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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第6章 人類の起源

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197.魔神・鎌切蟷螂

「”天使の翼”、”天使の輪っか”、”光属性強化”、”天使法術”。色々手に入ったようだね」


 昼前にはボス部屋直前の安全地帯で切り上げ、今日のみんなの戦利品をメルシュが吟味していた。


「意外な物も手に入ったぞ」


 そう言ったフェルナンダが差し出して来たのは……黄金の薔薇が付いた細剣?


「これ、天使に関係するアイテムなのか?」

「ああ。確か、黄金の薔薇と天使に関する逸話があったはずだ」


 俺の問いに答えたのは、意外にもルイーサ。


「”ゴルドローズソード”。上位の天使系モンスターが使用する事もあるAランク武器。”黄金障壁”や、天使系統の攻撃を強化する”天意”も備えてる」

「細剣タイプだから、使うならクマムかクリスだな。戦力的に見れば、取り敢えずBランク以下の剣しか無いクマムか?」


 この場にいる者の目が、クマムに注がれる。


「へと……良いんですか?」


 クリスは専用のSランク武器があるし、レギオン内で一番装備が心許ないクマムが使うべきだろう。


「受け取ってくれ、クマム」

「ありがとうございます!」


 フェルナンダから丁重に黄金の薔薇の剣を受け取ったクマムの顔は……嬉しそうだった。

 

「なら、天使系のスキルやサブ職業は、クマムに集中的に渡した方が良いかもね」


 メルシュがそういうと、スキルカードやサブ職業のブルーメダルがクマムに差し出される。


「皆さんて……本当に良い人ですね」


 ……クマムが泣き出した!?


「ど、どうしたの、ナノカちゃん!」


 好きなアイドルが突然泣き出したからか、咄嗟に芸名で話し掛けてしまうナオ。


「こんな……協力的で、平等に接しようとしてくれる人達初めてで……プロデューサーの意向で私がセンターの時間が長かったりすると、同じグループのメンバーに嫌がらせとかされてたから! ぅう!」


 ご本人の口から、また暗いアイドル事情が。


「裏に引っ込んだ瞬間にファンの悪口言ったり、競演したお笑い芸人さんを陥れるような噂流したり、俳優さんに色目使ったりする人ばっかで……アイドルなんてクソだよ。グス!」

「……」


 ナオがショック受けてるから、その辺で止めてあげて、クマム。


「アイドルなんて、鋼の心臓がなきゃ務まりません! 私は、あんな人でなしになんてなりたくない! 皆さんのように、優しい人間でありたいです!! ああああああああああ!!」


 お願いだから、そんなに持ち上げないで!


 ……アイドルで居続けるには、この子は善良で賢すぎたのかもしれない。


 まあ、そういう人間じゃなかったら、俺とクマムの間に”最高級の婚姻の指輪”なんて…………そう言えば、なんで”最高級の婚姻の指輪”なんだ?


 正直、俺の中で彼女の影が一番薄いのだが。


「ああ……ちょっと良いか?」


 クマムが泣き出した横で、メグミさんが注目を集める。


「実は、”模造銀竜”というのに遭遇して、おそらくソイツからドロップした物だと思うんだが……」


 メグミさんがチョイスプレートを操作して実体化させたのは……大きな太い筒が先端に付いた、フチが緑の黄金六角盾?


「これがどうかしたのか?」


 ザッカルが尋ねると、メグミさんが苦渋の表情を浮かべる?


「この盾……”泰然(たいぜん)なる高潔の(たけ)り”って名前なんだ」


「「「ああ~」」」


 皆、盾の名前だけで察してしまった。


「神代文字対応で、Bランクだね。砲や弾が付くスキル攻撃を強化してくれる、”収束筒”が付いてるよ」

「私の”ドラゴンの顎”と同じだな」


 盾に竜の頭が付いたアレか。


「……この盾、私が使っても構わないだろうか?」

「私は良いと思うよ。そろそろメグミにも、神代文字対応の武具を持たせたかった所だし」


 まだ文字に対応した武具を持っていないのは、メグミさんとクマム、それにクリスとモモカに、アヤナとアオイか。


「俺も、メグミさんが使うのに賛成だ。他に盾をメインにしている人間はいないしな」


 俺、トゥスカ、ルイーサは時々盾を使うけれど、俺達が使うには勿体ない。


「神代文字対応の武具をメインに使って欲しいから、盾である以上メグミが最適だと思うよ。となると、メグミには砲や弾のスキルを優先した方が良いかな。特殊レギオン戦で、ちょうど良いのが手に入っていたはず」

「なら、この盾をメインに新たな戦闘スタイルを確立した方が良いか。手伝ってくれるか、メルシュ?」

「喜んで!」


 メグミさん……メルシュに気を遣ったのかな?


