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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第9章 新たなる門出

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325.魔神・日蝕狼

「なんというか、拍子抜けだな」


 あれから三人で下山を続けること三時間。俺達はようやく、終点であるボス扉の前へとやって来た。


 ここに来るまでにモンスターと接触したのはほんの数度。それも、単体の熊モンスターと鹿モンスターのみ。


「飛んでいければ、まだ楽だったのに」


「山頂から徒歩で下山しないと、辿り着けない仕掛けだからな」


 橋の砦町のNPCがヒントをくれるらしいけれど、俺達はメルシュ経由で手に入れている。


 山で迷ってもヒントを得られるようにはなっているらしいけれどな……徒歩限定で。


「さすがに、足が痛くなってきたな」

「私は大丈夫です」

「俺は、痛いという程ではないな」

「む……」


 一番弱音を吐いた形になってしまったエリューナさんが、何故か準備運動のようなモーションを。


 そう言えばこの人、二十ステージを縄張りにしていたっぽいよな。


 マリナも俺も積極的に攻略を進めていたけれど、エリューナさんは暫く二十ステージに居たわけだから……足腰は俺達よりも弱ってそう。


「よし、さっさとボス戦を終わらせるぞ!」

「へと、無理しなくても良いですよ?」


 不器用ながらも気遣うマリナ。


「マリナ、半端な優しさは他人を傷付けることもある」

「おい、聞こえているぞ、コセ!」


 珍しく感情的になるエリューナさん。


「お前が無理矢理唇を奪うような男だと、マリナに告げ口してやろうか?」


 耳元で囁かれた。


「いや……あれは事故でしょう」

「男とのは、初めてだったんだぞ?」

「……スミマセン」


 でも……ちょっと嬉しい。


「本当に、休まなくて大丈夫ですか?」

「大丈夫だ!」

「俺達は魔法の家が使えないし、早めに寝床と向こうの雰囲気を掴んでおいた方が良いか」


 危険なプレーヤーが居るのかどうかまでは、メルシュにも分からないし。


「ほら行くぞ、お前ら!!」


 もう投げ槍だな、エリューナさん。


 ボス部屋の扉が開き、俺達は中へ。


「ボスは魔神・日蝕狼。弱点属性は氷、有効武器は剣、危険攻撃は“太陽法術”。更に、光と炎の属性を吸収する事もある。二属性でも同様だ」


 二十一からは、ボスに特殊な特性が備わっている事が多いらしい。


「ステージギミックは無し。来るぞ!」


 水色のラインが灯ると、第二ステージの転剣狼に酷似した青白い魔神の姿が顕わに!


『グルルルル』


 姿は転剣狼よりも少し小柄だが、額から生える剣のような白角が、妙に神々しさを醸し出している気がする。


『アォォォォォォォォォォォォン!!』


 額の角に酷似した剣を手にし、瞬発的な動きで距離を詰めてくる魔神・日蝕狼。


「下がれ! “吹雪魔法”――ブリザードトルネード!!」


 凍てつく竜巻が日蝕狼の身体の一部を凍らせるも、勢いは大して衰えない。


『ウォォォォォ!!』


 日蝕狼の剣が、エリューナさんに迫る!


「――“拒絶領域”!!」


 跳躍してきた魔神を、弾いて後退させた。


「“飛王剣”!!」


 俺の強化された斬撃を剣で受けるも、更に後退する魔神。


 TPの劇的な増大による威力の強化……思っていた以上かもしれない。


「マリナ、”硝子魔法”を魔神に!」


「で、でも!」


 “硝子魔法”は氷と光の二属性。ボスには吸収されて無駄に終わると思っているのだろう。


「俺を信じろ!」


「分かったわ! “硝子魔法”――グラスレイ!!」


 魔法陣に円の硝子を作り出し、そこから光線が照射される!


『ウォォォォォ!!』


 魔神・日蝕狼の身体が黒く染まり、攻撃を受け付けなくなってしまう。


 だが、あの能力を発動した事で動きが止まった!


「今だ、エリューナ!!」

「ああ!!」


 神代文字をそれぞれの武器に刻み込み――文字が共鳴!


「「“神代の剣”!」」


 青白い刃を形成し――両側から駆け詰める!


「“空遊滑脱”」

「“空衝”」


 魔神の左右へと跳びあがり、同時に剣を振り下ろす!!



「“大地剣術”――グランドスラッシュ!!」

「“吹雪剣術”――ブリザードスラッシュ!!」



 魔神・日蝕狼を、X字に切り裂く!


『ゥォォォォォォォォ!!』


 青白い輝きを放ち、身体を再生させていく日蝕狼!



「――“魔力砲”!!」



 文字を使って強化したマリナの砲撃が、魔神に直撃!


 だが、剣で弾きながら、より俊敏な動きで逃れてしまう!


『ウォォォォォッ!!』


 光の剣撃を飛ばして来る日蝕狼!


「クソ」


 ほとんど跳躍で動き回るため、素早いのもあって“大地讃頌”を当てる隙が無い!


「――へ?」


 文字の共振する感覚が、強くなった?


「――“神代の霊剣”」


 炎のような青白い光を纏ったマリナの剣が振るわれ、炎光の斬撃を飛ばした!?


 しかも、振るう度に新たな斬撃を飛ばしていく!


『ゥォォォォォッ!!』


 ダメージは軽微だけれど、着実に魔神に傷を与えているようだ。


「トドメはお願い!」


「ああ!」

「任せろ!」


 三人の文字が、より深く共振――俺の“サムシンググレートソード”に、十五文字が刻まれる!!



「――――“飛王剣”!!」



 俺の斬撃とマリナの炎光の斬撃が重なり――増大した一撃が、魔神の剣を砕き壊した!!



「“神代の剣影”――“吹雪剣術”、ブリザードスラッシュ!!」



 魔神の頭から胸までも切り裂き、内側から凍らせていく!


「コセ!」

「ユウダイ!」



「“神代の剣”――“竜剣術”――――ドラゴンスラッシュ!!」



 長大な青の刀身を生み出し、魔神・日蝕狼を袈裟斬りにした。



○おめでとうございます。魔神・日蝕狼の討伐に成功しました。



「ハアハア、思ったより……ハアハア、手こずったな」


 人数とLv、ステージをすっ飛ばしている事も地味に響いたのだろうか。



○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。


★日蝕狼の山刀 ★サブ職業:太陽法術使い

★飛剣・靈光のスキルカード ★サブ職業:タシロカムイ

★天磐戸のスキルカード



「フー……一気に怠くなってきた……さすがに休もう」

「そうね……ここなら安全だし」


 二人から、泣き言が洩れる。


 登山を終えた直後に、予想以上に神代文字の力を振り絞ったからな。


「私は、好きに選ばせて貰うぞ」

「マリナはなにを選ぶ?」

「この飛剣て言うのかな? 私に合っていそう」

「なら俺は、“太陽法術使い”を選ぶか」


 ”タシロカムイ”は獣人専用だろうし、魔神の武器であろう”日蝕狼の山刀”は今更な性能だろう。


 三人でボス部屋内に寝っ転がり、俺達は誰ともなく仮眠を取っていた。



○これより、第二十九ステージの荒廃の大地の村に転移します。



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