164.突撃姫 ハイヨーーーー!
『全員、所定の位置へ!』
ジュリーさんが金のメダルのような“拡声器”を使い、合図を出す。
あれも、レギオン戦専用アイテムなんだっけ?
「スゥーシャ、クマムさん、掴まってください!」
「うん!」
「お願いします!」
タマちゃんの青い槍を掴んで、私達は急いで十メートルくらいありそうな櫓を降り、右側の扉前へ。
『タマ達、扉前に敵が三十体程集まってる。ソーサラーが多いから、魔法に注意しな』
シレイアさんが、砦城から指示を出してくれる。
今回、隠れNPCの皆さんは戦闘に参加せず、情報伝達と指示に集中するとのこと。
シレイアさん、メルシュさん、サキさんが指示を出し、フェルナンダさんは”忍者屋敷”、ヨシノさんは“神秘の館”内で待機している。
「フー」
レイピアを構えながら、濃い灰色の壁がある大きくて頑丈そうな扉が破壊されるのを待つ。
こうやってわざと相手に扉を破壊させ、TP、MPを消耗させるのも手なんだとか。
ちなみに、このチュートリアルを終えたあとは、この扉部分も色々変更出来るようになるそう。
「タマ、クマムさん! 最初の一撃は、私に任せてください!」
白い人魚のスゥーシャさんが、トライデントを構えながらそう口にする。
「特訓の成果、見ててください!!」
スゥーシャさんから、凄いやる気を感じる。
「頑張れ、スゥーシャ!」
「では、お願いします。スゥーシャさん」
「“二重魔法”」
扉がひしゃげ、やがて青白い光へと変わっていく!
耐久値がゼロになったんだ!
『『『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!』』』
レギオンナイトを先頭に、次々と壁を潜ろうとしてきた!!
「“氾濫魔法”、リバーバイパー!!」
二体の水の大蛇が、壁の向こうに押しやるようにレギオンモンスター達を呑み込み……倒しちゃった。
「あれ、もう終わり?」
三十体くらい居たはずだれけど……全部仕留めちゃったみたい。
「次が来るよ、スゥーシャ!」
十体くらいのレギオンナイトが、新たに迫っていた。
●●●
「“星屑魔法”、スターダストシュート!!」
ユリカの魔法により、真ん中の扉から侵入しようとしたレギオンモンスター達が次々と倒されていく。
さすが、唯一無二のユニークスキル。威力が絶大だ。
『ジュリー、城からレギオンモンスターが出てこなくなったよ』
メルシュからの報告。
「よし! ユリカ、トゥスカはここを頼む! サトミさん達、行きますよ!」
「合点承知の助~♪」
サトミさんのノリ、正直よく分からない!
出鼻を挫かれながらも、サトミさん、リンピョン、メグミさんと共に中立地帯に突入!
「はああッ!!」
“避雷針の魔光剣”で、レギオンナイトを正面から斬り伏せる。
「シールドバッシュ!」
サトミさんが、“紺碧の空は憂いて”という杖の盾部分から“盾術”を発動し、レギオンナイトを吹き飛ばした!
「はあああッ!!」
四つの金属パーツを組み合わせたような丸盾、“メタルクラッシュバックル”を叩き付け、武具破壊Lv1の効果でレギオンナイトの剣や鎧に僅かに皹を入れるメグミさん。
武具破壊は、自分と相手の武具のランク差があればあるほど効果を発揮する能力。
レギオンナイトが持つ物はモンスター専用の装備だろうから、ランクはFの1より下の0で計算されるはず。
「ブレイクバッシュ!!」
”大盾術”を綺麗に決め、三体をまとめて倒してみせた。
なんというか、メグミさんは安定感があるというか、安心して任せられるって気がする。
「“暴風魔法”、ダウンバースト!!」
サトミさんが、風の圧力をレギオンソーサラーの一団に頭上から落とすも、“魔法障壁”によって防がれた。
「ハイパワーブーメラン!!」
ウサギ獣人のリンピョンが投げ放った円状の黒銀の鋸が、障壁発動により硬直したレギオンソーサラー達を横からぶった切ってしまう。
「リンピョンちゃん、ヤェイ!」
「ヤェイです、サトミ様!」
バトンタッチする二人。
あの二人、ここ最近は日に日に仲良くなっていく気が。
●●●
「“冥雷魔法”、ヘルサンダラスレイン!!」
アヤナの新しい魔法、黒雷に黒紫の爪が生えたような雷の槍群が、レギオンモンスター達を貫き、光に変えていく。
「今よ、行って!! ルイーサ! アオイ!」
忍者屋敷の防衛はアヤナと忍者屋敷のギミックに任せて、アオイと二人で中立地帯に突撃。
屋敷の裏手には、サキの契約モンスターである黒ピカとサタちゃんが控えているけれど、今回は忍者屋敷のギミックがどの程度通用するのかの検証も兼ねている。
屋敷内部には、精霊を呼びだすフェルナンダとメチャクチャ強いユイも待ち構えているし、問題ないだろう。
『あ!?』
突然響いたのは、テイマーのサキの声?
『モモカちゃんが金竜に乗って突撃しちゃった!! 誰か止めてぇぇぇ!!』
「へ?」
モモカは、黒ピカ達と待機しているはずじゃ?
『ガアアアアアアアアアアッッッ!!』
私とアオイのすぐ横を、黄金と黒の鎧纏う走竜が駆け抜けていく!?
「ハイヨーーーー!!」
踏み潰され、血肉を撒き散らして絶命するレギオンモンスター達。
モモカ……スゲー。
「あんなリトルドラゴンガール、ジャパンアニメでもそうそう見ないぞ」
「出た……久し振りの、日本育ちを疑う発言」
アオイに指摘された!?
アヤナとかにもたまに言われるけれど、そんなに変なこと言ってるか、私?
●●●
「モモカに負けてられない! 来なさい、瞬馬!」
タマ達が戦っている後方で突撃の機会を窺っていたら、ナオが急に石の灰色馬を呼びだしただ!?
モモカの突撃に、気持ちが奮い立ったってところか。
「行け、瞬馬!」
「僕も乗せてください!」
「って、俺を置いていくな!」
馬使うとか、予定になかっただろうが!!
「じゃあね、ザッカル!」
ナオとノーザンが跨がり、あっという間にタマ達を跳び越えて中立地帯へ!?
「あの野郎、ふざけやがって! ――”ホロケウカムイ”!!」
青の神気を纏い、全速力で追い掛ける!
「ぜってぇ、俺の方が活躍してやるぜ!!」




