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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第9章 新たなる門出

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311.偉大な戦士の門出

「じゃあ、今判明している情報から、今後の行動方針を決めるよ」


 メルシュが、カナやザッカルから集めた情報を元に、食堂に集まった皆の前で話を始める。


「まず、靄に呑まれた皆だけれど……ザッカルは第十五ステージの”世界の港”に、マスター・コセは二十八ステージの”橋の砦町”に居ることが判ったよ」


「だが、コセ殿の情報は第三者からもたらされた物なんだろう? 当てになるのか?」


 レリーフェが、もっともな疑問を口にする。


「状況的に嘘を付いているとは思えないし、なにより……私の固有スキル、“英知の引き出し”が、二十八ステージまでの情報にアクセス可能になったの」


「メルシュの主がコセだから、コセが居る場所までの情報を得られるようになった。そういうこと?」


 ジュリーが確認がてら、解りやすく言い直してくれる。


「うん、間違いないと思う。ただ、ステージを跨いでしまっているから、私やトゥスカは奴隷の効果による十二時間後の転移が出来ない」

「つまり、直接合流しない限り、ご主人様はずっと一人という事ですか」

「しかも、奴隷である私達とはパーティーを組んだ状態のままでね」


 パーティーリーダーのLv次第ですけれど、三つに別れてしまった以上、私達はろくにパーティーを組めない。


「それで、私は“シュメルの指輪”を装備して一時的にマスターのパーティーを外れようと思う。急いでマスターを追い掛けるためにも」


「その方が良いだろうな」

「ですね」

「さっそく、明日から最速で動くわよ!」


 ルイーサ、クマム、ナオがやる気を漲らせている。


「で、俺はどうしたら良い?」


 十五ステージまで一人戻されたザッカルが、メルシュに尋ねた。


「さっき連絡を取って、リョウ達にザッカルと合流するように頼んだよ。この後、庭園で顔合わせしてくれる?」

「おう、良いぜ」


 ザッカルの方は、なんとかなりそうですね。


「ただ、向こうでも似たような事があったみたいで、マリナが行方不明なんだって」


「「「へ?」」」


 マリナって、いきなり私のご主人様に攻撃してきたあの女?


「まだ連絡が取れていないらしくて、なんの手掛かりも無いみたい」

「手掛かりが無いなら、気にしても仕方あるまい」


 レリーフェが、一刀両断してしまう。


「我々は、少しでも早くレギオンリーダーと合流すべきだろう」

「ちょっと、幾らなんでも冷たすぎるんじゃないの!?」


 アヤナが噛み付く。


「それで、ザッカルとリョウとやらの一団と合流する居残り組と、コセ殿に合流するためのパーティーに別けるのか? 私としては、全員でコセ殿との合流を図るべきだと思うが」

「アンタ、いい加減にしなさいよ! ザッカルの気持ちも考えたらどうなのよ!」


 人情的には、アヤナの言うことも解るけれど。



「悪いけれど、私もレリーフェと同意見だよ」



 メルシュが宣言してしまう。


「ああ、俺もそれで良いぜ」


「ザッカル……」


 当の本人が、受け容れてしまっていた。


「コセは、この《龍意のケンシ》の要だ。アイツが完全に居なくなったら、この組織は確実に潰れる」


「「「…………」」」


 ザッカルの言葉は、ここに居る誰もが薄々気付いていたこと。


 なにより私が、ご主人様が居なくなった世界に興味が無い。


 この胸に刻まれた奴隷紋は、私とご主人様の死を繋いでくれる愛おしい絆。


「俺が居るのは十五ステージ。二十八ステージのコセと比べれば安全も安全。それに、コセと一緒に居る奴等はヤベー奴なんじゃねぇのか? カナ」


 カナに注目が集まる。


「う、うん。ジュリーちゃんやリンピョンちゃんが言っていた特徴と一致する人達が、ふ、二人は確実に居ました。そ、それに、コセくんと一緒に居るの……たぶん、ジュリーちゃんとクエストの最後まで一緒に居た人だと思う」


