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165.ドライアドとの一時

「……暇だ」

「暇ですね」


 寝室までお茶を持ってきてくれたドライアドのヨシノと共に、緑茶をいただく。


「「フー」」


 ホッとする。


「ユリカとは、上手くやれてる?」

「ええ。最初から気を許してくださっていて、昨夜は同じベッドで寝るように頼まれてしまいました」

「そうなのか」


 人の事は言えないけれど、ユリカはあまり誰かと打ち解けるタイプじゃないからな。ちょっと心配していた。


 NPCだから、構える必要が無いと感じているのだろうか?


「そう言えば、メルシュと関係をもったそうで。おめでとうございます」

「あ……はい、ありがとうございます」


 純粋に祝福されているのだろうけれど……気恥ずかしい!


「私達は姉妹みたいな物ですが、システムを一つと考えた場合同一存在とも言えます」


「トライアングルシステムでしたか」


「はい。なので、マスターとしての命令ではなく、ワイズマン自身が望んだ相手と結ばれるのは、本当に喜ばしいのです」


「……その言い方だと、マスターが命じれば……スると?」


「ええ。私達は、根っこの部分でマスターに忠実になるように作られて居ますから」


 なんか……気持ち悪いな。


「フフ、やはり良い方ですね」


 淑やかに微笑むヨシノ。


()を支配する事を恥じるその心、これからも尊ばれるとよろしい。従順な人間程、人を盲目的に堕とす者は居ません……などと、貴方には余計なお世話でしたね」

「いや……自分が漠然と感じていたことを、正面から肯定されるのは嬉しいよ」


 俺は、家族や同年代の人間にも、否定されてばかりだったから。


 あまりに物事に対する認識が違いすぎて、言葉を尽くすとかそういうレベルでの解決が出来ないほどに。


 まるで異なる生物なのではないかと考えてしまうほどに、他人との精神性が違いすぎた。


 だから、トゥスカとの出会いに感謝を忘れられない。


「貴方の人としての在り方は素晴らしいですが、女性関係は程々に。浮気なんて上っ面な想いではないのは重々承知していますが、度が過ぎると女を人ではなく物として見てしまいかねませんから」

「はい……気を付けます」


 アオイやアヤナくらいの距離感を保ってくれるなら、あまり意識せずにすむんだけれどなー。


 メルシュから婚姻の指輪について聞いた後、ちょっと悪い意味で浮ついていたかもしれない。


「それにしても……暇ですね」

「そうですね」


 待ってるだけって、辛い。


 突然、ヨシノがチョイスプレートを出現させて操作する。


「相手レギオン、残り百を切ったみたいです」

「あ」


 チョイスプレートから、残り選手を確認出来たのか。


 相手側は人数しか分からないけれど、味方側は残り選手が誰かの確認も出来るようだ。


 丁寧に全員の顔が表示されている。


 残っているエンブレム数も分かるんだ。


「では、一応持ち場に戻ります。話に付き合っていただき、ありがとうございました」

「美人とお茶を飲めた挙げ句、有意義な話しも出来た。こちらこそ、ありがとうございます」


「あら、お上手」


 言ってから……気恥ずかしくなってきた!



●●●



「“光輝剣術”、シャイニングブレイク!!」


 “ヴリルの聖剣”で、悪魔をモチーフにしたような黒い異形のエンブレムを破壊する。


「……試合、終わんないね」

「左の城は外れだったみたいだな」


 内装まで黒い城に突入した私とアオイは、入口近くの部屋で早々にエンブレム像を発見し、破壊した。


 モモカが扉を破って敵を引き付けてくれたおかげで、楽にここまで来られた。


「叱ろうにも、叱りづらいな」


 なまじ成果を出しているため、ここで叱ると変にこじれそう。


「まあ、モモカの事はコセに任せよう」


「どうする……ルイーサ?」

「念のため、レギオンジェネラルが居ないか探してみよう」

「……面倒くさそう」

「そう言うな」


 ジュリーの話しだと、次のステージは今までで一番特殊らしい。


 午後は、明日のボス戦と次のステージについて話して置きたいようだった。



●●●



「……実家を思い出す」

 

 ユイと一緒に、忍者屋敷のエンブレム像の出現部屋でお茶していた。


「和室での紅茶も、悪くないな」


 ユイは緑茶、我は紅茶を堪能させて貰っている。


 この高貴なるフェルナンダ様は、やはり紅茶でなくては。


『グギャリィィ……ィ』


「……優雅な一時に、無粋な」


 忍者屋敷に侵入してきたレギオンモンスターが、落とし穴に引っ掛かって串刺しにされる音が聞こえてきた。


「忍者屋敷……凄いね。ハーレム要素無いけれど」


「……そうだな」


 忍者屋敷に、ハーレム要素を求める感性が理解できん。


「和風って……ハーレムが似合わないんだよなー」


 真顔でハーレムハーレム連呼するの、止めてくれないかな!


 ていうか、大奥はハーレムだろ!


「でも……お布団でリアルハーレムの人と……グフフフフフ♡」


 うわ、一気に顔がキモくなった!



●●●



「“氷炎の競演”!!」


 ナオの左腕の青と赤の鮮やかなガントレットから、火花と氷粉が吹き荒れる!!


 屋内で待ち構えていた大剣持ちのレギオンナイトの振り下ろしを右手の杖で去なし、氷と炎の拳を顔面に綺麗に叩き込んだ!


「パワーアックス!!」


 ノーザンが氷の斧を用い、食堂らしき場所にあったエンブレム像をぶった切った。


 エンブレム像が消失して数秒待つも、レギオン戦は終わらねぇ。


「やっぱり、真ん中の城が本命みてーだな」


 “レーザーソード”の一振りで、レギオンソーサラーの首を二つ落とす。


 やっぱりこの剣……超イカす!!



●●●



「数、多いわね!」


 真ん中の城に突入し、二階に上がった途端……私達を囲うように襲ってくるレギオンモンスター達。


 数は四十くらいか。


「階段辺りから、一定数が動かないな。三階に進ませないようにしているのか?」

「おそらくは!」


 メグミさんの指摘に同意する。


「じゃあ、ジュリーちゃんとリンピョンちゃんは先に行って! リンピョンちゃんは、ジュリーちゃんが思いっ切り戦えるようにサポートを!」


「分かりました!」

「お任せを!」


 サトミさんの提案に従い、私は”飛行魔法”、リンピョンは“跳躍”で階段上部まで跳んで上へ!


 ぱっと見、レギオンモンスターは居ない。


「上に来ようと必死になってます! 私が足止めするので、ジュリーさんは行って下さい!」


「分かりました!」


 確かこの先に、玉座の間があったな。


 そちらを見ると、いかにもエンブレムがありそうな重厚な扉が見える……けれど、私の記憶だともっとオドロオドロしいデザインだったような?


「……このタイプの扉は、耐久値があったはず! サンダラススプランター!!」


 レギオン戦の家は本来破壊不能オブジェクトになっているけれど、ゴールドを使えば耐久値付きの扉なんかに変更し、侵攻を阻むことも出来る。


 そうやって、相手のTPやMPを削ったり、いかにもなにかありそうと思わせて撹乱に利用したりできるけれど、チュートリアルではそこまでしないはず――何も無い場所なら!


「居た! ……って、アレ?」


 玉座の前に佇む巨軀の騎士、レギオンジェネラルの背に……黄昏色に発光する八翼が生えてる!?


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