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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第7章 本質を観る力

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243.目の毒と酸っぱいハチミツの味

「……50000Gもするのですか。戦闘に使えない物にこれは……なんだか勿体ない気がします」

「まあ、たまには良いじゃないか。お金は有り余ってるし」


 水着に大金を出すことを渋るトゥスカを説得する。


 そんなトゥスカ手にあるのは、フリル付きの黒い大人なビキニだ。


 トゥスカなら白や青、赤でもピンクでもなんでも似合いそうだな。


 俺はというと、ブーメランパンツは恥ずかしいため、太股を半ばまで覆うタイプを選んだ。


「それにしても……大分筋肉が付いたな」


 鏡に映った自分を見て、妙な気分になる。


 この世界に来るまでは、ほとんど筋肉なんて無かったのに……うっすらとシックスパックっぽいラインが出来ていて、大剣を振るっているからか腕と肩のメリハリが……地味に凄い。


 脚も、膨ら脛辺りは凄く硬そうだな。


「ダンジョン探索で自然とこうなったのか、Lvアップの影響なのか」


 筋肉ダルマみたいになるのは、さすがに嫌だな。あれは魅せるための物で、実戦向きな筋肉の付き方とは思えないし。


「お待たせしました、ご主人様」


 購入し、着替えを終えたトゥスカが声を掛けて……予想以上の爆発力だった。


挿絵(By みてみん)


 やっぱり、裸とは別の魅力があるな!


「い、行こうか」

「……フフ、買って良かったかもしれませんね♡」


 なんだか、弱味を握られてしまった気分だ。


 水着売り場を出て、すぐ横の巨大プールへ。


 プールの側面も底もガラス張りで、正直怖い。


「上手いぞ、モモカ。そう、力を抜いて、水を後ろに流すように脚と腕を動かすんだ」


 メグミが、モモカの泳ぎの指導をしてくれていた。モモカはガラス張りでも平気そうだな。


 というか、十中八九俺が教えるよりメグミの方が上手い。


 ……メグミの……結構大きいな。


「どこを見ているのかしら、コセさんは♪」


 背中に胸を押し付けてきたのは……サトミさん。


「あの……お願いですから、そういうのやめてください」


 肌と肌を直接だと、余計に意識してしまうから!


「サトミ様、お持ちしましたよ!」


 そう言って現れたリンピョンの手には、飲み物が収められた……皿付きの小さな浮き輪?


「プールの中で飲み物を飲めるなんて、贅沢よねー♪」


 正直、そんな物必要なのかと疑問に感じるのだけれど……プールに溢したらどうするんだよ。


「向こうで食べ物も売ってましたよ」


 プールの横には売店が並んでいて、NPCが売っているらしい。


 ……なんか、宝石島に着くまで部屋に籠もっていたい気分になってきた。


「ヘイ! 次を寄こしな!」


 クリスはというと……水着姿でサングラスを付け、機械で撃ち出されたフリスビーを銃で撃ち抜いていた。


 アイテムの銃ではなく、俺達の世界に存在するようなライフル銃……どっかで貸し出されてるのか?


 この船、やっぱり世界観的におかしくね?


 メルシュは……売店で勝った物をテーブルでモクモクと食しておられる。


 俺も、先に軽く食べようかな。


 唐揚げが美味そう――


「あん!? ……ナオさん……その、おっぱい揉むのやめてください……ん♡」

「グヘへへへ! クマムちゃんの生おっぱいだぜぇぇ!」


 ――――誰かに気付かれる前に、急いでプールに飛び込む!


 ナオのバカヤロウ!!


 精神を落ち着けるため、俺は暫く一心不乱に泳いだ。



             ★



「……疲れた」


 昼近くまで泳いで、身体中の筋肉が張っている感じだ。


「大丈夫か、コセ」


 目の毒から逃れるためにプールから離れ、喫煙室で休憩していると……メグミが飲み物を持ってきてくれた。


「ありがとう」


 ハチミツ風味の酸っぱい飲み物……美味しい。


「モモカ、どんどん泳ぎが上手くなってたな」

「疲れて眠っちゃったけれどな。今はクマムが様子を見てくれてるよ」


 たぶん、ナオから逃げる口実が欲しかったんだろうな、クマム。


「コセと一緒に泳ぎたかったみたいだぞ、モモカ」

「ああ……それは、悪いことをしたな。まあ、三日もあるんだし、そのうち機会もあるだろう」


 正直、泳ぐ意外で有意義な時間の過ごし方が思い浮かばないし。


「……なあ、コセ……少しだけ、もう少しだけ……サトミに優しくしてくれないか?」


 メグミの口から、最近少しだけ気にしていた事を言われる。


「……一応、最低限の礼儀は弁えているつもりだけれど」

「そうだな……コセの振る舞いは紳士的で、節度ある男女の関係を保とうとしているように思う」


 遠回しに褒められてる? それとも嫌味?


「ただ……サトミは、お前ともっと深い関係になりたいんだよ」


 ……サトミさんと、そういう関係になるのは……。


「アイツは、コセが思っているほど強くない。気付いているかもしれないけど、サトミは……自分を守るために暴走する時がある」


「ボス戦直前に、リンピョンの首を絞めた時のように?」

「ああ……サトミは良い奴さ。ただ、抱えたトラウマに、無意識レベルで翻弄されて居るんだ」


 それは、なんとなく感じていたことではあるけれど……。


「それを他人がどうにかしてあげられると考えるのは、それこそ傲慢なことだと俺は思うけれどな」

「普通はそうだろうが、簡易アセンションを成功させたコセなら、サトミのトラウマを和らげてやることは出来るはずだ」


 簡易アセンション……あの時の、彩藍色の神代文字を刻んでいた状態のことか?


「だから……もっと、サトミと向き合ってあげて欲しい」

「メグミは……メグミは、俺と向き合ってはくれないのか?」


 メグミの目を見詰めながら尋ねる。


「……コセ?」

「俺にだって選ぶ権利はあるし、メグミとは向き合えると……自然に思えてるんだ」


 意識し始めていた相手に別の女を宛がわれたからか、少しムキになってしまっている自分が居た。


「わ、私は……」


 立ち上がって、彼女の腕を軽く掴む。


「何人も妻が居るような男だけれど……筋は通らないけれど…………メグミが欲しい」


 なんで俺は、こんなに積極的になっているのだろうか。


「私は……元レプティリアンだぞ?」

「その事をどう受け止めるべきかは分からないけれど……少なくとも、今は違うだろう?」


 我ながら、狡い言い方だと思う。


「コセ……私は……」


 メグミさんが顔を僅かに近づけてきた事で、彼女の気持ちを察せられた気がした。


「……ん」


 優しく唇を奪い……軽いキスをしただけで離れ――メグミの方から頭を掴んで、熱烈なキスを仕掛けてきた!


「ん……ん……んっ♡ ……ずっと……我慢してたのに……お前のせいだからな♡」


 メグミの憂い顔と荒れた呼吸に、感情が昂ぶってくる!


「責任……とって貰うんだからな♡♡」


挿絵(By みてみん)


 ポニーテールにしていた髪を解き、野獣と化したメグミに……俺は押し倒されたのだった。


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