276.ガーディアンキングVSヴリルの真髄
「”白骨火葬”!」
「リバーバイパー!」
闇の片翼のような物を右の背から発していた古生代ガーディアンダークに、アオイのミズチと私の燃焼の白煙をぶつける!
「「”抜剣”!」」
同時に剣を抜き、左右から回り込むように駆ける私とアムシェル。
「行け、ノーム!」
石を飛ばし、動きを封じ込めに掛かるフェルナンダ。
「”光線魔法”――アトミックレイ!」
弱点属性であるアヤナの魔法が決まり、完全に動きを止めるガーディアンダーク!
二人共に、手の中の剣に神代文字を九文字刻み――全力の一撃を放つ!
「”暗黒剣術”――ダークネスブレイク!!」
「”光輝剣術”――シャイニングブレイク!!」
両腕でガードされ、アムシェルの方は腕を半壊、私の方は綺麗に肘から下を吹き飛ばした。
弱点属性かどうかの差か。
『グォォッ!!』
無い腕や脚を乱暴に振り回してきたため、後退させられる私達。
「行け!」
アオイが鞭を操り、”大蛇の石柱の指輪”で生み出した柱を投げつけ、見事に腹にぶち込んで部屋の壁に埋め込んだ!
――目の辺りから光線を放ってきた!?
「”追放”――”暗黒剣術”、ダークネスブレイク!!」
アムシェルが飛ばした斬撃が炸裂し、ビームを防いでくれる!
「決めろ、ルイーサ!」
「”闘気剣”! ――”古代剣術”、オールドスラッシュ!!」
”古代の力”が発動しない古代属性の力を聖剣に乗せ、ガーディアンダークを切り裂いた。
『ギ……グ……ォ…………』
「やったな」
アムシェルが魔剣を鞘に戻し、労いの言葉を掛けてくれる。
「ああ、お疲れ」
ガーディアンダークが光に変わりだしてすぐに、私達の身体もボス戦直後のように変わり出す!
「すぐに連戦だ。気を抜くな!」
フェルナンダの言葉に導かれるように、五人全員が一カ所に集まった。
★
「”一角水魚”!」
転移直後に見えたのは、スゥーシャが水の魚を、ガーディアンキングと思われるガーディアンダークよりも一回り大きい古生代モンスターに向かって突撃させる瞬間!
だけれど、水の魚はガーディアンキングの剣の一振りにより、容易く倒されてしまう!
「”大鬼の手”、”回転”!」
アオイのスキル、灰色の凶悪の手が拳を作り、回転しながらガーディアンキングに接近し――左腕の盾に阻まれた!
「”太陽魔法”――サンピラー!!」
「”光線魔法”――アトミックシャワー!!」
マリサとデボラによる上空からの無差別魔法が、ガーディアンキングを襲う!
「”死霊術”――マサン!」
メフィーが、熱気を放つ黒い鬼のような男を魔方陣から出現させた?
「足止めを!」
「”精霊魔法”――シルフ! ウンディーネ!」
フェルナンダと共に、ガーディアンキングの牽制を担ってくれる二体の精霊。
「無事か!」
「私達も、さっき転移してきたばかりだ。それより……」
三体から攻撃を受けているガーディアンキングの周りに、先程のメフィーと似た魔方陣を八つも出現させ、そこから古生代モンスターと思われる一メートル程度の小さな兵士を呼び出した!?
「”古生代ポーン”。もっと上のステージでしか出してこないはずなのに! やってくれたな、観測者!」
「言っておきますけど、私が設定したわけではありませんからね!」
デボラ……もしかして、このステージの元担当だったのか?
「アレを全て倒すと、更に強力な古生代モンスターを出してくる。ガーディアンキングに集中して攻撃するぞ!」
「分かった!」
ゲーム経験者らしきマリサの言葉に従い、ガーディアンキングに狙いを定める私達。
「デカいので少しでも削る! ”二重魔法”、”光線魔法”――アトミックレイ!」
アヤナの魔法の大半が盾で防がれるかと思われたその時、”古生代ポーン”四体が進み出て壁となった!?
しかも左右から二体ずつ、残りのポーンが突撃してくる!
