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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第9章 新たなる門出

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337.妖精の家並木

「なんというか……異様ね、この光景」


 皆で祭壇を降りた先に広がっていたのは、左右直線上に並んだ戸建ての道。


 しかも、たぶん全て同じデザイン……家並木ってこういう事か。


「アメリカではぁ、こんな感じのぉ、結構ありますよぉ。ここまで一件一件同じはぁ珍しですけどぉ」


 クリスが教えてくれる。


「それで、ここでやるべき事があるならさっさとやっちゃいましょうよ」


 スヴェトラーナが急かす。


「それなんだけれど……スヴェトラーナ達は、隠れNPCが欲しかったりする?」

「は?」


 メルシュの言葉に、難色を示すスヴェトラーナ。


「後々の事を考えれば、悪くはないかと」

「私も、ルフィルと同意見かな~」


 ルフィルとサンヤは同じ意見と。


「私が言うのも難だけれど、隠れNPCは契約者を決して裏切らない。ここの隠れNPCの特性を考えると、スヴェトラーナ達にちょうど良いと思うし」

「そうだな。隠れNPCはいざというとき睡眠を取らなくても良いし、スタミナも無限らしい。悪くないんじゃないか?」


 私からも提案する。


 既にユイ達とパーティーを組まなくなってしまっているため、彼女達が隠れNPCと契約する分には問題ない。


 幸い、契約条件の半分は満たせているし。


「ジュリー、アンタまでこっちの戦力アップになるような事を……どういうつもり?」

「いずれ、正式に手を組みたいと思っているからね」


 腕をボロボロにされた恨みはあるけれど、昨夜の文字しか効かない相手と遭遇したのもあって、彼女達という戦力は惜しいのだ。


 スヴェトラーナ達のリーダーがコセと行動していることに、どこか運命のような物を感じているし。


「要らないなら、こっちで隠れNPC固有のスキルを手に入れるだけだけれど?」


「……ソイツの能力を教えなさい」


 やっぱり、少なからず私達の戦力が上げるのを警戒しているみたいだね。



●●●



「……なに、ここ」


 白い綺麗な同じ家々が並ぶ中、他のどの家よりも小さくて薄汚い木造の家に案内された私達。


「じゃあ、スヴェトラーナ達はここに一晩泊まって。それと、家のテーブルに“上質なシルク”を一つ以上置いた状態で部屋を散らかしておいてね」


 結局、隠れNPCと契約することにした私だけれど……まさか、こんな所に泊まることになるなんて。


「……冗談よね」


「早く参りましょう」


 ヒビキが、さっさとボロ屋の前へと歩いていく。


「じゃあ、夕食時に迎えに来るから」


 《龍意のケンシ》メンバーが、さっさと居なくなる。


「アイツら……」


「ま、諦めなよ」

「そうですね。一晩だけですし」


 サンヤもルフィルも、なんでそんなに良い子ちゃんなのよ!


「来てください、お三方」


 玄関扉前にいるヒビキに呼ばれ、近付く。



○宿泊費、一人、一泊10000Gになります。


○宿泊なさいますか?


●40000G払う ●50000G払う ●この場を去る



 地味に高い。


「ていうか……なんで四人なのに、宿泊費の選択肢が二つもあんのよ!」


 まあ……理由はさっき聞いたんだけれど。


「さっさと中に入るわよ」


 50000Gを払うと、玄関扉が開く。


「……思ったほど悪くないわね」


 中は、外観よりも遥かに綺麗だった。


 住み心地の良さそうな……不思議なぬくもりが漂っているよう。


「特に個室などは無いようですね。一通りの設備はあるようですが」


「“森の戸建て”以外の場所に泊まるのは、滅茶苦茶久し振りじゃん。ちょっと楽しみだなー」


 エリューナが契約している、私達の家。


「ヒビキは、前来たときはどうしたの?」

「一度だけ、こことは別の家に泊まりました。魔法の家の方が安全なため、私は反対したのですが」


 周りに押し切られざる終えなかったわけだ。


「では、言われた通りに家中を荒らしておきますか。気は進みませんが」

「片付けろって言われたことはあるけれど、散らかせって言われたのは初めてだな~。なんか新鮮」


 サンヤは楽しそうね。


「さて、いったいどんな隠れNPCが手に入るのやら」


 可愛くなかったら承知しないわよ!