「人の命を貪欲に奪う、謎の黒尽くめ集団ですか」


 本当に、なぜそんなことになってしまっているのか。


「そっちは、情報を共有してある程度上手くやるわ。マスターを殺させないためにもね」


 メルシュから、強い決意を感じる。


「ナオの言うとおり、明日からお互いに頑張ろうぜ」

「そうですね」

「ハイ、頑張ります!」


 ザッカルの言葉に、元気良く返事をするタマとスゥーシャ。


「ところで……トゥスカとノーザンはどこに居るの?」


 アオイに尋ねられてしまう。


「……私達が今居るのは……”獣の聖地”です」


 メルシュを見詰める。



「二人が居るのは……第三十六ステージだよ」



 ご主人様を助けようとした結果、私達がもっとも迷惑を掛ける事となってしまった。



●●●



「…………ぅ」


「ようやくお目覚めか。もうとっくに夜明けだぞ」


 パールグレイの髪の女性に、声を掛けられた?


挿絵(By みてみん)


 肩を出した白い布の服に、スリットが両端に入った青のロングスカートと黒のブーツ姿の女性に。


「……ここは」


 壁と壁の間が……狭い。


「さっき連絡を取って知った事だが、ここは第二十八ステージ。橋の砦町という場所らしい」


「二十……八ステージ?」


 そこで、ようやく意識が覚醒していく!


「――イッツ!!」


 起き上がった瞬間、左腕に激痛が走ったッッ!!


「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー」


 込み上げてきたあまりの痛みに、左腕がブルブルと震えている。


「……大丈夫か?」

「あ、ああ……」


 痛みそのものは一瞬で消えたのに、まだ幻痛に苛まれている。


 ……鎧を解除してみるも、左腕に怪我は無い。


「なんだったんだ……今の」


「……なにが起きたのか、ちゃんと覚えているのか?」


「貴女を助けようと思って、靄に再び突入して……抱き締めてから」

「もういい、やめろ」

「ハイ、すみません……」


 さすがに、今のはデリカシーが無さ過ぎたか。


「……一度、仲間達と話して来る」

「一応、こちらの状況はカナという女を通じて伝えてある。ちなみに、私は自分の魔法の家に戻れなかった」

「へ?」


 ……戻れない?


「だが、入り口で会話するだけなら問題ないはずだ。お前と私が同じ状態かは知らんが」

「ああ……」


 皆が居るのは二十ステージ……これって、暫く皆には……トゥスカには会えないって事なのか。


 鍵を使い、家へと空間を繋げる。


「俺もダメみたいだ」

「……ご主人様?」

「トゥスカ!」


 すぐに声が聞けるとは思わなかった。


「ゴメン、心配掛けた」

「本当ですよ……もう」


 トゥスカの瞳が潤む。


「どうやら、俺は魔法の家が使えなくなってしまったらしい」


「メルシュは、一時的なバグと言っていました。飛ばされたカナさんやザッカル、私達も問題なく使えましたし、いずれはご主人様も行き来できるようになるかと」


「そっか……ちょっと安心した」


 もう一生、あの家に戻れないのかと思っていたから。


「……私達?」

「ぁ……」


 なんだ? このトゥスカの、マズイ事を口走ってしまったって感じは。


「トゥスカ?」

「あの……お、お気になさらないで下さい」

「トゥスカさん?」


「…………ご主人様が靄に落ちたのを見て、ノーザンと一緒に追い掛けてしまったんです」

「怪我とかは……してないよな?」

「はい、そちらは」


 まあ、この気まずそうな雰囲気の理由は察しがつく。


「で、今はどのステージに居るんだ?」


 この後、メルシュも合流して一通りの情報交換を行った。



            ★



「三十六ステージ、”獣の聖地”」

「今朝調べた限りでは、獣人のレギオンが幅を利かせているステージらしく、極端な獣人優位主義とでも言うべき空気が広がっていますので、私とノーザンは一先ず安全かと」

「だから、取り敢えず私達がマスターと先に合流して、それからトゥスカ達を追い掛けようとしているんだよ」


「メルシュ、解ってて言っているだろう?」

「……ハー」

「ご主人様?」


 トゥスカの方は、本当に解っていなさそうだ。



「今から全力で――トゥスカ達が居る場所へと向かう」



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