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185.戦利品

「じゃあ、昨日の特殊レギオン戦で手に入れた、装備の分配をしていくよ」


 食堂のテーブルの上一面に、とんでもない数の武具や装飾品が置かれている。


 朝食後、さっそく新アイテムを適切に配ることとなった。


 明日の夜までは各々自由となっている。


「クマムさんに、これはどうでしょうか?」


 タマがメルシュに尋ねたのは、先端に赤い部分があるレイピア。


「“伸縮のレイピア”、Bランク。“伸縮”効果で中距離戦闘が可能になるし、クマムの弱点を補ってくれるかも」

「じゃあ、クマムさん」

「ありがとうございます、タマさん」


 小柄な白猫の獣人、タマからレイピアを受け取るクマム。


「この白ドレス姿のお人形さんは、考えるまでもなくモモカちゃんよね~♪」

「ありがとう、サトミ!」

「Aランクのマリアか。それも魔法使いタイプ。まぁ、私の方が綺麗だけれど」


 ローゼ、なんか対抗意識を燃やしてる?


 黒いゴスロリっぽいドレスと紫の巻き毛ロングのローゼと、白いドレスを着た淑女風金髪のマリアか。なかなか対照的だな。


「これで良いかな?」


 さっそく装備している様子のモモカ。


 これで、モモカの安全性はますます上がるだろう。サトミさんに感謝だな。


「…………」

「あれ、動かないよ?」

「壊れてるんじゃないの?」


 ローゼは、マリアに嫉妬しているのだろうか?


「えー! そんなのやだ!」

「冗談よ。ていうか、人形にご執心なんて、モモカはやっぱり子供ね」


 人形であるお前が言うのか。


「ローゼ、またバカにしたでしょ!」

「さあ、どうかしら?」



「――さっきからウッセんだよ、ボケが!!」



 ……マリアが…………怒鳴った?

 

「「ご、ごめんなさい」」


「アタシは眠いの。さっさとフカフカのベッドに案内しな」


挿絵(By みてみん)


「う、うん」

「なにコイツ……めっちゃ恐い」


 マリアに脅され? ……モモカ達が食堂を出て行った。


「この鎧は、ザッカルの予備武器にちょうど良いだろう」


 赤い鉤爪付きの無骨な鎧を、ザッカルに勧めるフェルナンダ。


「俺、自分で手に入れたこの“漆黒の軽鎧”を使おうと思ってたんだけれど?」


 光沢のある真っ黒な鎧を、既に身に付けている黒豹獣人のザッカル。


「予備で良いんだって。この“アシストクローアーマー”は膂力を強化してくれるけれど、同時に他の武器は使用できない。状況によって鉤爪で戦うザッカル向きだろ?」


 トゲトゲしい長い金髪を持つマクスウェルの隠れNPC、フェルナンダが丁寧に説明。


 傲岸不遜な態度を取ることもあるけれど、面倒見の良いところを見てると、やっぱりメルシュと同一存在なんだなって気がしてくる。


「確かにな。じゃあ、この“巨悪を穿て”ってのは?」


 禍々しいデザインの黒い……槍? それとも銛?


「剣槍タイプのBランク武器か。タマ向きな気もするけれど、タマは“蒼穹を駆けろ”を持ってるし、良いかもな」

「よし!」


 喜んでるな~、ザッカル。


「昨日の時点で使ってましたけれど、この腕輪は貰っても?」


「”一角水魚の腕輪”、Aランク。サポートしてくれる生物を生み出す物ですね。水属性特化のスゥーシャさん向きかと」


 ドライアドの隠れNPC、ヨシノが許可した。


「それと、この“天の白河は流れる”はトライデントなので、スゥーシャさんが使ってください」


 綺麗な白銀色のトライデントだな。


「ありがとうございます! 大切に使わせていただきます!」


挿絵(By みてみん)


