラが激しい剣戟を繰り広げる。


 ウィクショナリーの得物は、“処刑人のカタール”Aランク。


 アオイが使う“ドラゴンジャマダハル”と同種の、紫の刃持つ黒い剣。


『コォォ』


 “処刑人のカタール”の刃が発光し、二メートル程の長さへ。


『コォォォ!!』


「――ガルルルルルルルッッ!!」


 四つん這い状態からの凄まじい瞬発力により、“愚劣な無我の境剣”が“処刑人のカタール”を力尽くで押し込み――ウィクショナリーの頭から肋骨の当たりまで切り裂いた!


「……凄い」


 バニラのスキルや装備の構成上、当然かもしれないけれど……Bランクの中では下位とはいえ、上位モンスターの身体能力を正面から凌駕してしまうなんて。


「アオーーーーーーン!!」


 勝利の遠吠えを上げる赤髪の少女、バニラ。


 ……まるで狼だ。


 バニラが言葉を発せるなら、“半ベルセルク”とカムイ系のサブ職業を使わせてあげたかった。


「ジュリー、霧が!」


 六度目の戦闘が終わり、周りの霧が晴れていく。


「もう、モンスターは出ないね」


 枯れていた木の葉が地面を覆っている中、安全エリアがこの辺り一帯に発生。


 その向こう側には黒い巨石の壁と、真っ暗な洞窟の入り口。


「今日はここまでだよ、モモカ、バニラ」


 日が傾き始めた頃、私達は“神秘の館”に帰還した。



○“処刑人のカタール”を手に入れました。

○“処刑人”のサブ職業を手に入れました。




●●●



「では、そこで大人しくしていてください」

「さっさと全部喋っちゃえば良いのに。フン!」


 私とノーザンを連行した獣人の男女が、牢屋の前から去って行く。


 私達が連れて来られたのは、獣の聖域内にある石の城の一角。


「……心配、掛けてしまいますね、お姉様」


 ノーザンは……思ったよりは落ち着いている。


「隙を見て魔法の家の鍵は破棄したけれど……これで、仲間と連絡を取る手段は無くなってしまった」


 向こうに攻め込ませるわけにはいかなかったし、たとえ連絡が出来ても……不安にさせてしまうだけだったでしょう。


 今は、出来る限りご主人様に余計な負担を掛けたくない。


「彼等は、今の所は私達に危害を加えるつもりはないはず。同族を異様に特別視しているみたいだったし」


「とはいえ、黙秘を続けていたらどうなるか」


 周りは格上ばかり……ご主人様のおかげで私達のLvは上がっているけれど、二人だけじゃどうにもならない。


「ノーザン、敵の数はどれくらいか分かる?」


「最低でも百人以上。ここに居る獣人の大半は戦い慣れしているでしょうから、ほぼ全員が襲ってくるかと」


「ぅぅ……ぅぅぅぅ……」


 隣の牢から、女の苦しむような呻き声?


「……――誰か来る!」

「シ、静かに」


 音もなく現れたのは、黒フードを被った獣人。


 牢の前の天井は崩れており、そこから入ってきた様子。


「……誰?」


「タヌキ獣人のカプアと言えば、貴女方でも分かるのでは?」


挿絵(By みてみん)


 フードの中から、濃い茶髪の美女の顔が顕わに。


「……反攻勢力の幹部という噂は」


 レギオン、《獣人解放軍》に敵対している寄せ集めの勢力。


「幹部というのは誤解なのですが……この数日、貴女方の同行を窺っていました。今なら信用できると判断したのです」


 そう言いながら、鍵を開けてくれるカプア。


「一先ずは安全な場所へ」

「あの、隣の人は助けないんですか?」


 ノーザンが尋ねる。


「彼女は情緒が不安定で……貴女方と同じように、突然牢屋の中に現れたそうです」


「突然?」


 私達以外にも、そんな人間が。


「解放軍の人間達は、獣人以外は問答無用で殺します。なにより、戦えない者を助けている余裕はこちらにはありません」


「分かりました」


「では、さっそく行きましょう」


 鍵を使い、空間を魔法の家に繋げるカプア。


「……選択肢は無いか」


 カプアの招きに従い、私達は彼女の敷地内に足を踏み入れる。


「ぅぅぅ……jf4pん4」


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