214.泰然なる高潔竜の雄叫び
「ハッッ!!」
瞬発的な気合いの込めにより、超速で斬り掛かってきたドラコニアンの剣撃を正面から弾く!
《下等種族風情がッ!!》
「”神代の剣”!!」
”サムシンググレートソード”に青い刃を纏わせ、カウンター狙いで斬り込む!
《貴様ぁぁぁ!!》
頬の辺りを、少し斬っただけで躱されてしまう!
奴の方が圧倒的に速いため、俺はカウンターを狙うしかないって言うのに。
「その見下す発言。以前に会った、レプティリアンを名乗っていた奴等と根本的に同じだな」
《――――ッッ!!! 貴様……あんな雑種共と俺達ドラコニアを……一緒くたにしたのか? あ? ――――ふざけるなぁぁぁぁッッ!!!》
「どっからどう見ても同じだろう」
強さだけは、理不尽なほどに違いすぎるけれどな!
「”壁歩き”――”跳躍”!!」
足の裏を引っ付け、本来なら転んでしまうほど姿勢を低くし、”跳躍”で前へと高速で跳ぶ!
「”飛王剣”!!」
《図に乗るなッ!!》
高速で左に移動するのが――かろうじて見えた!!
「”瞬足”!!」
スキルを利用して急な方向転換をし、食らい付いていく!
《ッッ!?》
「ッ!!?」
もう少しでグレートソードをたたき込めると言うところで身体が一瞬引っ張られ、機を失う!!
すぐに鎧の光を弾かせて吹き飛ばした物の、一瞬でも動きを阻害されると厄介だな!
《か、下等種族の身体を使いながら……ライトワーカーめ!! 本来地球に干渉が許されない貴様ら銀河連合が、薄汚い手を使ってまで俺達の邪魔をするなッ!!》
「お前達がルールを破って、地球の原生生物に手を加えたのがそもそもの始まりだろう……私も、人のことは言えないがな」
メグミさんが横に並ぶ。
どうやら、クリスに治療されて動けるまでに回復したらしい。
「コセ……色々聞きたいことはあるだろうが、今は力を合わせて欲しい」
「メグミさん……メグミなら、自然に信頼できるから問題ない!」
「……変な奴……でも、ありがとう」
――競馬村でレプティリアンと戦った時以来の、神代文字が共振する感覚が込み上げる!
トゥスカの時のように、メグミの心と繋がっていく。
「これが……高次元生命体の共心能力か!」
メグミが歓喜の声を上げると、”泰然なる高潔の哮り”に神代文字が九文字刻まれた!
《裏切り者が……高次元に至ろうと言うのか!!》
「生まれながらに隷属の因子を刻まれた、シーカー以外のレプティリアンには、決して到達できない領域。いや、たとえシーカーであっても、低周波に順応しすぎて……いずれは滅びる運命なのだろうな」
《黙れ!! 地球人如きが、我々を蔑むなッ!! 貴様らとて同様であろうに!!》
「黙るのは貴方の方です、野蛮なるレプティリアン」
冷徹を思わせる空気を携え、流暢な日本語で語り出す……クリス?
「世界中で子供の誘拐を助長させ、人攫いを専門とした犯罪組織を作らせた者達の元凶。これまで犠牲となった何億人もの人達の無念――ここで晴らさせていただきます!」
これが、クリスティーナという人間の本質。
《金髪に碧い瞳の白人……ククク、レプティリアンの遺伝子が色濃く受け継がれている証ではないか》
「雑種とやらの末裔であることは否定しません」
「クリスも、色々隠していた事が多そうだな」
「私も、メグミさんと一緒に色々話させていただきます。オケ?」
「ああ、オーケーだ!」
今のクリスは、信用しても良さそうだ。
猫を被っていたから、嫌だという認識が強かったのかな? 俺は。
《――ライトワーカーも裏切り者も、纏めて殺してやる――殺してやるぞッ!!》
「”薔薇魔法”――ローズフラッシュ!!」
クリスが放った薔薇の吹雪を、赤い石剣の一閃で吹き飛ばし――突っ込んできた!
「”竜技”、ドラゴンブレス!!」
”ドラゴンの顎”から放たれた事で、メグミの攻撃が強化される。
《それがどうしたッ!!》
また、見えない壁に防がれる!
