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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第9章 新たなる門出

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316.舞う木の葉と大地の唄

「“泥土斧術”――ベリアルブレイク!!」


 山猫獣人のサンヤが、戦士の村から獣道に入って間もなく襲ってきた、白い体毛と青い皮膚のアクロバットモンキーを潰した。


「泥土。土と水の二種属性か。珍しいね」


 序盤の方では、土属性の魔法は取得出来ないのに。


「それって斧なのね」


 ユリカが声を掛けた……珍しい。


「ああ、バカでかい刀みたいだろう? 使い勝手が良くて気に入っているんだ」


挿絵(By みてみん)


 バルディッシュの一種で、柄に刀身がくっ付いている部分が二つと、三日月のような刃が特徴的。


「それ……神代文字が刻めるよね? ……なんて名前?」

「マスター、その質問は……」


 ユイの率直な質問に苦笑いを浮かべつつ、皆が周りを警戒しながらも聞き耳を立てている。


「ああ……”汚泥斬首の三日月”って名だよ」


「「「「変じゃない!?」だと!?」ですって!?」のかよ!!」


 キョトンとするモモカと怯えるバニラ、レリーフェと隠れNPC以外の《龍意のケンシ》メンバーが、一斉に驚いたみたい。


「サンヤ、あんまり私達の情報を……」

「諦めなよ、ツェツァ。アイツらには隠れNPCが居るんだからさ」


 まあ、私達隠れNPCには、見ただけでどんな装備なのか解るわけだしね。


 さすがに、見えていない物までは解らないけれど。


「ストーンモンキーっての……来るよ」


 ユイが警告した瞬間、前方から石で出来た手長猿が集団で現れる。


「石を投げてくるから、気を付けて」


 “ストーンモンキーのスキルカード”からは“石礫”っていうスキルが手に入るけれど、正直要らない。


「“植物操作”」


 ヨシノが辺りの植物を操り、ストーンモンキー達を拘束する。


「”木の葉”」


 魔神・木の葉狸から得た“木の葉の指輪”で、木の葉をユラユラと上から無数に降らせるヨシノ。

 


