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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第6章 人類の起源

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199.ロイヤルハニーガード

「絶対に嫌よ! この村を出歩くなんて!」


 食堂でアヤナが立ち上がり、猛抗議。


 本当に虫がダメなんだな。


 まあ、俺も苦手だけど。


「モモカ……よく食べられるわね、そんなもの」

「た、逞しい幼女だな」


 バトルパペットのローゼとマリアが、先程俺がモモカに買って上げた物を見てドン引きしている。


 なにせ、俺の膝上でモモカが食べているのは……”雀蜂のキャラメル揚げ”だからな。


 匂いは良いんだよ、匂いは。だってキャラメルだもん。


 それをモモカは、スナック菓子感覚でバリボリバリボリ食していく。


「コセも食べる?」

「いや、俺は……」


 モモカと違って、俺は”昆虫食”のスキルを取ってないからデバフが……。


「はい、アーン」


 も、モモカが、俺に食べさせようとしてくれている!?


「あ、ありがとう」


 モグモグ……意外と、味は悪くない。


「これ、凄く美味しいよね!」

「その食べ物は、この村を出ると暫く買えないし、いっぱい買っちゃおうか」


 隣にいたメルシュが、珍しくモモカの機嫌を取るような物言いを。


 やっぱり、まだ尾を引いていそうだな。


 ……今夜は、メルシュと一緒に寝るか。


「ちょっと、私を無視するんじゃないわよ!」


 アヤナみたいな人間の、こういうところが苦手なんだよな。


「どうどう、お姉ちゃん。タガメでも食べて落ち着きなよ」

「……双子なのに、なんでアンタは平気そうなのよ」

「美味しいよ、このタガメの醤油煮込み」


 無表情で普通に食ってやがる。


「このタガメを売ってた屋台、コオロギのスープも売ってたよ。カブト虫の串焼きとか、カイコの干し物も」


「ギャーーーー!! もう言わないでッ!!」


 頭を抱えて苦しみ出すアヤナ……うるさ。


「まあ、アヤナさんみたいに嫌な方もいるでしょうし、虫が平気な人だけで用事を済ませても問題無いでしょう」


 そう言い、優雅に紅茶を嗜むヨシノの手は……僅かに震えているように見える。


 メルシュやシレイアは嫌がってないし、ヨシノは半植物人間だから、虫が苦手という設定があるのかもしれない。


「今は良いけれど、昆虫食はデバフがあるから”昆虫食”のスキルが無い人は食べちゃダメだよ」

「そ、そうなの!?」


 忘れていたであろうモモカが慌て出す。


「ご、ごめん、コセ……」

「ま、まあ、今は大丈夫だよ……」


 あんまり食べたくないけれど。


 小さい頃、食糧不足とかでやたら虫の粉末入りの食べ物を食べる羽目になったけれど。


 後から昆虫食は身体に良くないってメディアで報道されて、途端にあのクソ親達が買うのを止めていた。


 ネットだと、とっくの昔から昆虫食、遺伝子組み換え食品はヤバいって言われてたのに。


「雨が降ってきたようだ」


 窓を見ていたルイーサが、紙カップ内の温かなスープを飲みながら呟いた。


 雨の勢いはあっという間に強くなり、土砂降りに。


「村の探索は、明日にした方が良さそうだな」


 どことなく、寂しい雨だ。


 紺碧の空から降りしきる静謐な雨。


 風が無く、稲光も見えないし……こういう雨は好きだな。


「ルイーサのそれ、美味しそうね」

「ん? 飲んでみるか?」


 ルイーサがアヤナに、自分が飲んでいる物を差し出す。


「ん……なかなか美味しいじゃない。でも、初めての味ね」

「そうだろうな。私も、コオロギのスープなんて産まれて初めて飲んだよ。クッキーならあるけど」



「――ブゲフッッッッ!!!?」



 吹き出しやがった。


「アヤナ……汚い」

「エレガントじゃないわ」

「下品な女だ」


 幼女三人組? に総ツッコミされるアヤナ。


「ご、ごめん」

「お姉ちゃん……恥ずい」

「アヤナ、食べ物を粗末にしちゃダメじゃないか」


「アオイ、ルイーサ……あんたらねー!」


「「「ハハハハハハハ!!」」」

「「「フフフフフフ!」」」


 珍しく、アヤナがからかわれている。


 ……アヤナみたいな人間は苦手だけれど、彼女のようなムードメーカーがいたほうが良いこともある……か。たまには。



●●●



「ここで食材を買い込んで置けば、”昆虫食”のスキルが役立ちそうだな」


 村を歩きながら、マスターが呟く。


 昆虫村にやって来た次の日、早めに朝食を済ませ、虫がダメなアヤナ、ヨシノ、クマム、ついでにナオ以外のメンバーが手分けしてこの村での買い込みやイベントをこなしに行っている。


