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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第9章 新たなる門出

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326.荒廃の大地の村

「ここ、荒野の貧村に似てる。あそこほど酷くはないけれど」


 荒廃の大地の村への転移後に祭壇から見えたのは、木々がまったくと言って良い程見当たらない荒れた土地。


 荒野の貧村に比べると、まだちゃんとした木製の家が何軒も建っているため、マリナの言いたいことはよく分かる。


「さっさと寝床を確保しよう。先に行くぞ」


 “空遊滑脱”を使い、あっという間にピョンピョンと降りていくエリューナさん。


「俺達も行こう」


 既に日が傾き始めている。


「うん」


 俺の一歩後ろで、共に階段を降りていくマリナ。


「そう言えば、マリナの武器って前と変わったよな? 以前は“ウメガイの光剣”だったっけ?」


「例の女と戦っているときに、硝子の剣が生えてきたの。名前も、“キヤイウメアイ”に変化してた」


 石の柄と鍔に硝子の刀身が生えた、綺麗なのに歪さも感じる不可思議な剣。


 硝子の刀身部分には、複数の丸と蔦のような物で構成された紋様が浮かび上がっている。


「刻める文字は、九文字まで?」

「この剣が変化した時は、十二文字刻めていた気もしたけれど」


 俺がアテルと初めて戦った時みたいに、一時的には引き出せたのか。


「凄いな」

「そ、そう?」


 今ので照れるとは。


「なんか、言葉遣い変わったよな? 昔はもっと男勝りだっただろ」


 再会した時だって、今よりぶっきら棒な感じだったはずだし。


「わ、私だって……お、女の子らしくなりたいって……思ったりしても良いでしょうが……」

「まあな」


 別に、どっちの方が良いとか言いたいわけじゃないけれど。


「……ねー、九人の女と……そういう関係って……本当?」

「ぁぁ…………」


 その数、たぶんメルシュは自分を含めずに言っているんだよな。


「今は……十五人かな」


 メルシュも含めて。


「…………ゲームをクリアしたあと、その人達はどうするつもりなの?」


「俺は、この世界に残ろうと思ってる。向こうが望んでくれる限りは、一緒に生きていくつもりだ」


「帰る気……無いんだ」

「……うん」


 悪いけれど……向こうの世界に未練は無い。


 これでマリナの心が俺から離れるなら、それまでだったというだけの話。


「おい、宿があったぞ」


 俺達が祭壇を降り終わる前に、既に見付けてくれていたらしい。


「お待たせしました」

「遅いんだよ!」


 急に声を荒げてきたと思ったら、俺とマリナの首に腕を回して顔を近付けてきた?


「プレーヤーらしき人間を、何人か見掛けた」


「……エリューナさんの印象は?」


「こっちを探っているような感じだった。警戒しているだけにも思えたが……向こうから仕掛けて来るような奴等かは、さすがに分からないな」


「部屋は、一緒にした方が良さそうですね」

「へ!?」

「仕方ない」


 驚くマリナを余所に、納得してくれたエリューナさんの案内で宿へと向かう。



●●●



「……どうしたの、ツェツァ?」

「やはり、少し様子がおかしいですよ?」


 三人で“名も無き王国の廃墟”を見て回っていると、路地裏のような場所で二人に尋ねられてしまう。


「昔のこと……どうしても思い出しちゃって」


 小さい頃……物心ついた時から、私が暮らしていた街のアチコチには、焼け焦げた家や崩落したアパートが幾つもあった。


 ここはまるで、私が見て育った光景の成れの果てのよう。


 特に、あの戦争の後のような……。


「早く、リューナに会いたい」


 私が日本に逃げてきた後に再会した、私の……命の恩人の娘。


「……トカゲ共の言いなりになる人間なんて、みんな死ねば良いのよ」


 そこに、国も人種も年齢も立場も……関係ない。


「ねー、そこのお姉さん達」

「俺達と食事してくれない? 金は出すから」

「ちょうど三対三だしさー」


 三人の男達が、武装していない状態で近付いてくる。


 一人はアジア系で一人は獣人、もう一人はエルフか。


「へー、奢ってくれるんだ。で、全員で十人は居るみたいだけれど?」


 サンヤが挑発する。


「なに言ってんの? そんなわけないじゃーん」

「そういやこのステージ、幽霊が出るなんて噂もあるけれどよ~」

「怖ーよな。大丈夫。いざって時は、俺達が守ってやっからさ」


「下手な嘘ですね。イマイチ狙いが読めませんが」

「この期に及んで、まだしらを切るんだからね」


 二人には分からないらしい。


「コイツらの目当ては、私達の身体よ。無理矢理捕まえようとしたら最悪殺してしまう可能性があるから、食事に睡眠薬かなにかを混入して連れ去るつもりなんでしょう」


「うっわ、キッモ」

「……同族の面汚しが」


「おいおいおい、早とちりすんなって!」

「そんな証拠なんて無いだろう? 被害妄想が過ぎるよ」

「俺達、滅茶苦茶に傷付いちまったぜ」


「分かるのよ、その濁った目を見れば――装備セット1」


 この手に星球付きの棒、“栄華の裏の真実”を手にする。


 私が捕まっていた発電所の地下で、私と同い年くらいの子を――犯していた奴等と同じ目だから!!



「アンタら――皆殺しにしてあげるわ」



 私達が……私が――リューナと一緒に、お前らみたいなのを何人殺してきたと思っている。



●●●



「なんだか、微かに悲鳴が聞こえます」

「放って置いて良いと思うよ」


 タマを諫めておく。


 声の方向からして、スヴェトラーナ達が害虫駆除してくれている可能性が高いし。


「それよりも」

「貴重な薬の材料は要らんかね?」



○以下から購入が可能です。


●スタミナリザードの粉末 2000G

●イエローフロッグの毒液 2000G

●ベルスネークの凝血毒  2000G

●マンドラゴラの乾燥粉末 3000G

●トレントの黒樹皮    3000G



 微かにしわがれた顎が見える老婆のNPC、その売り物を確認する。


「全部十ずつ頂戴」



○合計で120000(百二十万)Gになります。


 YESを押して購入。


「まいど。これで、暫くは食いつなげるよ」


「今のって、どういう使い道があるの?」


 カナに尋ねられる。


「全部薬の材料になる物だよ。“調合師”のサブ職業が無いと薬は作れないけれど、スタミナリザードの粉末は、TP回復速度を五分だけ一点五倍。マンドラゴラの粉末は、MP回復速度を一点五倍。イエローフロッグの毒液は、武器なんかに塗って相手を麻痺状態に。ベルスネークの毒液も、武器に塗って突き刺すと血を固めて倒せる。毒は血の通った相手にしか通用しないけれどね」


 だから、魔神や古生代モンスターなどの無機物系には通じない。


「スタミナリザードとマンドラゴラはともかく、他の二つはあまり使い道が無さそう」

「これは、薬の材料用に買った物だよ。ここで買うのが一番安いから」


 まあ、それだけじゃないんだけれど。


「――ッ!!」


 タマが、瞬時に背後に向かって槍を構えた?


「タマ、どうしたの?」

「今……そこになにか居ませんでしたか?」


 スゥーシャの問いに、どこか怯えたように尋ね返すタマ。


「ジュリーやカナは、なにか感じた?」

「特には」

「なにも」


 私も、気配のような物は感じなかった。


 獣人の五感は優れているし、タマだけがなにかを感じ取れてもおかしくはないけれど。


「でも……」

「暗くなる前に行こっか」


 そのまま五人で街を回りきり、私達は全員で神秘の館へと戻った。


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