220.出会いの予兆
「ダンジョン攻略なんだけど、数日ほど休もうと思ってるんだけど……どうかな?」
クリスとメグミの件が片付いたと思ったら、メルシュがいきなり提案してきた?
「まあ、俺もまだ身体が怠いし、そうして貰えると助かるな」
「なにか理由が?」
ジュリーがメルシュに尋ねる。
「あれだけの戦いの後だし、新しい装備の習熟を皆にさせたいって言うのもあるんだけれど……」
昨日の突発クエストで、パラディンリザードマン達が使っていた武具か。
「それとは別に、昨日の朝にレギオン加入の申し込みが家のコンソールの方に届いてたんだよ」
「レギオンの加入? わざわざ、俺達のレギオンに入りたいって奴がいんのか? 結成後のレギオンに入る場合、一度入ったら自分の意思では抜けられないんだろう?」
ザッカルが、驚きと呆れを同時に顔に刻んでいた。
ああいう下品な表情でも可愛いと思えるのだから、愛って凄い。
「うん、その通りなんだけれど……それも二カ所から来てるんだよね」
「もしかして……一つはリョウさんのパーティーですか?」
タマの発言に、やたら俺に親しげだった同年代の顔を思い出してしまう!
「うん。今は七人で行動しているみたい」
「……あれから増えたんだ」
「ある意味さすがですね」
ナオとノーザンが呆れている。
そう言えばこの二人、第四ステージの伝統の山村までは、リョウ達と行動してたんだっけ。
「しかも……そのうちの一人は、アヤみたいだよ」
「……え?」
「サトミ様?」
アヤって、競馬村までサトミさん達と一緒に行動してたショートボブの子だったか?
まさか、サトミさんがあんなに動揺するなんて。
「それで、二カ所から来てたって事は、他にも申し込んで来た方々が居るのですか?」
クマムがメルシュに尋ねた。
「うん。三人組みたいなんだけれど、私が知らない人しか居なくて、なんでわざわざうちのレギオンに申請してきたかは謎なんだよね」
レギオンに自ら申請すれば、大きなデメリットを被るにも関わらずか。
「マスターさえ良ければ、今日にでも会ってみない? どっちもまだ第九ステージに居るみたいだから、特に脅威にはならないと思うし」
「……そうだな、一度会ってみようか」
昨日のような脅威がいつ起こるか分からない以上、これ以上レギオンメンバーを増やしたくないなんて言ってる場合じゃない。
それに……なんとなくだけれど、会ってみた方が良いと、自然に思える自分が居るんだよな。
●●●
「リョウ様、コンソールに《龍意のケンシ》からメッセージが届きました!」
長いカーブがかった白髪と茶髪の混じった神秘的な女性の鹿獣人、エレジーさんが、”白亜の屋敷”のリビングに駆け込んできた!
「それで、ギルマスはなんて!?」
始まりの村で、僕等を指揮して導いてくれたとんでもないお人!
「15時に会えないかって。たぶんコトリさん達と一緒に、全員でですって!」
「よし!」
これで、久し振りにギルマスに会える!
「アヤ、具合が悪そうだけれど大丈夫?」
「うん。ありがとう、シホ」
アヤさん、競馬村で僕達と行動を共にするって決めてから、サトミさん達のことを気にしていたみたいだったからな。
「大丈夫ですよ、アヤさん。僕達が付いてますから!」
「う、うん……あんがと、リョウ」
アヤさんて、僕が近付いて話すと、いつも顔が赤くなるんだよな。
「リョウさん、急にそんなに近付いたらアヤが困っちゃうでしょ! はい、離れた離れた!」
黒髪ショ-トの魔法使い、シホさんに身体を押される。
「そういう物なんですか?」
皆からしょっちゅう似たような事を言われるけれど、その辺のさじ加減がよく分からないんだよな。
「それにしても……レギオンか! ギルマスとチームを組めるなんて、夢みたいだ!!」
「……エレジー、やっぱり私達の最大の敵って……」
「ええ、残念ながらそのようですね、シホさん……」
なんだか二人が……僕を凝視している?
●●●
「おっしゃあああ!! もうすぐ、ギルマスに逢えちゃうよぉぉぉぉ!!」
「「コトリ、うるさい」」
まったく、うちの元気娘はいつもいつも騒々しい!
ホワイトゴールドに染めたショ-トヘアーの、万年元気娘。
小さい子が、そのまま大きくなったみたいな奴。
まあ、年の割にはチビだけれど。
「それで、マリナは良いのですか? 私はギルマスに恩義を感じていますので、レギオンに入ることになんの問題もありませんが」
馬獣人のケルフェが、慇懃な口調で尋ねてきた。
「ええ……知らない仲じゃないしね」
……コトリとケルフェが凄い凄いと事あるごとに言っていたギルマスって言うのが、私の知っている巨勢 雄大の事だって、第九ステージのレギオンリーダーの写真を見るまで気付かなかったけれど。
私が始まりの村に辿り着いたのは、アイツが活躍したって言う突発クエストが終わった後だったから。
二人がギルマスの本名を知らなかったから、一昨日までユウダイだと気付きようが無かった。
「アイツ……私の事、今でも憶えてんのかな」
写真の顔……暫く見ない内に、だいぶ大人っぽくなってたし。
”ウメガイの光剣”を見ながら、よく笑っていた頃のアイツを思い出していた。
6章完結です!




