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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第8章 邂逅のケンシ達

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260.付与の結晶体

「売店がやたら多いわね」


 下船後、おまもり島の港を離れてすぐに飛び込んできた光景に対するユリカの感想が……それだった。


「ここで買い物って出来るんですか? ジュリー様」

「一応、全部のお店で買えるはずだよ」


 ゲーム的には特に意味も無い食べ物とか、工芸品の類がほとんどだったはずだけれど。


 とはいえ、どこにオリジナルと違う要素を加えているか分からないから、念のため一軒一軒確認した方が良いかもしれない。


「……格好いい」


 ユリカが、とある売店の前に釘付けになっている。


 売られているのは、剣などの武器を模したキーホルダー。


 金や銀、黒や赤など多種多様。


 私も格好いいとは思うけれど、さすがに幼稚すぎるような……。


「おじさん――これ全部、一つずつ頂戴!」


「「「「へ!?」」」」


 ヨシノを含め、全員がユリカの大人買いにドン引きしてしまった!!


「一つ1000Gだから、全部で70000Gになるよ!」


「そんなに!?」


 いや、一円を1Gと考えれば、むしろ妥当な値段だとは思うけれど!


 というか、オリジナルにこんなお店あったっけ?


「ユリカ……さすがに考え直した方が……」

「だって、ここのキーホルダーのデザイン、すっごく私好みなんだもん!」


 意外と少年っぽい趣味の持ち主だったのね、ユリカって。


 そう言えば前に、この黒いキーホルダーと雰囲気が似た”陰惨なナイフ”を、イカすとか言って欲しがっていたような……。


「大丈夫、金ならある!」


 そりゃ、今の私達にとって70000Gなんてはした金だけれども!


「サキ、あのキーホルダーって……」


 テイマーの隠れNPCに尋ねる。


「なんの効果もありませんね。お金の無駄遣いかと」

「やっぱりか」


 今止めないと、またこんな風に浪費する癖が付きそう。


 などと話しているうちに、支払いを済ませてしまうユリカ。


「気前が良いね、嬢ちゃん! 気に入った! 特別に、俺の家の秘伝の技術で作った、結晶体をくれてやる!」



○ランダムで”天雷の結晶体”を手に入れました。



「言っておくが、今回だけの特別だぜ!」

「……へ?」

「なにこれ?」


 ユリカのチョイスプレートを見て、驚いてしまう私。


「武器に特定の属性を付与できるアイテムですね。使用可能な武器は限られ、高いランクほど使用できなかったはずです」

「しかも、完全ランダム要素でしか手に入らない珍しいアイテム!」


 サキの説明に、思わず興奮してしまう!


 私の”金星球の指輪”に、天雷の二属性は付与可能だったはず!


「ユリカ、そのアイテムを譲って!」

「うーん……これってさ、一種類ずつ全て購入したから貰えたのよね?」

「ええ、たぶん」


 なんか……悪い予感が。



「じゃあさ、ジュリーも同じように全種類買ってみてよ。一人一回だけみたいだし、ランダムって言ってたから、”煉獄の結晶体”とかも手に入るかも」

「へ?」


 私が……七十もこんなキーホルダーを? ……へ?


 結局、パーティーメンバー全員が一回ずつ、計三百五十ものキーホルダーを買ってしまった。



○ランダムで”煉獄の結晶体”を手に入れました。

○ランダムで”蒼穹の結晶体”を手に入れました。

○ランダムで”颶風の結晶体”を手に入れました。

○ランダムで”古代の結晶体”を手に入れました。



 なんだろう…………大切ななにかを失ってしまった気がする。



●●●



「遺跡島……か」


 アヤナ、アオイ、フェルナンダ、スゥーシャと共に第十九ステージの島に辿り着いたわけだが……。


「港から離れると、いつぞやの遺跡村みたいな雰囲気ね。こっちは島全体が山? 丘みたいになってるみたいだけれど」

「なんか……つまんなそう」


 アヤナとアオイは、この古代遺跡のような場所に興味が湧かないらしい。


「ホテルにチェックインしないと、遺跡の探索許可って降りないんでしたよね?」


 白人魚のスゥーシャが、マクスウェルの隠れNPCであるフェルナンダに尋ねる。


「正確には、島の奥の遺跡だな。そこを右に進んだ先にあるはずだ。順当ルートだと、祭壇とホテルの間にある遺跡にしか入れない。ちなみに、どちらの遺跡もボス部屋前まで続いていて、どちらかしか探索報酬を手に入れられないからな」

「で、旅行者である私達だけが入れる遺跡の方が、良い物が手に入ると」

「向こうはランダム性が強くて、こっちは幾つかの選択肢から自分達にあった物を選べるっていうくらいらしいけれどな」


 そのうちの一つに、私に都合の良い聖剣の武具があるらしい。


「では、まずはホテルに……誰か来ますね」

「あれは……」


 遺跡側からやって来た一団の中に、栗鼠の獣人……リリルの姿が!!