 頼ることで、落ち込んでいたメルシュにメルシュ自身を肯定させようとしたのかも。


 そう言えば、メグミさんとの間にも”最高級の婚姻の指輪”が出来てたっけ。


 ”最高級の婚姻の指輪”の入手条件がメルシュの言っていた通りだったとすると、俺はメグミさんとクマムを深く愛して、愛されている事になるんだが…………分からん。



●●●



「第十二ステージのボスは、魔神・鎌切蟷螂(かまきり)。危険攻撃は、両腕の大鎌を投げ付けてくるハイパワーシックル。弱点属性は火で、有効武器は盾。ステージギミックは――」


 いつも通り、メルシュが緑がかった黄色の妖精の横で解説してくれる。


 話を終えたのが合図であったかのように、妖精の前にお供え物をするコセ……まるで、妖精を地蔵かお墓扱いしているみたいだな。


「行くわよ、メグミちゃん」

「ああ」


 サトミに呼ばれ、リンピョンとクリスと共にボス部屋の中へと赴く。


 ――扉が閉じると、暗さと静謐さが場を満たし、否が応でも緊張感が襲ってくる。


「じゃあ予定通り、今回は私に任せて貰うぞ」

「頑張ってください、メグミさん!」

「危なくなったらぁ、遠慮なく呼んでくださぁい!」

「フフフ、メグミちゃんなら大丈夫よ。コセさんから、”最高級の婚姻の指輪”を貰っているもの♪」


 サトミの奴、少なからず根に持っているな。


 悪い奴じゃないんだが……自分を守るためのフィルター越しにしか、人と関わらないと頑なになってしまっているようだからな、サトミは。


 理由は分からないが、サトミを殻から解き放つのは難しそうだ。


 ――部屋の奥で、緑がかった黄色のラインが発光し、黒石の巨大鎌切人間が動き出す。


「よし――やるか」


 左腕に”ドラゴンの顎”、右腕に”泰然なる高潔の哮り”を装備する。


 ……この盾の名前、なんか恥ずかしいな。


 そもそも、泰然としているのに哮るってどういう状況だ?


『キシェェェェェェェェェーーーーー!!』


 鎌を振りかぶりながら、蟷螂人間が突っ込んで来る。


「”魔動弾”、”連射”!」


 ”泰然なる高潔の哮り”の短い砲身から、昨日メルシュから貰ったスキルを使用し、盾の効果で連続発射!


『ギエエエエエエエッ!!』


 強化された”魔動弾”で、魔神の身体を削っていく。


 その傍らで、ある理由のためにボス部屋奥へと駆けるリンピョン。


「なかなかの威力だな。そろそろ本気でやるか――」


 昨日の午後に練習した時の感覚で、右腕の盾にTPを流し込む!


 ――この奔流、アトランティスにいた頃が懐かしくなるな。


 盾に文字が三つ刻まれ、”魔動弾”の威力が強化される!


『ギシェエエエエエエエエエエエエッッ!!』


 生きていないからか、身体の前面が削られても向かってくるか。


 ――魔神・鎌切蟷螂が跳躍した!?


「”竜光砲”!!」


 ”ドラゴンの顎”から、哮るドラゴンの光を放ち――直撃させる!


 左腕を破壊するに留まったか。


『キシェェェェェッ!!』


 右腕に握られた鎌が輝きだし、投げ付けてきた!


「拒絶の腕――”拒絶”!!」


 巨大な緑の腕を左腕側に出現させ、鎌を弾き飛ばす!


「”魔動弾”連射”! ”竜光弾”連射”!!」


 二種の光弾をぶつけ続け、天井に張り付いていた魔神を――光に変えた。


「……悪くないな」


 選択を保留にしていたランクアップジュエル、使ってみるか。


一週間ほど連続投稿予定

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