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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第8章 邂逅のケンシ達

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272.栗鼠獣人のリリル

 私は、《日高見のケンシ》の中では刻める神代文字が少ない方。


 アテル様と出会って間もなく三文字刻めるようになったのに、それからまったく成長していなかった。


 なのに……ルイーサが吹き飛ばされたのを見た瞬間、私の中でわだかまっていた言いようのない感情が押し流され、義憤に駆られてしまう!



「よくもルイーサを――――赦さない」



挿絵(By みてみん)



 自然と、受け止められる青い奔流が増加したのが分かった。


 分かっていた……ルイーサ達は悪くないって、頭の中では分かってた。


 でも、あの時の恐怖が憎悪となって、切っ掛けを作ったアヤナとルイーサに対して向けてしまって……きっと、あの時ドサクサに紛れて逃げ出した自分の罪を有耶無耶にしたくて、ずっと固執し、私の成長を阻んでいたんだ。


「”跳躍”跳弾”」


 壁や柱を高速で跳び回り、古生代モンスターを切り刻んでいく!


 この戦法は、ルイーサの”瞬足”跳躍”を参考にした物。


 それを使うルイーサが格好良くて……憧れた。


 憧れへの裏切り……背徳感を覆い隠すために無意識に纏ったのは、憎悪という羽衣。


 ああ……私は、なんて醜いんだろう。


 この程度の女なのに、アテル様の寵愛を得ようとし、受け容れても貰って……本当に、ダメな女。


「……へ?」


 手にしていた”高周波岩の欠片刃”が形を変え――”高周波岩の煩悩投滅剣”に変わった!?


「名前だけじゃなくて、使い方も分かる! ――ハッ!!」


 文字を六文字維持したまま、右手の投滅剣を投げ付けて”古生代バット”の胸に突き刺す!


「”高周波滅”!」


 内部から武器の効果を使用し、神代文字の力も合わせて炸裂させた!


 とはいえ、胸部分をそれなりに爆ぜさせた程度で、行動不能に出来たわけじゃない!


「”高周波再生”!」


 左手の短剣からルイーサに赤茶の光を浴びせ、上位魔法なみの治療を施す!


「痛みが……これなら!」


 ルイーサが立ち上がる頃には、私の投げた投滅剣が”帰還”する。


 そして、古生代バットは石の拘束を解いて荒れ狂う!


 このステージに出て来る古生代モンスターは遺跡村に出て来る奴等よりも凶暴で、場所が狭いのもあって時間を掛けるほどに不利になる。


 時間を掛けて探索し、昨日の早朝にようやくネクロマンサーのメフィーと契約出来たけれど、五人だけでは例の条件を満たしてボス部屋まで行くのは厳しいと判断。


 もしかしたら、ディケイウルフも古生代モンスターの凶暴化も、観測者側の嫌がらせかもしれない。


「私が動きを止めるから、ルイーサがトドメを!」

「任せろ!」


 剣を盾に収めるルイーサ。


 悔しいけれど、今の私じゃルイーサのように九文字刻める気がしない!


「――”高周波滅”!」


 両方の短剣を投擲して石の翼部分に突き刺し、内部から赤茶のエネルギーを炸裂させてボロボロに砕く!


「”抜剣”、”瞬足”跳躍”!」


 九文字刻まれた、二人の乙女が装飾されている美しい剣を――”古生代バット”のお腹に突き込んだ!



「”光輝剣術”――――シャイニングブレイク!!」



 光が内部で派手に炸裂し、”古生代バット”を跡形もなく消し飛ばしてしまう。


「――ハアハア、ハアハア……さすがにキツいな」

「大丈夫か、皆!」


 追い付いてきたマリサ達を見たら……身体から力が抜けてきた。


 六文字は……私にはちょっと早かったみたい。


「成長できたみたいだね、リリル。ルイーサ達のおかげ?」

「まあね……あんまり認めたくないけれど」


 マリサに指摘されるの、ちょっとムカつく。


「マリサ、このステージってディケイウルフが出るの?」


 このゲームのオリジナル経験者だというマリサに尋ねる。


「ディケイウルフ? さっきの雄叫びは似ていたけれど……いや、あれは少なくとも五十ステージより上に行かないと出なかったはず」

 