「……こんな所で会うなんてね」


挿絵(By みてみん)


 彼女に睨まれた瞬間、罪悪感で萎縮してしま自分がいた。


「リリル~、勝手な真似はダメだぞー」

「分かってるわよ、マリサ」


 女性にしては男勝りというか、低い綺麗な声の女性が一歩前に出て来た。


「黒昼村で遭ってはいるんだけれど、一応初めましてと言っておこうか。私はマリサ。このパーティーのリーダーをやっている者だよ」


 橙味のある茶髪のショートカットの美少女……動きやすそうな黒が多目のスポーティーな格好で、両腰に同じ形の剣を着けている。


 機動力重視の双剣士って所か。


「そんなに身構えなくて良いよ、《龍意のケンシ》。私達《日高見のケンシ》は、暫くそっちとは戦わない方針だから」

「……どういう事だ?」


 コイツら、メルシュを狙っているんじゃ……。


「観測者の標的が分散された方が、お互いに好都合だろう? ()()()()()()()の方がメリットが大きいのかは、定かじゃないけれどさ」


 言っている意味は理解できるが……。


「それに、私達は探索帰りで疲労困憊。つまり、今争ってもそっちの方が圧倒的に有利ってわけだ」


 確かに、五人中四人は身なりが汚い。


 唯一そうでもない女性は、オドロオドロシイ黒い羽で編まれたようなローブと、髑髏の杖を手にしていた。


「それより、ホテルでちょっと話さないか? 相談したい事があるんだ」

「マリサ?」

「私がリーダーだ。合流までは私に従って貰うぞ、リリル」

「だから、分かってるって……」


 リリル……やっぱり私達のことを。


「それで、返答は?」

「ああ……分かった。構わないか、みんな?」

「……ええ」

「良いよ」

「うむ」

「分かりました」


 こうして私達五人は、マリサ達と共に宿泊予定のホテルへと向かう事となった。



●●●



「ようやく到着ね~」


 サトミが、甲板上でいつもの雰囲気を装って居るのが本当に怖い。


 もうすぐお昼という所で、船が入港の放送をしてきた。


 本来なら朝には到着するはずだったのに、突発クエストで足止めを食らってしまったため、五、六時間くらいの遅れが出ているはず。


 だから、他のルートのみんなはとっくに島に上陸しているはず。


「これを着けた状態で、”氷炎魔法”を試してみようと思っていたのに」


 昨日メルシュ達が見付けたという”氷炎女王の外套”、Aランク。


 氷炎系統の攻撃を強化してくれるらしく、メルシュがトゥスカと一緒に転移する前に渡してくれたもの。


「コセは……無事よね」


 奴隷契約しているメルシュとトゥスカがなんともなかったんだから、コセは無事だとは思うんだけれど……五体満足かまでは分からない。


 コセのことだから、自分よりクマムちゃんを優先して守るだろうし。


 そういう意味では、クマムちゃんの心配はしていない。


「クマムちゃんとコセ……上手くいったのかな?」


 なんでか、クマムちゃんとは上手くいって欲しいって思っちゃってる自分が居る。


 いつもはあんなに嫉妬深いのに。


 でも……誰かの幸福を願うって……なんか気持ち良い。


 セックスとは全然違う、心が温かくなるようなジンワリとした幸福感が満ちてくるのよね。


「……うわ」


 船着き場近くに、武装したプレーヤーと思われる奴等が集まって……こっちを見ている。


「待ち伏せみたいですね、サトミ様」


 サトミに絶対服従している兎獣人、リンピョンも気付いたみたい。


「あんなに分かりやすくなんて、本当におバカね~」


 なんかここ数日、サトミが日に日に情緒不安定になっていっている気がして怖い!


 特に、コセとクマムちゃんと二人っきりで脱出したと聞いてから、より顕著になっている気がするんだけれど……。


 コセ……色んな意味で早く戻ってきて!


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