表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/956

34.神の定義

「「いただきます!」」


 盗賊のアジト内で、二人が夕食を食べている。


「美味しい!」


 トゥスカが用意したご飯を、バクバク食べる……メシュ。


 不便だったので、つい名前を覚えてしまった。


「NPCなのに、ご飯食べるんだな」


 トゥスカが以前、NPCは飯も食わなければ眠りもしないと言っていたはずだけれど。


 メシュは、本当に特殊なNPCなのかもしれない。


 漠然とNPCと呼んでいたけれど、メシュがデータのような存在なら、俺やトゥスカはなんなのだろう?


 実はトゥスカもNPCで、俺は死んでも元の世界に戻るだけ……だったりするのだろうか?


 そもそも、俺が本物の巨勢(こせ) 雄大(ゆうだい)だという保証も無い。


 ここが本当は仮想空間で、俺は本当はただのデータでしかなかったとしたら?



 ――世界の全てが、とても空虚な物に変わっていってしまう!!


 

 大きななにかに――――呑み込まれそうになる!!!



「お兄ちゃんは、一緒にご飯食べないの?」

「…………二人が……食べ終わったらな」


 ……メシュの言葉に、意識が引き戻されていく。


 俺は今、見張り役をしていたんだった。


 二十一時を過ぎても安全エリアが見付からなかったため、アジト内にあった狭い部屋で一晩を過ごす事にしたのだ。


 ここは一番奥の部屋で、通じている通路も狭い。


 迷路になっている盗賊のアジト内で遭遇した敵は、人間のような見た目のバンディットだけ。


 この場所なら、俺とトゥスカのどちらかだけでも敵に対処出来る。


「ご主人様、どちらが先に眠りますか?」

「トゥスカ達から寝てくれ」


 眠くならないよう、いつもよりも食事を軽めに済ませた。


「一緒に寝よ、メシュちゃん」


 トゥスカはNPCが嫌いだったはずなのに、メシュのことは気に入ったらしい。


 扉の無い部屋で入り口付近に座りながら、耳に意識を集中して目を瞑る。


 部屋の奥で、トゥスカとメシュが同じ毛布の中で眠りについた。



●●●



 誰がなんのために、トライアングルシステムに介入したのかは分からない。


 これまでとは違うパターン。


 だが、今回の接触対象は面白い。


 先程、かの少年は()()()()()()()()


 だが、そのまま自己を失っては元も子も無い。


 この世界は、考えようによっては彼を育てるのに適しているかもしれない。


 観測者達に気取られぬよう、見定めねばならないが。


 だけれど、ここ数年で彼が一番可能性があるのは確か。



●●●


 

 四時間くらい経ったか?


 部屋の奥から物音。


「お兄ちゃん」


 毛布の中から、メシュが出てきた。

 座っていた俺の前まで、テトテト歩いてくる。


「眠れないのか?」

「寝たけど……起きちゃった」

「そうか」


 ……この子から感じる違和感、NPCだからってだけじゃないな。


「なにか用か?」

「……お兄ちゃんは、神様の存在を信じる?」


 妙な質問をしてきたな。


「神の定義による」

「……どんな定義?」

「神は……人に過度な幸福を与えたりしない。主に見守っているだけだ。そして……一度として神の存在を疑わない者を、神は愛さない。つまり、祈れば救ってくれるなどという都合の良い神は存在しない」


 こんな子供に、俺はなにを言っているんだ?


「他には?」

「神は……成長しようとしない人間を愛さない。それは知識や身体能力の事ではなく、万物の本質を見抜く……」


 家族どころか、誰にも言えなかった事を口にしている。


 それも、こんな子供に。


「お兄ちゃんは、人間が嫌いなの?」

「……嫌いだよ」


 異性とかそんなもの全部関係なく、俺が唯一、本当に愛しているのは……トゥスカだけだ。


「もういいだろ、この話は」


 神について、俺なりの見解を述べたに過ぎないんだけれど……口にしてはならない事を口にした。そんな気がする。


「へ?」


 メシュの両手が俺の頬に触れ、おでこをくっ付けてきた。


「私は、お兄ちゃんを尊敬するよ」


 そういって、メシュはトゥスカの方へ戻っていった。


「……」



◇◇◇



『始まりの村の激闘も、好評ですねー!』


 特に、宿の中の()()()大盛り上がり!


 コセ様には、是非ハーレムを作ってもらいたい所です。


 まあ、さすがに本番シーンはカットしましたけれど!


『やり過ぎかとも思いましたが、ガルガンチュアに()()()()()()()()()()()()!』


 ”パラサイトコア”に、女の破損データを刻んだ特別性。


 おかげで、良い味を出してくれた!!


 ……九十パーセント、クエストは失敗すると思っていたんですけれどね~。


 アレには、有象無象を振るいに掛ける意味合いもあった。


『それにしてもオルフェ、自分の担当ステージで不具合を発生させるとは』


 コセ様が盗賊のアジトに入った辺りから、映像も音声も入ってこない。


『そう言えば、あのジュリーとかいう小娘はオルフェが参加させた女でしたね』


 私が担当じゃないから、彼女を直接視る事は出来ない。


 ですが、突発クエストの時の小娘の言動はあまりにも不可解。


 まるで、以前にもパラサイトコアモンスターと戦った事があるかのような口振り。


『オルフェ……まさか本当に、教義に背くつもりではありませんよね~』


 まあ良いでしょう。もう少し様子を見させて貰いましょうか。


 告発なんて面倒ですしね~。



●●●




○この子を奴隷商に売り払って100000(十万)Gを手に入れますか?



 私はNOを選択。



○この子を仲間に加えますか?



 私は、もう一度NOを選択する。



○この子を見捨てますか?



「へ?」


 おかしい! オルフェの情報では、三つ目の選択で○この子を攫われた場所まで送り届けてあげますか? と出るはず!


「……くっ!」


 まさか、既にコセ達が!


 私はもう一度NOを選択。



○この子を奴隷商に売り払って100000Gを手に入れますか?



「ループした!?」


 この子は本来、これと言った役目のないただのモブキャラ。


「ジュリー?」

「ジュリー様、顔色が悪いですよ?」


 ユリカとタマが心配そうに私を見ている。


「……大丈夫よ」


 あの選択を選べるのは、最初の一人だけ。


 間違いなく、コセ達に先を越された!!


 ……あの二人の事だ。おそらく他のプレーヤーとは接触しない方を選んだだろう。


「だとすると、あの二人に会うにはボス部屋前で待ち伏せするしかない」


 私はYESを選択し、メシュを奴隷に売り払った。


「酷い! 酷いよ!」


 空間に穴が開き、下卑た男が少女に手を伸ばす。


「まいど」

「いやあああああああああ!! 助けて! 助けてよーーっ!!」


 メシュは穴の中に引っ張られて消えた。


「ちょ、ジュリー!」

「彼女はNPCよ」


 騒ぎ出すユリカを諫める。


「だからって……」


 仲間に加えるを選択した場合、盗賊の頭領戦で裏切られるイベントが起きる。


 見捨てるの場合、頭領戦の時に乱入して来るイベントが。


 つまり最初の、奴隷商に売り払うのが損の無い唯一の選択なのだ。


 あくまで、オルフェに聞いた限りの話しだけれど。


 奴等に見られているかもしれない現状では、この事を二人に伝えるわけにはいかない。


「急いで攻略を進めるよ」


 こうなったら、コセ達の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その後は……。


2章からは、神秘性がテーマとして加わっています。


YouTuberの動画の影響で、作品に取り入れることにしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