 なら、観測者の仕業で間違いない。


 問題は、元々の配置なのか、私達への嫌がらせのために用意したのかということ。


「マリサ、少しルイーサ達を休ませたいんだが」


 私達が手に入れたかった隠れNPC、マクスウェルのフェルナンダが提案してきた。


「ここはボス部屋前まで安全地帯が無いから、交代で休ませる必要がある」

「私とフェルナンダがその見張りの任を担えば、その問題はないでしょう」


 そう言いだしたのは、ネクロマンサーのメフィー。


「隠れNPCは疲れ知らずですから」

「……構わないかな、フェルナンダ?」

「ああ、私もそのつもりだった」


 正直、助かった。


「もう七割くらいの所まで来ているし、出来れば今日中にボス部屋前まで行きたいな。そうなると引き返せなくなるけれど」


 マリサの目は、こっちに近付いてくるルイーサに向けられている。


「さっきは助かった、リリル。ありがとう」

「べ、別に……お、お互い様だし……」


 ルイーサが微笑んでくると……いつも私は――――顔あっつい!


「フーン、そうだったんだ~」

「なるほど、()()()()()()という奴か」


「……その顔、本気で止めて」


 マリサとアムシェルのしたり顔、マジで腹立つ!


「ん? どうしたんだ、二人とも?」


 気付いていない様子のルイーサに……私はまた、複雑な感情が芽生えるのだった。


「フン!」



●●●



「本気か、アテル?」

「同盟を結んだことで、互いに傷付けられなくなったんだ。折角の機会だし、全力をぶつけてみたい」


 アテルに模擬戦を申し込まれ、冒険者ギルド前の外に移動する俺達。


「まあ……良いか」


 サトミさんから貰った”ケラウノスの神剣”を左手に、”サムシンググレートソ-ド”を右手に握る。


挿絵(By みてみん)


「二刀流か」


 アテルはというと、形は少し違うけれど見覚えのある黒い石の直剣タイプと、紅の大剣……意匠がタマの”魔術師殺しの槍”に似ている。


 黒い石の方の剣は、俺の”サムシンググレートソ-ド”に似て、白い宝珠が同じ位置に。


挿絵(By みてみん)


「この剣は”アマテルの太陽剣”。君のおかげで、この姿を手に入れられた。感謝しているよ」


「俺のは、”サムシンググレートソ-ド”だ」


 ……向こうの方が名前、格好良くね?


 ――互いに構える。


「「……――――!!」」


 仲間達に見守られる中、互いの相棒に瞬時に十二文字刻み――剣をぶつけ合う!


「”煉獄魔法”――インフェルノ!」


 激突した直後に後退し、魔法を放つ!


「”魔斬り”」


 紅の大剣を輝かせ、紫の炎を切り裂くアテル。


「その剣、”魔術師殺しの剣”か?」

「見た目で気付かれたのかな? 魔術師殺し系統の武器は複数あるらしいから、別に不思議じゃないけれど」


 今度は、二刀を交互にぶつけ合う俺達。


 当たり前のように、互いに神代文字対応の武器から対応していない方の武器に神代の力を纏わせている。


「「――ハッ!!」」


 同時に右手の剣で突きを放つも、神代の力がぶつかり合い――互いに後方へと弾かれるッ!


「”神代の剣”」


 ”アマテルの太陽剣”に、青白い剣光を纏わせるアテル。


「”神代の剣”」


 俺も”サムシンググレートソ-ド”に剣光を纏わせ、三度剣戟を巻き起こす!


「”雷霆飛剣”!!」

「”裁きの太陽”」


 ”ケラウノスの神剣”の効果で雷の斬撃を飛ばしたけれど、”アマテルの太陽剣”から放たれた火球とぶつかり合い、どちらも消滅。


「”飛王剣”!! ”雷霆剣術”――ケラウノススラッシャー!!」


 ”ケラウノスの神剣”の効果により、装備している時だけ”雷霆剣術”を使える!


「武器交換――”天叢雲の神剣”」


 ”魔術師殺しの剣”を、禍々しさと清浄さが同居した黒剣に持ち替えた!!



「――――”氾濫調和の大蛇(オロチ)”」



 白い蛇が現れ、俺の二つの斬撃を受け消し……消えた?


「使う気は無かったんだけれど……今回はこの辺にしておこうか」

「……ああ」


 コッチの攻撃を、おそらく無条件で搔き消す能力を持つ剣……十中八九、素のSランク武器。


 アテル達と同盟を結び、決着を先延ばしに出来て良かったような……良くなかったような……ま、良いか。


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