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20.奇跡を起こす者達

『出来るものなら、やってみせろ!!』


 無駄な攻撃は出来ない。


 一撃一撃に、最大限の効果を発揮させる!!


 黒鬼が跳びあがり、落下してきた!!


『爆裂脚!!』


 眼鏡女が吹き飛ばされた時と同じく――いや、それ以上に地面が爆ぜ、クレーターが生まれる!!


 直撃は躱すも強烈な衝撃波に襲われる――けれど、大地の盾で余波を流しながら突撃!


「ハイパワープリック!!」


 エネルギーを纏った突きを、脇腹に食らわせた。


『貴様……小賢しい!』


 ”魔炎”が迫るなか、”瞬足”の勢いで後退――”グレートソード”を引き抜きながら逃れる。


「アイスフレイムランス!!」


 青い炎の槍が、俺が傷付けた黒鬼の脇に直撃し、凍らせていく。


『グオオオオオオッッッ!!』


 ”魔炎”を俺への攻撃に使ったため、眼鏡女の”氷炎魔法”を防げなかったようだ。


「ご主人様、勝てそうですね」


 トゥスカが傍に来て、ヒールを掛けてくれる。


 巻き起こった衝撃波により、身体中に地味にダメージを負っていた。


 “超頑強”があってもこのダメージか。


「いや。俺のさっきの攻撃、あまり深くは入っていないんだ」


 グレートオーガの身体を容易く切り裂いた”グレートソード”に”大剣術”を乗せて攻撃しているのに、大してダメージを与えられていない。


 ……やばい。


『もっと抗え、冒険者共!!』


 黒鬼が、姿勢を低くしながら迫る。


「私が止めます……ガードストップ!!」


 ”ビッグブーメラン”の腹で右拳を受ける直前に、”盾術”で動きを止めた!!


 俺の奥さん、凄い!


「ご主人様!!」


 止めていられるのはごく僅か。黒鬼の長く伸びた姿勢の都合上、脇にもう一度攻撃している余裕は無い。


 トゥスカの背後から右に抜け、急所になりそうな首にグレートソードを振り下ろす!


「ハイパワースラッシュ!!」


 どうだ!!


「――硬すぎる!」


 目いっぱいの振り下ろしからの一撃だったのに、数センチしか切れていない!


 黒鬼が動き出し、トゥスカのブーメランを右裏拳で弾いてしまう!


『まずは一匹』


 黒鬼の左拳がトゥスカに迫りそうになったとき――――身体の奥底でなにかが弾けた!!


「うおおおおおおッッ!!」


 ”グレートソード”を捨て、”グレートオーガの短剣”を抜きながら左腕に体当たり!!


 “壁歩き”で突撃力を上げた状態で“瞬足”を発動――しながらの体当たりにより、黒鬼の体勢をなんとか崩す!


『貴様!! ――グァぁぁぁぁぁぁあああッッ!?』


 奴の左眼に、深々と短剣を突き刺した。


「トゥスカ!」

「パワーキック!!」


 意図を察したトゥスカの跳び蹴りが、”グレートオーガの短剣”の柄頭を踏み蹴り――より深くへと押し込む!


『きッ、貴様らぁぁぁぁッッッ!!』


 脳に届いていても良さそうなものを、まだ倒れないか!


 黒鬼が短剣を引き抜き、無造作に捨て去る。


『ここまで……追い詰められるとはな!』


 俺は”グレートソード”を、トゥスカも”ビッグブーメラン”をさっさと拾い、構えた。


 眼球はともかく、身体が硬すぎる!


 もう少し、コイツに有効な攻撃手段は無いの――そう言えば、あの硬そうゴーレムを一撃で倒せたのはなんでだ?


『インフェルノ!!』


 再び紫の炎を出現させる黒鬼だが、さっきまでの”魔炎”と違う?


「ハイパワーブレイク!!」


 飛んできたインフェルノを、”大剣術”の衝撃波で消し去る!


 反動で身体がビリビリと震え、動きが止まってしまった!!


『爆裂拳!!』


 狙いをわざと俺から外し、地面を爆ぜさせ――その衝撃による攻撃を仕掛けてきた黒鬼!


「ぐう!」

「ご主人様!!」

『引っ込んでいろ!』


 爆発に巻き込まれた視界の片隅で、トゥスカが盾ごと殴り跳ばされるのが見えた!!


「――お前ぇぇぇぇッ!!」


『あの女もだが、お前は危険すぎる。ああは言ったが、俺が倒されるなど本来……あってはならんのだ!』


 知るか、んなもん!


「“氷炎魔法”、アイスフレイムバレット!!」

『インフェルノカノン!』


 不意打ちで放たれた青い炎の散弾を全て飲み込み、眼鏡女の横を紫炎が吹き飛ばした。


『貴様はもういい。大人しくしていれば、これ以上危害を加えず、奴隷に堕としてやる』

「……クッ!!」


 悔しがりながらも、眼鏡女が諦めたのが見えた。


 勝手に諦めるなんて――本当にどこまでも迷惑な女だ!