●●●



「テント、張り終わったぞ」


 エリューナさんが、火の前でご飯を作っているマリナの前にやって来る。


「お疲れ様です」

「さすがに、コセの方が早かったか」


「それはまあ……」


 俺のは小型で、二人のは大型だからな。


 当然と言えば当然だけれど、今日は初めて男女別で寝泊まりすることになる。


 マリナと再会したあの山では、異形の女が現れるのを警戒していたからな。


「明日は、あの山に挑むことになるのか」


 俺達が今居るのは、荒野と山の間にある安全エリア。


 既に日は傾き始め、直に辺りは暗くなるだろう。


 今は、夕から夜に移り変わっていく逢魔が時。


「エリューナさん、コレを」

「コレは?」

「“警鐘のスキルカード”です」


 ゴールヌィの隠れNPCから、契約しない代わりに受け取ったスキルカード。


「良いのか?」

「エリューナさんの方が視野が広いですから」


 この面子じゃなくても、俺は前に出て戦うタイプだし。


「マリナにはコレを。“山の守りてのスキルカード”だ」


 同じく、ゴールヌィの固有スキルを渡す。


「これって、どういうスキルなの?」

「自分を含め、山にいるレギオンやパーティーメンバーの力を強化してくれるらしい。TPとかの回復力アップや、ダメージの軽減もしてくれるってさ」


 俺が使おうかとも思ったけれど、使用可能なスキルが三十だけのため少々厳しい。


「あ、ありがとう」


 そんなに嬉しそうにされると、気恥ずかしくなってくるな。


「イチャイチャしやがって」


「「してません! ……ぁ」」


「ハァー、さっさと食事にしよう。食べたら、私はすぐに休ませて貰うからな」


「ああ……ハイ」


 一応、交代で見張りは立てることになっている。


 俺は、まだ暫く眠れない……あの昨夜の襲撃のせいで、ろくに眠れていないのに。


 途中で起こされる羽目になった二人に比べれば、大分マシかもしれないけれど。



            ★



「タマは大丈夫なのか?」

「うん。今日一日様子を見ていたけれど、問題ないみたいだよ、マスター」


 真夜中、魔法の鍵を使ってメルシュと情報交換を行っていた。


 二人は、テントの中で眠っている。


「今朝連絡が取れなかったから、皆が心配してたよ? 特にトゥスカがさ」

「状況的に余裕が無くてさ。一応、安全エリアに差し掛かる度に鍵を使って呼んではみたんだけれど」

「昼間は、私達も全力で攻略を進めてるからねー」


 頑張って俺達を追ってきてくれているらしい。


「エリューナさんの仲間は?」

「まあ、それなりに上手くはやれてるよ。まだまだ壁は分厚いけれど」

「そっか」


 エリューナさんの仲間な上手く引き込みたい所だけれど……まあ、なるようにしかならないか。


「そのエリューナっていうの、気に入ったの?」

「……そういう訊き方をするんじゃない」


 メルシュは、この手の話ではまったく信用できない。


「そう言えば、トゥスカ達の方はどうなんだ? ほとんどなにも聞いていないんだけれど?」


「獣人のレギオンが幅を利かせてて、獣人には友好的らしいんだけれど、他種族にはかなり厳しい集団みたい。良くも悪くも、“獣の聖地”を取り仕切っているらしいよ。だから、ノーザンと二人で色々情報を集めてくれてる」

「取り敢えず、安全ならそれで良いんだけれど……」


 出来れば、魔法の家の領域にずっと居て欲しいくらいだけれど、滞在ペナルティーのせいでそうもいかないらしい。


 その後、この先の攻略情報をメルシュから貰う。


「それじゃお休み、マスター」

「お休み、メルシュ」


 珍しく投げキッスをしてきた、俺のNPC妻。


 恥ずかしかったのか、すぐに去って行くメルシュ。


 俺も、鍵をチョイスプレートに戻す。


「意外と、寂しいって思ってくれてるのかな」


「フーン」


 背後に、マリナがジト目で突っ立っていた!?


「も、もう交代の時間だったっけ?」


「……早く目が覚めちゃって」


 俺が座る丸太の上に腰掛けるマリナ。


「エリューナさんに、手を出すつもりなの?」

「いやいやいや」


 人を節操無しみたいに言うなよ……否定できないけれど。


「……ねぇ、もしこの世界に私も残るって言ったら……私も……受け入れてくれる?」


 マリナの目は……とても真剣だった。


「……俺で良いのか?」


「まあ……ちょっと面白くはないけれど……アンタ以外の誰にも……恋なんて出来なかったし」


 マリナが身体を密着させて来て……頭を俺の肩に乗せる。


「この二日で、一緒に居られるだけでも幸せだなって思えたけれど……もう、それだけじゃ満足出来ないよ」


「……素直に嬉しいよ」


 俺を、一番長く好きで居てくれた幼馴染み。


「今日……冷えるね」

「うん」

「ねえ……暖めてよ」

「……うん」


 彼女の肩に腕を回して……唇を重ねた。


おまけ

挿絵(By みてみん)

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