 ナオは虫が苦手ってわけじゃないらしいけれど、クマムと一緒に居たいから残るそうな。


 クマムは特別ナオに心を開いているってわけでもないんだけれど、能力的に被らないし、あの二人はこれからセットで扱った方が良いかも。


 スゥーシャはタマとの連携が良いから、ユリカとヨシノと合わせて、基本はこの四人で良いか。


 となると、魔法使いが三人になっちゃうから、残りのメンバーはノーザンが良いかな? 


 サトミとルイーサのパーティーはある程度バランスも取れてるし、あの二人の四人パーティーは、これまで通り固定で良いか。


 ユイとシレイアのコンビは……かなり偏った組み合わせなはずなのに、アレで上手くいっているからなんだかね。


 取り敢えず、基本はナオ達と組んで貰うかな。


 ジュリーとサキのコンビは、暫くは二人だけでも問題ないし、モモカはヨシノと仲が良いからユリカかマスターであるコセのパーティーに加えればいい。


 一人一人の戦力も充実してきてるし、もう少しレギオンメンバーが多ければ、パーティーを六つに分けても良いんだけれど。


 やっぱり、魔法使いの割合を増やしたい所だね。



●●●



 トゥスカとメルシュ、モモカ、ローゼ、マリアと共に、花畑の方にやって来ていた。


「いらっしゃい、冒険者の方々」


 蜂に刺されないための衣服を着けたおじさんが、ハチミツを販売しているようだ。



○商品を購入しますか?


★純粋ハチミツ 500G ★虹色ハチミツ 400G

★ロイヤルハニーゼリー 1000G



 三つだけなんだ。


「メルシュ、それぞれの効能とかあるのか?」

「”純粋ハチミツ”は”料理”、”調合”のスキルがあれば薬にしたり出来るけれど、”虹色ハチミツ”はおまけみたいな物だね。”ロイヤルハニーゼリー”は、食べると状態異常回復に予防効果もあるよ」

「なら、サトミの草餅で代用可能では?」


 最近になって、ようやく製作方法が判明したらしい。


「材料の関係で暫くは量産が厳しいし、ゼリーの方が咄嗟の時に飲み込みやすいよ。喉に引っ掛けて窒息死したりしないようになってるし」


 怖いこと言うなよ。


 まあ確かに、草餅だと戦闘中に食べるのは怖いな。


「じゃあ、”ロイヤルハニーゼリー”を千個購入で」


「「……なんでそんなに?」」


 さすがに要らないだろ。


「良いから良いから」


 昨夜タップリ慰めたからか、元気いっぱいのメルシュ。


「ま、良いか」


 メルシュが意味の無い事をするはずがないし。


 チョイスプレートを操作し、1000000(ひゃくまん)Gを支払う。


 螳螂駆除で俺のパーティーが稼いだ分……ほぼゼロに。


「気前が良いね! コイツは記念品のあまりだ、受け取ってくれ」


 手渡されたのは、黄色の蜂の巣状の意匠が施された……指輪?



○”ロイヤルハニーガード”を手に入れました。




「メルシュ、これは?」


「どんな状態異常に陥っても、内側の針が刺さって回復してくれるんだよ。刺された後は一時間くらい状態異常への完全耐性が付くし」


 指輪の内側を見ると……内蔵された針が見えた。


 ……これ使うの…………嫌だな。


「レギオンリーダーが”ロイヤルハニーゼリー”を千個購入しないと手に入らない超の付くレアアイテム。皆を回復する手段を持つ私が装備しておくべきだと思うんだけれど、どうかな?」


「「どうぞどうぞ」」


 トゥスカも、針は怖いらしい。


「――ご主人様!」


 トゥスカの警戒の声――村の中端の方から誰か来る!!



「す、すすすすみません!」



 顔が見えないほど長い黒髪を持った女性が……俺達に話し掛けてきた?


挿絵(By みてみん)

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