「これならどうだ!」
”泰然なる高潔の哮り”から、神代文字のエネルギーが流れ込んで――ドラゴンブレスの威力が一気に増強された!!
《ガアアあああああッッッ!!!?》
障壁を破り、左肩を負傷するドラコニアン!
「”瞬足”!」
俺は二振りの剣に九文字刻んだまま、斬り込む!
《図に乗るなと言ったぞォッ!!》
超速の横振りを咄嗟に剣で受け――吹き飛ばされるッ!!
「”薔薇魔法”、ローズレーザー!!」
《鬱陶しい!》
見えない壁でレーザーを防ぎながら、クリスとの距離を詰めていく!
「くッ!!」
《弱者は、さっさと消えろ!》
「”竜光弾”!!」
メグミが、クリスを援護しようとする!
《はッ!!》
「キャアアアアあああああッッ!!」
”竜光弾”が不自然に逸れて、クリスのガードした剣にぶつかって吹き飛んでいく!?
「しまった!」
《さすがは下等種族! 知的生命体でありながら同族で殺し合うのは、宇宙中探しても貴様らくらいだぞ!》
「――いい加減に黙れ!! ”竜剣”!!」
青緑の剣を出現させ、ドラコニアンへと飛ばすメグミ。
俺は、彼女を信じて駆け出す!
●●●
「”回転”――ハイパワーブレイド!!」
《それがどうした!!》
念能力で、”竜剣”を止めに来た!
「”拒絶の腕”、”回転”!!」
もう一度緑の巨腕を呼び出し、叩き込む!
《いい加減にしろ!》
拒絶の腕も止められた上、私の身体にまで不可視の力が及ぶ!
「――”拒絶領域”!!」
念能力を吹き飛ばし、踏み込んで”泰然なる高潔な哮り”の砲身を――腹に翳した!
《きさ――》
「――”竜光砲”ッ!!」
TPと神代文字の力を目いっぱい注ぎ込んで、ほぼゼロ距離でぶっ放す!!
反動で、私の身体が後退した。
《がぁ……貴様ぁぁぁ》
「ハアハア、しぶとい!」
念能力で、最大限に威力を減衰させたか。
おかげで、腹の血肉を多少ぶちまけさせた程度に留まってしまった――だが!!
「――クロスブレイク!!」
コセが回り込んで、剣を交差させながら強烈な衝撃を叩き込んでくれた!
《き、貴様らはッ!!》
左腕は損傷させたが、念能力とあの赤い剣で耐えきったか!!
だけれど――コセの奮戦を見て、私の焦燥は消えている。
宇宙最強の戦士が相手であろうと、負ける気がしない!!
《――オアアアアッッ!!》
「がああッッ!!!」
一瞬で”竜剣”と巨腕を斬り砕かれ、肉迫して振り下ろされた剣を――両腕の盾で間一髪防ぐ!!
――神代の力を発していない”ドラゴンの顎”に、罅が入っていく!?
「メグミ!!」
《引っ込んでいろッ!!》
コセを念による衝撃波が何重にも襲い、距離を離されてしまう!
それだけ、コセを恐れている証!
《まずは、愚かなるシーカーの転生者。貴様から死ね!! ひ弱な地球人に転生したことを恨みながらな!!》
「私は、自分が地球人に転生した事に――感謝すらしているんだ!!」
こうして、他者と深く心を通わせ、闇の勢力最強であるドラコニアンに正面から挑んでいることを――誇らしくすら思っている!!
「かつての我が同族が生み出した罪、お前を葬ることで――少しは清算して見せよう!!」
”泰然なる高潔の哮り”が輝き―――細部が変化し、砲身とは真逆の位置に竜の頭の意匠が刻まれ、そこからメタリックレッドの鋭い二本の牙が生える!!
「”深淵盾術”、アビスバニッシュ!!」
《まだ抗うか!!》
剣を弾き上げ、生まれ変わった”泰然なる高潔竜の雄叫び”を反転させ、牙の方を前面へ!!
今なら、念能力のほぼ全てをコセに集中させているはず!
「”高潔竜の雄叫び”!!」
竜属性攻撃を、ランダムで1~4倍に高める効果を使用!!
「”竜爪術”――ドラゴンブレイズ!!」
赤々とした爪に竜と神代文字の力を結集し――アルファ・ドラコニアンの胸を、大きく引き裂いた。