「”木の葉尖舞”!!」



 木の葉全てが鋭利さを得て、ストーンモンキーに殺到――全て穿ち抜いて、光に変えていく。


 ヨシノの“植物操作”と“植物愛の指輪”のおかげで、他の誰かが使うよりも強力な攻撃手段になっている。


 これまではドライアドであるヨシノの強みを生かす攻撃手段は限られていたけれど、これなら植物が無い場所でも一定以上の強さを発揮できる。


 依然として、炎に弱いことに変わりはないけれど。


「「「…………」」」


 黒尽くめ三人組が、呆然としながらヨシノを見ている。


「どうしたの、三人とも?」


 カナが尋ねても、反応が薄い。


 これで、あの三人が裏切った場合、真っ先にヨシノが狙われる確率を上げられただろう。


 他の誰かが狙われるより、ヨシノの方が生き残れる可能性が高いし。


 万が一殺されても、一番被害が小さくてすむ。


 隠れNPCの中で最後まで生き残らなきゃいけないのは私、ワイズマンのメルシュだけだしね。


「おい、先に進むぞ! 時間を無駄には出来ないのだからな!」


 何故かレリーフェがこの場を締めて、皆が前に進み出す。


 さすがは元騎士団長。この空気を律する感じ、今までレギオンに居なかったタイプだね。


 私が今まで担ってきた嫌われ役、少しだけレリーフェの肩に乗せさせて貰おっかな。



●●●



「止まれ、お前達」


 橋の最奥にある煉瓦の砦前まで来ると、鈍色の甲冑を身に着けた二人の王国兵士に止められる。


 バイザー突きの兜。上部分が直上に、長く尖っているのが印象的だな。


「この先は、我が国が交流を禁止している蛮族の領域。旅の者の交通は通常、禁止されている」

「まあ、絶対にというわけでもないがな。言っている意味は判るよな~。へへへ」



○賄賂、一人50000Gと引き換えに砦内に侵入する事が可能です。


●パーティーメンバー分のお金を払って、“王国兵士”のサブ職業を人数分買う(パーティーメンバー全員が装備していれば、何事も無く通り抜けられます)。


●無理矢理に押し通る(王国兵士100人との戦闘になります。全員倒すまで砦には入れません)。

            推奨Lv 合計220



「二人で97Lvだって言うのに……我ながら無謀だな」

「俺が前に出るので、援護をお願いして良いですか?」


 エリューナさんに頼む。


「まあ、妥当な役割分担か。良いぞ、始めても」


「頼もしいです」


 これまでは推奨Lvを上回った状態で攻略を進められたけれど、一気に八ステージ跳んだ事でそのアドバンテージも無くなっている。


 足りないLv分を埋めるには、持ってるアイテムとスキル、神代文字を使って上手く立ち回るしかない。


 俺は、★無理矢理に押し通るを選択した。


「我等ノスバーク王国に盾突くつもりか、貴様等ッ!!」

「くせ者だ!! くせ者が出たぞーー!!」


 橋の両端の縁や砦の上空、背後からも光の柱が立ち上り、逃げ場が無くなった。


 これで、本当に生きるか死ぬかの勝負になったわけだ。


 王国兵士達が十人ほど砦から出て来た所で、ようやく身体の硬直が解ける!


「ハッ!!」


 黒銀の大剣、“シュバルツ・フェー”を両手で握りながら、門番だった二人の兵士に斬り掛かった!


「く!」


 二人がかりとはいえ、槍で剣を止められたか!


「悪いけれど、使わせて貰う!」


 “偉大なる英雄の鎧”に文字を六文字刻み、身体能力を強化――膂力に任せて兵士二人を後退させた!!


 いつ観測者になにをされるか判らない状況――出し惜しみはせず、かつ必要最低限の消耗でクリアしてみせる!!


「――“大地讃頌”!!」


 あの異形の男が使っていたスキルを使用! 右脚で踏んだ場所から、黄土色の光が厳かな音と共に扇状に広がり――駆け付けてきた兵士諸共たじろがせた!


「“飛王剣”!!」


 七人の兵士を、纏めてぶった切る!


 TPの十分の一を消費して放つ強力な斬撃。


 “世間師”によりTP総量が激増しているため、目に見えて威力が上がっている。


「“瞬足”――“回転”、ハイパワースラッシュ!!」


 残りの懐に飛び込み、大きく高速で剣を身体ごと振り――六人全員を両断!!


「一気に来たぞ!」


 二十人以上の王国兵士達が一斉に現れ、突撃してきた。


「エリューナさん、俺に強力な魔法を!」

「は? ――どうなっても知らないぞ!」


 すぐに、なにかあると察してくれたらしい。


「“黒精霊”!」

「“吹雪魔法”――ブリザードトルネード!!」


 凍てつく横向きの竜巻が、黒き妖精の剣に吸い込まれていく。


「“跳躍”――“空衝”」


 高く跳びあがり、そこから兵士達の中心へと急降下!!



「――ハイパワーブレイク!!」



 地面に猛烈な吹雪の暴威を炸裂させ、余波で全ての兵士達にダメージを与える!


「オーバーキルだったか」


 ほとんどの兵士は、炸裂した吹雪の剣威によって死亡。


「“氷柱針”!!」


 エリューナさんが左腕を振るって放った複数の氷柱に、生き残っていた左端の兵士三人が倒れる。


「“煉獄魔法”――インフェルノ!!」


 右端の兵士は、俺の紫炎で焼き尽くした。


「これで三十五人。三分の一以上は葬ったぞ」


 敵の残り戦力をハッキリと教えてくれるエリューナさん。


 なんというか、地味に士気の上げ方を分かってるな。


「とはいえ、ここからが本番だ」


 砦の中から黒鎧の重装兵が十人、さっきまでの兵士十二人を引き連れた状態で現れた!


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