 白い魚の下半身と髪を持つ、小柄な人魚のスゥーシャ。


 どことなく、一昨日よりも逞しくなった気がする。


「“アルテミスの魔弓”Sランクに、“アールヴの風弓”Aランク。質は良いんですけど、使い手が居ないので保留ですね」


 ターバンを巻いた黒髪ショートカットの鞭使い、テイマーの隠れNPCであるサキが、弓を隅にどかす。


 Sランクの弓……確かに惜しい。


「“調伏の太刀”、Sランク。ま、考えるまでもなく、うちのマスターが使うべきだね」

「私、Sランクならもう持ってるけど?」

「太刀の使い手はアンタしか居ないんだから、遠慮しなくても良いんだよ」

「……そう?」


 シレイアに勧められるまま、ユイは新たにSランクの刀剣を手に入れた。


「ユイ、これはどう?」


 左側にだけ肩当てが付いた、紅の軽具足を勧めるジュリー。


「“彼岸花の軽具足”、Aランク。バランスは悪いけれど、今ユイが使ってるのとそう変わらない感覚で使えると思う」

「試してみないとなんとも言えないけど……これ、ゴザルの人が使ってたのじゃ……」


 躊躇いながらも、さっそく試してみるらしい。


「この剣、私が使っても良いですか?」


 青黒い片刃の剣を手にしているのは、リンピョン。


「リンピョンって、MPとTP、どっちの方が高いの?」

「TPだけれど?」

「強力な“氷獄魔法”をこれから使うなら、“輪廻の業剣”はやめた方が良いね。MPが不足しがちになりそう」

「そっか……見た目、気に入ってたのに!」


 メルシュに説得され、泣く泣く諦めるリンピョン。


「仕方ない。あの男が使っていた“氷蛇の刀剣”で我慢するか」


 贅沢な言い草だな。あれ、Aランク武器だろ。


「これはルイーサが使うべきだな」

「良いのか? Aランクの剣なんだよな?」


 翠の大剣を、ルイーサに渡すフェルナンダ。


「コセは強力な剣を複数持ってるし、お前も強力な予備武器は持っておくべきだ」

「……そうか、ありがたく使わせて貰おう」


 剣を受け取るルイーサ。


「ところで、あの鎧は私が貰っても?」


 ルイーサが指を差したのは、白い鎧。


「”高位騎士の聖鎧”、Aランク。光属性を強化してくれるし、確かにルイーサ向きだな」

「あ、その鎧、私とアオイをババア扱いした奴が使ってた奴!」

「ババア?」


 アヤナがなにか言い始めた。


 あの二人をババア扱いって、どんな感覚の持ち主だよ。


「この“輪廻の業剣”は、取り敢えずシレイアが使って」

「ま、アタシがMPを使うことはまず無いからね。妥当だろ」


 メルシュから青黒い剣を受け取るシレイア。


「“黒魔法使いの短剣”、Aランク。魔法使い専用ですし、フェルナンダ向けですね」


 サキが、フェルナンダのところまで持っていく。


「ヨシノ、この脚甲はなんですか?」


 トゥスカが尋ねたのは、以前履いていた“ブラックブーツ”に酷似した金属製の黒靴。


 コッチの方が機械的というか、ちょっとゴツイ意匠だな。


「“爆走のロイヤルグリーブ”、Aランク。派手な加速力と蹴りの威力を高めてくれますので、トゥスカさん向きかと」


「そう……気に入ったわ」


 太股の半ばまで覆うそれは、トゥスカの綺麗な脚に良く映える。


「このナイフ……いかす!」

「それはやめておいた方が良い、ユリカ」


 黒い反りのあるナイフを、ユリカから取り上げてしまうジュリー。


「これは“陰惨なナイフ”、Aランク。生物系モンスターに対して即死効果を発揮する場合がある。ただ、装備者のHPを徐々に削っていくんだ」

「HPって事は……」

「このリアルな世界では、命を蝕むだろうな」

「そんな物まであるの!?」

 

 ……ジュリーやメルシュが居てくれて良かった。


 あんなのを知らずに装備していたら、どうなっていたことか。


「これはバトルパペット向けの装備だね。ローゼも居るし、モモカに渡しても大丈夫かな?」


 そんな危険な物をと考えると、ちょっと心配になってしまうな。


「それにしても……俺だけ新装備を勧められない」


 その後、武具の次はスキルカード、サブ職業の順で分配が行われたのだけれど、あまりの多さに結局午前を丸々使ってしまった。


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