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174.古城遺跡

「……ここは」


 いつもの祭壇と違う。


 暗い煉瓦造りの箱の中のような場所。天井はない……というより、崩れて無くなったって感じだな。


 中心は日に照らされ、天井の隅はまだ残っているため、壁側部分の大半は日陰になっていて暗い。


 足元の煉瓦は一部が黄土色になっており、円を形作っていた。


 この円の部分は、いつもの祭壇っぽいな。


「ここも、ところどころ蔦が生えていますね」


 トゥスカの言うとおり、第十ステージほどじゃないけれど、そこかしこに蔦が壁や床に絡み付いている。


「古城って言うのは、アレのことか?」


 ザッカルは、崩れた天井越しに、蔦にまみれた古城を見ていた。


 どうやら、この場所の壁と同じ色の煉瓦で出来ているらしい。


「あの城の内部はちょっとしたダンジョンになっていて、配置されている宝箱から稀にAランク武具が見付かる事もあるよ。確立は本当に低いけれど、毎日新しい物が補充されるみたい」


「なら、ここでアイテム収集に費やすのもありか」


 レギオンメンバーに、まとまった休みを設けたかったところだし。


「ご主人様、皆が居ません」

「へ?」


 トゥスカの言葉に辺りを見渡すと……確かに誰も居ない。


「メルシュ」

「居るとしたら外だね。案内するからついてき――」


 メルシュの言葉を遮るように、重い剣戟の音が響く!!


「こっちです!」


 トゥスカとザッカルがいち早く動き、俺とメルシュが急いで追う。


 薄暗い通路を出ると、古城へと続く長い橋が見えた!?


 橋と言うよりは、外壁のような物の上部分か。


 橋周りは高い木々が生い茂っており、第十ステージと同じ雰囲気。


 ステージを跨いで地続きになっていると言うのは本当らしい。俺達が通ってきたと思われる道も見える。


「みんな!!」


 その橋の手前辺りで、俺のレギオンメンバーを発見!


「誰かと戦ってるぞ! それも集団でよ!」


 橋は広いが、十人並べるか程度の幅しかない!


「俺達は回り込むぞ! トゥスカ!」

「ザッカル、私に掴まって!」


 夜鷹を呼びだした俺と”飛行魔法”を使ったメルシュで二人を運び、襲ってきた集団の背後をおさえた!


「コイツら、結構強ーぞ!」

「コトミとタカユキが殺された!」

「おい、後ろだ!」


 どうやら、ジュリー達の方が優勢だったらしい。


 ただし、襲ってきている集団の方が数が多い。


 少なくとも三十人以上は居るようだ。


「全員、異世界人か」


 獣人も人魚も居ない。


「マスター。あの藍色の鎧の男、《攻略中毒》のレギオンリーダー、ケンタだよ!」


 なんか、こっちの世界に来た人間にしては髪が整っている男だな。


 俺の髪、大分伸びてきてるけれどどうしよう?


「オイオイオイオイオイオイオイオイ! 緑髪美少女キャラ、来たぁぁぁーーーーーー!!」


「「「来たぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」」」


 ……メルシュの事か?


 まるで合唱するように……なんなんだコイツら?


「ケンタ氏、彼女達はいったい何者なのでしょう! 綺麗な方々ばかりな上、3Dキャラが飛び出してきたかのような美しい緑髪少女まで!」

「天使でござる! 天使でござる!」

「色んなお洋服、着せ替えたいわ~」

「むほー! むほー!」

「あそこの双子には、是非ユニットを組んで欲しい!」


 コイツら……メディアが作り上げた気持ち悪いオタク像を、地で行ってやがる!!


 男も女も居るようだけれど、なんでジュリー達と戦っていたんだ?


「ケンタ氏! あそこに男が、一人だけ居ますぞ!」


「ゲームキャラにしては顔が普通ね。どちらかと言えば、イケメンと言えなくもないけれど」

「そーお? どこか女っぽくて、美男子と言えなくもないと思うわ?」

「なかなか中性的な雰囲気の方でござるな」

「あれか! ハーレム物の主人公の声優が女性だと、男主人公への嫌悪感が薄れるっていう!」


 ――ゾワゾワと、大量の虫が這い寄ってくるような嫌悪感。

 

「ご主人様……彼等はなにを言っているんですか?」

「まるで意味が分からねぇな」


 こっちの世界の住人であるトゥスカとザッカルには、想像も出来ない世界だろうな。


「コセ、気をつけろ! コイツらは――」


 ジュリーが慌てている?



「では皆の衆! この男を始末して、乙女達の目を醒まさせてやろう!」



 ケンジとかいう男が叫んだ瞬間――コイツらの目に狂気が宿った!?


「待って! 彼は私のコレクションにするわ! 私の十三番目の男にしちゃう!」

「ズルい! 私も欲しい!」

「アンタ、さっき普通がどうのとか言ってたじゃない!」

「アンタは十二人も居るんだから、譲ってくれたって良いでしょう!」


 まるで女子高生が、気軽な雰囲気で俺を軟禁する話をするみたいに……。


 リアルな狂気が――心を捻じ切るように浸食してくる。


「あそこの犬耳獣人は、我が輩が貰う!」

「相変わらず、獣耳大好きでござるか。では、拙者はあちらの金髪緑眼美人を」

「そちらこそ、相変わらずの白人好きのようで」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。拙者のコレクションは二人だけなので、彼女という天使は是非譲って欲しいでござる!」


「まさか……俺達をゲームキャラだとでも思っているのか!?」


 隠れNPCであるメルシュを指して、ゲームキャラ呼ばわりしていたわけではないのか!


「コセ、コイツらはイカれてる!!」


 ジュリー達が、問答無用で殺していた理由が解った!


「では、全員殺さぬように捕らえて、後でキャラを分配するという事で!」

「ケンタ殿の言うとおりですな!」

「今日は当たりも当たりー!!」

「ゲームオーバーになったコトミ殿とタカユキ殿の分まで、我々が彼女達を愛でて差し上げましょう!!」


 コイツら……ゲームと現実の区別がついていない。


「ふざけるな! 俺達は人間だ!! ゲームキャラなんかじゃない!」


 たとえそれが、隠れNPCであるメルシュ達にだけ向けられた言葉だったとしても――絶対に許さない!!




『レディース、アーンド、ジェントルマン!! これより、突発クエストを発令させていただく!』




 突然男の声が響くと、この場に居る全員が光に包まれていく!!?


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