「優秀な思考ルーチンをお持ちのようで!」
「面倒な真似を!」
マリサとデボラが焦っている。
「”絡め取り”!」
鞭で”古生代ポーン”の一体を拘束するアオイ。
「コイツは私が拘束しておくから、今のうちに!」
「私が他のポーンを仕留める!」
リリルが、率先してポーンを仕留めに行ってくれる。
「”幻影の銛群”!」
スゥーシャの神代の力が宿った六つの白銀の銛が、ガーディアンキングを翻弄!
盾になってボロボロの”古生代ポーン”は、フェルナンダの二体の精霊とメフィーの黒い鬼に襲い掛かっていく。
「「”古代剣術”――オールドスラッシュ!!」」
私とアムシェルが、ガーディアンキングのそれぞれ左右の脚の半ばまで斬り込ませる!
「「”古代剣術”――オールドブレイク!!」」
内側から炸裂させ、両脚を判壊!
「”二刀流剣術”――クロススラッシュ!!」
マリサの金と銀の刃は、盾で防がれてしまう!
「クソッ!!」
大剣をガードするも、そのまま吹き飛ばされてしまうマリサ!
「どきなさい! ”二重魔法”、”靈王魔法”――エナジーブラスト!!」
緑の雷のような物が収束し、ガーディアンキングに二つとも直撃した!
放ったのは……デボラか。
魔法の雰囲気や名前からして、”星屑魔法”のようなユニークスキルの類か?
「MPが……チ、”激情の法則”!!」
デボラから強力な光と衝撃波が迸り、ガーディアンキングに炸裂……する前に”古生代ポーン”が盾となって防いだ!
「”連結”!」
マリサが例のチート文字戦法を使用して接近するも、迎撃しようとするガーディアンキング――だったが、スゥーシャの銛が四肢に刺さって動きを一瞬止めた!
「ハアハア、ハアハア!」
ガーディアンキングの身体を、マリサが袈裟斬りにする。
「まず!」
アオイが拘束していた”古生代ポーン”が抜け出し、自らリリルの投げた剣に突き刺さった!?
「まずい、新手だ!」
ポーンが全て倒された事で、僧侶のようなタイプと馬面の騎兵が二体ずつ出現!
「もしかして、チェスがモチーフなのか?」
だとすると、他にルークが二体にクイーンが一体控えている事に!
「”抜剣”、”追放”、”暗黒剣術”――ダークネスブレイク!!」
「”二重魔法”、”聖水魔法”――セイントスプラッシュ!!」
アムシェルとスゥーシャにより、ビショップとナイトが一体ずつのみに!
『グォォォッ!!』
右側の上半身のみとなったガーディアンキングが剣を振りかぶり――強大な斬撃を放ってきた!?
「――シールドブロック!!」
”盾術”の防御特化、シールドブロックを使用し――”聖遺物の鞘盾”で耐える!
「――――クソ」
あまりの威力に盾が弾かれ、身体が暴威に呑まれてズタズタに……転がっていく。
「…………ッ」
身体が……自分の物ではなくなったような感覚。
痛みも暑さも冷たさも感じるのに、それが酷く他人事。
まるで、肉体はそもそも私では無いのだと諭されているかのような――――
「死ぬな、ルイーサ!! ”高周波再生”!!」
誰かの必死な叫びと、温かな光……強い耳鳴りも。
沢山の応援する、言葉にならない声援を掛けられているような――――まだ、私にはやらなきゃいけない事がある。
そう思った瞬間、身体と魂が今まで以上に一体化したような感覚を覚え、力が漲ってきた!!
「行くぞ――ヴリル!」
”ヴリルの聖剣”を”聖遺物の鞘盾”に収めた瞬間、二つの武具の形状が生まれ変わる!
「――”抜剣”」
二人の乙女が祈りを捧ぐ意匠が刻まれた”ヴリルの聖骸”へと生まれ変わった盾から、”ヴリルの祈りの聖剣”を抜き――”聖剣万象”による宇宙光を纏わせる!
『グォォォォォォッッ!!』
再び繰り出されるは、長大な斬撃。
それに対し、私は己が聖剣に十五文字を刻んで――正面から斬撃を切り裂いた。
「消えなさい――――”光輝剣術”――シャイニングブレイド」
宇宙と地上の光が融け合った聖なる刃を幾重にも振り下ろし――ガーディアンキングを、静かに光へと変え終える。
「……ルイーサ?」
リリルの声が耳に届いた瞬間、私の静かな世界は崩れ始め――意識が遠退いてい……く…………。




