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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第8章 邂逅のケンシ達

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287.拘泥りの魔法使いサキ

「ジュリーちゃん達を待たせるのも悪いし、さっさと片付けて来るから」


 《龍意のケンシ》には見せないようにしていた私の愛用武器――”職人のこだわり庖丁”を手に、魔神・強壮守宮へと近付いていく。


「いつでも、援護に入れるようにはしておきます」


 シャドーの隠れNPC、シェーレちゃんが気を遣ってくれる。


挿絵(By みてみん)


「ありがとう」


 大量のヤモリが飛びだしてきた所で、右手の大庖丁に――十二文字刻む!!


「ようやく、私もアテルと同じ領域に踏み入れたみたいね」


 同時に、”職人のこだわり庖丁”の形状がより鋭利に変化し――”匠の拘泥(こだわ)り庖丁”へと進化。


「これも、ジュリーちゃんと話せたからかな」


 アテルがコセ(かれ)との出会いで新たな境地へと達したように、私にとって、ジュリーちゃんがそういう対象だったということなのでしょう。


「”二重魔法”、”冥雷魔法”――ヘルスプランター」


 左右のヤモリを減らし、数秒の時間を稼ぐ。


『グォォォォォォ!!』


「”瞬足”――”跳躍”」


 一気に距離を詰め、直後の尻尾の横振りを――頭上へと跳んで回避。



「――――”断罪斬り”」



 神代文字の力を集約したスキルの一撃で真っ二つにし、”強壮再生”を使わせることなく戦闘不能に。


 やがて、魔神もヤモリも光となって消えていく。


「これが今の私よ、ジュリーちゃん」


 聞こえるはずもないのに、そう呟く自分が居た。



●●●



「この味付け卵……美味しいな」


 昼頃、明日のダンジョン攻略の打ち合わせをすべく、俺達とアテル組は、全員でホテルのビュッフェ会場へとやって来た。


 既に打ち合わせは終わり、皆で好き好きにご飯を食べている真っ最中。


 和、洋、中、それ以外と思われる料理もあり、優に二百種類はありそうだ。


 昨日と一昨日の夜もここで食べたけれど、全種類食べきれるだろうか?


「コセ、ちょっと良いかな?」


 アテルが、畏まった様子で声を掛けてきた。


「なんだ、あらたまって?」

「ちょっとその……聞きたい事があって……向こうで話さないかい? 食事しながらで構わないから」


 モモカを中心とした人だかりから、最も離れた位置にあるテーブルを指差すアテル。


 そちらの方には、NPCと思われる人間以外誰も居ない……どうやら、他の人間には聞かれたくないらしい。


「わかった」


 どんな話をするのかと僅かながら緊張した状態で、俺は料理の入った皿と共に移動。例のテーブルの椅子に座る。


「プライベートな事を尋ねてしまうんだけれど……君は、何人の女性と関係を持った?」


「……は?」


 自分でもビックリするくらい冷たい声が出た。


「すまない。別におもしろ半分で聞いているわけじゃないんだ。その……僕は、割と求められたら断らないから……レギオンの大半と……そういう関係なんだ」


 なんだこれ、遠回しな自慢?


「それがどうした」

「いや……その辺、君はどうしてるのかと……僕は、本当にこのままで良いのかってね……」

「……」


 今の状況を考えると、俺も滅多な事は言えないんだけれど……。


「まあ……責任を取る気があるなら……良いんじゃないか?」


 本当にそれで良いのかと面と向かって言われると……ちょっと自信は無い。


「責任……」

「おい、まさか責任を取るつもりが無いわけじゃ無いよな?」


 だとしたら、俺は目の前の男を軽蔑せざる負えない。


「……知っての通り、僕等は世界を終わらせるのが目的だ。そういう意味では、自分達の将来を見据えてはいない」

「おい」

「だが、決して半端な気持ちでそういう関係になったつもりは無い。死が訪れるその時まで、大切に出来ると思った相手としか寝てはいない」


 寝てはいないとか言うな。


「だったら、わざわざ俺に尋ねて来なくても良いだろうが」

「まあ、確かにその通りなんだけれど……罪悪感が湧かないわけじゃないし……君はどうなのかと」

「それは……まあ」

「それに……結構オープンに求められるから……ちょっと頻度を減らしたいし……」


 本当に聞きたかったのはそっちか。


「俺の方は、向こうが勝手に順番を決めたりしているし、その時の精神状態とかで譲り合ったりしているようだけれど……」


 いったいなんの話をしているんだ、俺達は。


「それは羨ましいな。こっちは自分がってタイプが何人か居るから……さすがに、毎日はね……」

「え、そっちは毎日なのか?」

「ん? そっちは違うのかい?」

「ああ……うちには、モモカが居るから」


 モモカが俺と一緒に寝たいと言うと、皆はさすがに遠慮するし。


「そっか。小さい子が居ると、さすがに……」


 なにかを熟考しているな、アテルの奴。


「まさかとは思うけれど、ホテルの裏で子供を買おうとか思っていないよな?」

「さ、さすがにそれは……戦えない子を庇いながらのボス戦は、さすがに危険すぎるし」


 そこは同じ考えか。


「あ、でも……あとでデボラさんに確認……いや、子供が加わったら加わったで攻略の妨げになるし…………変な事を考えるのはやめよう」


 いったいなにを考えていたんだ、コイツ?


「ちなみに……精力の付く食べ物とかって、なにか知ってるかい? 色々教えて欲しい」


 コイツはコイツで、苦労しているらしい。


 トゥスカと出会う前にこんな相談されてたら、俺はなにをしていたか分からない。


「ああ……はい」


 なんかムカつくけれど、知っている食材の情報はあげた。



            ★



「……ちょっと、食べ過ぎたかも」


 クセの強いチーズとか、初めての香辛料を使った料理とか、馴染みのない味はついつい試したくなってしまう。


「コセさん、モモカちゃん達はお散歩に行ったみたいよ」

「他の皆も、温泉やプールに入ってくるって」


 サトミさんとリンピョンが、二階側の俺の寝室に入ってきた。


 音は下からの方が聞こえやすいため、俺はこっちの部屋を使っていたのだけれど……。


「というわけだから……今しかチャンスが無いの」

「……なんの?」

「もう、分かってるくせに♡」

「それでは、私は見張りを」

「リンピョンちゃんも一緒よ。メグミちゃんやトゥスカちゃんだって、そのつもりで私達に時間をくれたんでしょうし」

「……へ?」


 それってつまり……。


「よ、よろしいのですか、サトミ様?」

「リンピョンちゃんなら、良いに決まってるわ♡」


「いや、ちょっと……」


 チョイスプレートを操作し、装備を消してしまう二人。


「昨日から、もう我慢の限界だったの……だから、今だけ……私の我が儘を聞いてちょうだい♡」


 不安と期待が昂ぶり過ぎて……今にも泣き出しそうな二人の顔。


挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)


 お腹いっぱいだからなのかな……頭が全然回らない。


「……良いよ」


 俺に、アテルのことをとやかく言う権利なんて全然無いや。


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