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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第9章 新たなる門出

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334.荒廃の大地を駆ける軍馬


○戦士.Lv52になりました。オールセット機能がプラス1されます。



「昨日の賊との戦い。アイテムは遺言機能で手に入らなかったけれど、経験値は入ってたのか」


 オールセット機能は地味に助かるな。


 そう言えば、まだLv46の時の選択をしていなかったな。



○戦士.Lv46になりました。以下から選択した方を手に入れられます。


★指輪+2の腕輪 ★魔法使い専用装備の腕輪



 特にどちらの方が良いというのが無かったため、ずっと保留にしていた。


「魔法使いだと、“鎧装備の腕輪”か“サブ武器+2の腕輪”だったっけ」


 戦士の場合は魔法使いに、魔法使いの場合は戦士に限定的に近付けるための選択。


 戦闘スタイルは千差万別だから、人によっては有り難い選択なんだろうけれど。


「トゥスカは“指輪+2の腕輪”を選んで、メルシュに渡したって言ってたな」


「……暑い」


 逃げるように村を出た俺達の頭上で、エリューナさんが弱音を吐く。


「あの……さすがに馬に乗ってくれません? 陽射しがキツいでしょう?」


 大きな馬に乗っている俺とマリナは、そんなに暑くない。


 遮る物が無い陽射しと地面からの照り返しにより、地表は特にキツいらしいけれど。


 俺とマリナは、橋の砦町で手に入れた“遮光のマント”を頭から被っている。


 光の単一属性攻撃に対して、防御効果の高い真っ黒なマントを。


「……」

「馬を思いっ切り走らせたいので、乗ってくれると助かります」

「そうですよ、きっと涼しいと思いますよ?」


 ぶっちゃけ、早く先に進みたいし。


「自分で歩いていると、余計に暑いでしょう? 追撃の危険も減らせますし」


 村を出てから数十分経った今でも、追ってくる気配は無い。


 追ってくるかはともかく、約束を守る気はあるのだろう。


「く……そ、そこまで言うなら」


 嫌そうに、俺の後ろに座るエリューナさん……そんなに嫌われているのか、俺?


「意識するなよ?」

「へ?」


 腰に手を回され、胸を押し付けられた! ……まあ、鎧越しだけれど。


「装備セット2」

「うん?」


 エリューナさんが、仮面の黒尽くめ姿に。


 あれにも、遮光効果があるのかな?


『おい、さっさと走らせろ』

「あれ、エリューナさんの声……」


 仮面の能力なのか、声がいきなり変わり、前に座っていたマリナが不審がってしまう。


「出すぞ、しっかり掴まっていろ!」


 強引に誤魔化し、高級軍馬に風を切らせる!


「気っ持ち良いーー!!」


 マントを被せてくれているマリナが、風を浴びた途端はしゃぎだす。


「それにしても、見渡す限りの荒野だな」


 まるで道を示すかのように出来た罅割れた道が、祭壇の位置とは逆の村はずれから延々と伸びており、地平線の彼方まで続いている。


『行けども行けどもという奴か。ちなみに、上から見たときには山のような物が見えていた』


「それなら、今日中にこの地帯は抜けられそうですね」


 荒野の貧村よりマシだと思っていたけれど、この猛暑の中を進み続けなければならないのはキツいな。


「足があって良かった」


 高級軍馬を手に入れてなかったら、今日中に抜けられなかったかもしれない。



●●●



「…………マジ……か」

「ぅぐ……帰りたい」

「さすがに…………キツい」


 事前に説明して貰ったはずなのに、スヴェトラーナやナオ、アヤナが弱音を吐きだす。


 まあ、四、五メートルの巨大な昆虫……(かいこ)の成虫が森のアチコチに止まっていればな。


 翅を広げた状態だと、八メートルくらいはありそうだ。


「もう一度言うけれど、決して攻撃しないでね」


 メルシュの言いつけ通り、ひたすら真っ直ぐ森を歩いていく私達。


「向こうから襲っては来ないとは聞いたけれど……やっぱキツい」


「アヤナ、まだ言っているのか。あんまり嫌々言うなよ、鬱陶しい」


挿絵(By みてみん)


 私だって、意識しないようにしているのに。


「なによ、ルイーサ。無理に平気なフリして、コセにゲロを――」


「ワー!! ワーワーワーワーーーッ!!」


 思わず、盛大な奇声を発してしまう!


