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171.おもてなしとドリルアタッチメント

「コセ……なにしてるんだ?」

「ルイーサか。いや、なんか成り行きで」


 ちょっと剣を振って戻ってきたら、モモカとローゼがコセの膝に座った状態で、ケーキを食べさせて貰っていた。


 ローゼ……人形なのに食事するのか。


 だが、いつぞやの食事風景を思い出すな。


 器用に、両手で持ったフォークで数種類のケーキを一口サイズに掬い取り、二人の口に運んでいる。


 更に、小瓶に入った蜂蜜を棒のようなスプーンで掬い、お口に運んだ後二人が紅茶を飲むのを待ち、お次はチョコチップ入りのクッキーを食べさせる。


 コイツ……天才か?


「う~ん! 貴方、なかなかやるじゃない。こちらにストレスを感じさせない、気を遣わせていると思わせない流れるような華麗なおもてなし精神。上辺だけ取り繕った人間では、到底到達不可能な次元の奉仕。気に入ったわ!」


 あの人形はなにを言っているのだろう?


「それは光栄だな」


「コセとトゥスカに食べさせて貰っている時は、全然イライラしないの。だから好き!」


 モモカ……他の人間に食べさせて貰っているときはストレスを感じていたのか!?


「さすがはお箸の国。ジャパニーズ男児の器用さは化け物か!」


「ルイーサ……日本育ちなら、アレが特殊なケースだってことくらい分かるでしょう」

「やっぱり、知ったかぶり外国人なんじゃ……」


「アヤナにアオイ! 私は、正真正銘の日本育ちだ!」


 なぜこうも疑われる!


「やるわね、モモカ。こんな良い男に、七才のうちから唾を付けておくなんて」


「ツバ? ツバは汚いよ? モモカ、コセにツバなんて付けないもん!」

「フッ! やっぱり、モモカはお子ちゃまね」

「またバカにしてる!」


「コラコラ、さっきローゼに言ったばかりだろう。大人なら?」

「分かってるわよ。この私がモモカを、ハーレムに最適な都合の良い女に仕立て上げて見せるわ!」

「俺……一度でもそんなこと頼んだっけ?」


 私が目を離していた間に、コイツらはどんな会話をしていたんだ?



●●●



「食らいなさい!」


 ローゼがその手の鎖を操り、その先端に取り付けられた“ドリルアタッチメント“で”古生代イーグル”の翼を削り砕く。


 遺跡村に着いた次の日、俺達は朝から第十ステージの攻略を始めていた。


「“万能鎖“には、アタッチメントと名の付くアイテムを”連結”させる事が可能なんだよ。ただし、サブ武器に設定して置かないと連結させられない」


 メルシュから、特異なアイテムであるローゼとその武器について説明を受ける。


「そうなると、サブ武器欄が多い戦士職向きか」

「ローゼは戦士系のバトルパペットだから、サブ武器欄は戦士職の人間と同じLvで増えるよ。ちなみに、バトルパペットのLvは装備者と同じだね」


 となると、俺達の中で一番Lvが高いんじゃ……。


「それと、ユニークスキルの“命の人形“によって、サブ職業を二つまで付けられるようになってるから」


 本来は、サブ職業を装備できるようにさせるためのスキルって事か。


「ちなみに、人形は種類ごとに決まったスキルを持ってるよ。後から追加したりは出来ないけれど」


「知れば知るほど、ちょっとした隠れNPCみたいだな」

「まあ、パーティー一人分の枠を使うこと以外は、私達隠れNPCの方が上位互換ではあるかな」


 対抗意識を燃やしてる? ……わけではないか。


「ウフフ! 私が全部、葬ってあげるわ~!」



            ★



「ニ日も掛かってしまったな」


 遺跡村を出た次の日の夕方、ボス部屋手前の安全地帯まで来てしまった。


「ここまで一本道。特にこれといった選択肢も無かったな」


 ポータルも無いし、シンプル過ぎる道のりが逆に新鮮だ。


「まあ、第十ステージと第十一ステージは、合わせて一つのステージと言って良いからね。ちなみに、古生代モンスターは第十一ステージにっはまったく出現しない」


 経験者のジュリーが教えてくれる。


「メルシュ、”古生代の結晶”は幾つ集まった?」


「三十ニ個。これだけあれば、取り敢えず充分だね」


 予定では最低でも十個って話しだったけれど……取り敢えずなんだ。


「古生代モンスターを積極的に倒してたら、丸二日掛かっちゃいましたね」

「他のモンスターも数が多くて、古生代モンスターと戦っているとあっという間に囲まれてたし」


 トゥスカとユリカ、結構疲れてそうだな。


 休憩は多めに入れていたけれど、全員疲労が濃いようだ。


「明日の朝ボス戦をやったら、次の日も含めて休みにしようか」

「そうですね、ご主人様」

「古生代系の武具の作製もしたいし、ニ日くらい丸々休みにしても良いと思うよ」


 トゥスカもメルシュも同意してくれる。


「じゃあ、今日はもう休みましょう。甘いお菓子と無糖の紅茶が飲みたいわー」


 人形なのに、ローゼが一番疲れてそうな雰囲気を。


 まあ、古生代モンスター討伐の立役者ではあるけれど。


 ”ドリルアタッチメント”による攻撃が強力なうえ”古代の力”の対象外だから、結果的にローゼが一番活躍していた。


 ローゼが居なかったら、ここに辿り着けたのは明日だったかもしれないな。



             ★



「結局、古生代ドラゴンは出なかったな」


 館の外では出来ない話を、リビングでする。


「第十一ステージの隠れNPC、バロンを手に入れるために討伐しなければならない、古生代系の上位モンスター」

「出なかったって事は、既に誰かがバロンを手に入れてしまったんだろうね」


 ジュリーとメルシュがそういうのなら、そうなんだろう。


「まあ、人数的に、これ以上パーティーが割れるのも危険だろ」


 フェルナンダが言いたいのは、隠れNPC所有者同士ではパーティーを組めない事だろう。


 このレギオンに所属する隠れNPCは、ワイズマンのメルシュ、アマゾネスのシレイア、テイマーのサキ、マクスウェルのフェルナンダ、ドライアドのヨシノの五人。


 つまり、最低でもパーティーを五つに分けなければならない。


 現在のレギオンメンバーは二十三人だから、均等に分けようとしても四人パーティーが二つに、五人パーティーが三つになる。


 確かに、これ以上パーティーを分けると戦力分散による危険が増す。


「まあね。でも、隠れNPCの入手条件を満たした時、隠れNPC入手以外の選択肢が出るでしょう?」

「隠れNPCだけが持つ、特殊スキルか」


 そう言えば、入手時に三つの選択肢から選べたな。


「利便性が高いのはサブ職業、相性が偏りそうな能力ならスキルカードを選択するのもありかもね」


「どちらにせよ、バロンが仲間に加わらないのは痛いね。敵対する事にならなきゃ良いけれど」


 シレイアが警戒している?


「そう言えば、バロンのスキルについて聞いてなかったな」


 敵対する可能性もある。確認しておこう。


「バロンの能力を教えてくれ」


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