「ぶっ殺す」

『させん!!』


 黒鬼が迫る――また、上段からの腕の振り下ろし。


『爆裂拳!!』

「――パワーニードル」


 脚の捻りだけで躱し、目前に迫ってきた胴体に”グレートソード”の切っ先を向ける。


『が……ああ……』


 あの硬かった身体を、いとも容易く貫いていた。


「”針術”にはこういう利点があったのか。知らなかったよ」


 それに、さっきから派手に爆発を起こしていた攻撃。どうやら、拳や脚をどこかに直撃させないと発動出来ないらしい。


 先程からずっとそうだった。


 でなければ、トゥスカの”盾術”によって動きを止められる事は無かったろう。


『この段階で……”針術”を所持していたか……インフェルノ!!』


 自分ごと紫炎を放ってきたため、”グレートソード”を刺したまま”瞬足”で回避。


 同時に、落ちていた血だらけの”グレートオーガの短剣”を回収する。


『ぐうう……やはりお前は……ここで仕留めねば。貴様は……デルタがもっとも恐れる(たぐい)の人種だ!』

「知るか」

『丸腰で強がるな!! インフェルノ!!』


 ”瞬足”でインフェルノを回避。


 マントで隠しているのもあり、短剣を拾った事に奴はまだ気付いていない。


『貰った!』


 拳を垂直に打ち下ろし、再び衝撃をぶつけてきた。


 大地の盾を出現させ、上手く踏み台にする!


 衝撃破を飛び越え、黒鬼の真上へ。


『今度こそ!』


 黒鬼が再び拳を打ちだそうとする。


「パワーブーメラン!!」

「アイスフレイムカノン!!」

「サンダーランス!!」

「パワージャベリン!!」


 トゥスカのブーメランが奴の顎を打ち据え、眼鏡女の魔法が腕を凍らせ、誰かの雷が黒鬼の右脚に突き刺さって膝を付かせ、青い槍が左脚を地面に縫い付ける。


 俺は、攻撃のタイミングを外した黒鬼の正面に降り立った。


「パワーニードル」


 短剣を黒鬼の腹に突き刺し、刺さったままになっていた”グレートソード”の柄を掴む。


『グフッ!! ……この程度では、俺は!!』

「――クロススラッシャー」


 交差した状態で突き刺したグレートソードとグレートオーガの短剣で――”二刀流剣術”を発動した。


 内側からなら、耐えきれないだろう!!


『本当に……この俺がああぁぁぁ――――――』


 胴体が四散し……黒鬼が、光になって消えていく。


「……ダンジョンに入るつもりだったのに、とんだ災難だ」


 今日はもう、動きたくない。



            ★



「トゥスカは大丈夫か?」

「ご主人様こそ」


 互いにヒールを掛け合っていた。


「あの……ありがとう」


 眼鏡女が近付いてきて、殊勝にも感謝を述べる。


「……巻き込んで、ごめんなさい」

「まったくだな」


 けれど、収獲は予想以上。



○戦士.Lv11になりました。パーティー最大数プラス1(リーダーの時のみ適用)


○戦士.Lv12になりました。サブ装備数プラス2・同種武器変更可能。


○戦士.Lv13になりました。サブ職業装備可能数4へ。


○戦士.Lv14になりました。TP・MP回復速度アップ選択。



 一気にLvが四も上がった……あの黒鬼はどれだけ格上だったのか。


 Lv14の回復速度アップ選択はTPを選択しておく。


「トゥスカはLvなんになった?」

「…………13です」


 トゥスカが驚きで固まっていた。


「私も、Lv12になったわよ!」


 眼鏡女がなにか言ってくる。


「私達も随分Lvが上がった。少し加勢しただけで、経験値だけでなくアイテムまで手に入るとは。助けた以上の恩恵を貰ってしまったな」


 ジュリーとタマが近付いてきた。


「本来なら、トドメを刺したコセとパーティーを組んでいない私達に経験値が入るはずないんだけれど、あの黒鬼の強さから考えるに特殊なルールが適用されていたのかも」


 なんか、ジュリーが真面目な顔でオタクっぽい事を言っている。


「助力に感謝するよ。二人が援護してくれなかったら、危なかったかもしれない」


 でなければ、残った右腕で反撃されていただろう。


「いや、お礼を言いたいのはこっちの方だよ。おかげで強くなれた」


 ジュリーとは、良い関係を保っておきたい。絶対にその方が良い。


「ちょっと、私を無視しないでよ!」


 眼鏡女が、これ見よがしに胸を揺らして騒ぐ。


「コセ、今なら私が、貴方のパーティーに入ってあげても良いわよ!」

「結構です」


 マジで要らねー。


「さ、さっきだって、私がいなかったら危なかったでしょ!」

「そもそも、私達は貴方に巻き込まれたんです。偉そうにしないでください」


「そ、それは……」


 トゥスカの指摘に、顔を背ける眼鏡女。面倒だな。


「俺と君は合わない。だからパーティーも組まない。以上だ」

「そんな……」

 

 泣きそうな顔の…………名前が出てこない。


「ご主人様、どうします? 人が集まってきているようですが」


 遠巻きに俺達を観察しているようだけれど、ちょっとずつ距離を縮められている。


 火事現場に集まってくる野次馬とみたいだな。

 

「消耗した状態でダンジョンへ行くのは危険だし――」


 ――――俺達の前に、一斉に幾つものチョイスプレートが出現した!



○突発クエスト発生! 突発クエスト発生! 突発クエスト発生! 突発クエスト発生!



 ビーーー! ビーーー! ビーーー! という音が、村全体から響き渡った。


とにかく死闘が描きたかった!

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