「ガルルルルル」

「ルイーサ、バニラが恐がっちゃってる」


 私を睨んでくるバニラと、窘めてくる少女モモカ……私、バニラとは仲良くしたいのに。


「すみません……」


「……また、ここを通ることになろうとは」


 澄まし顔のヒビキ……なんか、ちょっと顔が青い?


挿絵(By みてみん)


「大丈夫か、ヒビキ?」

「少々、虫は苦手でして……」


 やたら古風というか、無駄に丁寧な喋り方を続けるヒビキ。


「もっと砕けた感じでも良いんだぞ?」


 私よりも年上だし。


「性分なのでしょう。家が厳しかったのもあって、この喋り方が定着してしまっていますし」


「良い所のお嬢様だったのか?」


「京都に本家を構える元華族……という奴でしょうか。親戚には、生け花などの数々の名門が名を連ねておりました」


「よく分からないが、西洋でいう貴族のような物か?」

「時代が時代なら、まさしくそうだったでしょう。と言っても、私の家は政財界に顔が利く家で、極道者との橋渡しを担っていたようですが」

「…………へ?」


 それって……ヤクザと関係があったってこと?


「仲介料を貰い、政治家や大手企業に都合が悪い人物を排除したり脅す仕事を様々な組に斡旋していたようです。私は女でしたので、さほど詳しいことは教えられていませんでしたが」


「それって……政治家とヤクザに強い繋がりがあるって事じゃ……」


「公然の事実でしょう。メディアがその辺を取り上げることはまずありませんが」

「ほ、本当に?」

「大手メディアの中にはヤクザ者を使っている所もありますし、製薬会社と政治家に繋がりはあるのは自明の理。私の家も、様々な事業を手広く展開していまして、政財界の方々を始め、多くの方に便宜を図って頂いていました。芸能人に元風俗嬢が一定数居るのも、枕営業が横行しているのも、その辺が関係しているのだとか」


 ……日本の闇をごった煮にした物を、いきなりぶつけられた気分だ。


「現代になっても極道者が一定以上の財力を持っていること、不思議には思っていませんでしたか?」

「それは……」

「法を制定さえしてしまえば、組織としての極道者を完全に排除するのはそう難しい話ではありません。例外もあるでしょうが、それが出来ないのは、法の制定を拒む勢力が存在するからです。では、なんのために拒むのか」


 ……胃が重くなってきた。


「一言で言ってしまえば、金です。今の世の中は、金さえあれば大抵のことは出来ますから。他人の人生を買うことすら」


「そんなことは……」


「大抵の人間が気付いていない。いえ、気付いていてもどうにも出来ないのですよ。権力も情報も、全てにおいて醜悪な支配体制が出来上がってしまっているために」


 確かに、ヤクザ顔の政治家が多いなとは思っていたけれど。


「その証拠に、お金がなければ国会議員になるのは難しいですしね」

「選挙には莫大なお金が掛かるとは聞いたな」


「後は、大衆の心理を誘導して多数決で決めた事にしてしまえば、それが民衆の意思という大義名分が成り立つ。アメリカが戦争を起こす際によく使う手です。自作自演のテロを、他国の仕業となすりつけたりなど」


「……」


 そんなバカなと……言い切れない自分が居る。


「そうやって歯向かう者を黙らせ、同時に莫大な資源や人材を手に入れる。西洋諸国が得意とする手ですよ。内と外からメディアを使って働きかけ、世論を戦争へと駆り立てる。十年前、大東亜戦争でその被害者となった日本が、同じ立場になったロシアの敵に回ったのは……なんとも皮肉が効いた話ですが」


 ――殺気!?


「今のは……」


 一瞬の強烈な殺気は……スヴェトラーナから……だったのか?


「……私は、あの世界に戻って、私の一族を根絶やしにします。あんな世の中を作り出してしまった者達を粛清するために。そのためにも、一刻も早くこのゲームをクリアしなければならないのです」


「……そうか」


 ヒビキは私達よりも、リリル達の方が気が合うかもしれないな。


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