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152.アマゾネスの憂鬱と精霊の施し

「ちょ、怖いんだけれど……」


 右ルートを暫く進んでいると、白い半透明の小人が、木々の枝の上から顔を覗かせ始めた。


「あれは木霊(こだま)。襲ってきたりしないから、安心しな」


 不安そうにしているユリカを諭す。


「タマは平気かい?」

「へ? はい、大丈夫です」


 暗い場所が苦手みたいだったけれど、幽霊的な物が苦手ってわけではないのか。


 やっぱり、自分を見るのが苦手なのかね。


「見えてきたね……精霊の住まう場所」


 そして、以前のアタシが死んだ場所。


「シレイアさん、大丈夫?」

「うん? 問題ないさね」


 意外と鋭いね、現在のマスターであるユイは。


 もう、あれから一年も経つのか。

 

 当時のマスターだったレイナは、果たして今も生きているのか……既にのたれ死んでんのか。


「おお、凄いな!」

「ちっちゃーい!」


 開けた場所に出ると、小さな精霊達が暮らす村が広がる。


 身長二十センチあるかないかの精霊の村だ。小さなテーブルや、小さな窓が付いた木、ミニチュアの一軒家や店がそこら中に並んでいる。


「村に見えても、ここはダンジョンの中だってこと、忘れるんじゃないよ」


 以前の教訓を生かし、皆を窘めておく。


 あの時は五人パーティーで、油断していたところにプレーヤーによる奇襲を受けちまって……少なくとも一人は死んだ。


 アタシが必死に残りのメンバーを逃したけれど、果たしてどうなったのやら……。


「人間さんだ~」

「人間さんだ!」

「なにか頂戴! 代わりに良い物を上げるよ!」

「チャンスは一人一回だよ~♪」


 イベントが始まったね。


「要らない物と交換しな。なにが手に入るかはランダムだ」


 とはいえ、最低でもBランク以上。稀にだけれど、最高だとAランクのアイテムも貰えるから、こっちのルートは当たりっちゃ当たりなんだけれどね。


 完全にランダムだから、自分に合わない武器が手に入ったりするかもしれないけれどね。



●●●



「じゃあ、全員予定通りの場所まで無事進めたんだね」


 夕方と言うにはまだ早い時間、俺達は食堂に集まって各々の戦利品を報告しあう。


「森の悪鬼では、ニタイカムイと四回戦って、“ニタイカムイ”のサブ職業二つを手に入れた」


 まずは俺からの報告。


「“ニタイカムイ”は獣人専用のサブ職業で、筋力と肉体再生力を特に向上させるから、取り敢えずザッカルとノーザンが使うのが良いかな」


「おっしゃ!」

「ありがとうございます!」


 身体能力を平均的に上げる”ホロケウカムイ”に対し、肉体再生力と筋力を重点的に上げるのが”ニタイカムイ”か。


 きっと、他にもカムイ系統のサブ職業があるんだろうな。


「次は迷路で手に入れた物だけれど、ほとんど低級のアイテムか素材、もしくはお金だったよ。それ以外で私が見付けたのは、”オリハルコン”一つに“嵐射りの弓”、“金星球の指輪”かな」

「金星球!?」


 突然大声を出したのは、ジュリー。


 最近、ジュリーが突然叫ぶことが増えてきた気がする。


「欲しいの?」

「はい、お願いします!」


 もの凄い勢いで頭を下げちゃったよ!


「私が使おうと思ってたけれど……ま、いっか」


 メルシュがジュリーに指輪を渡すと、ジュリーはガッツポーズを取っていた。


 最近、ガッツポーズをするジュリーの姿を見ることも増えた気がする。


 “嵐射りの弓”は、弓を使う人間が居ないからどうしようもないな。


「ゴホン! 私が精霊との交換で手に入れたのは、“インフェルノバードのスキルカード”だ」

「”煉獄鳥”のスキルが手に入るアイテムだね」


 落ち着きを取り戻したジュリーが話した内容を、メルシュが補足。


「というわけで、煉獄と言えばユリカだから、このカードはユリカに渡す。構わないかな?」

「意義は無いよ」

「妥当だな」


 俺とルイーサが同意を示す。


「あ、ありがとう……」


 煉獄と言えばユリカと言われた部分を、少し気にしてそうな当人。


「じゃあ、私が手に入れたのなんだけれど、”龍の戦士鎧”って物らしいわ……」


 ユリカが手に入れたのは、赤い鉤爪と緑の鱗が付いた鎧だった。


「三人が今使っている鎧より性能は高いし、竜属性を強化する効果もあるから、メグミかマスターが使うと良いよ」


 鎧は、俺を含めた三人しか使っている人間が居ないからな。


「俺は遠慮する」


 俺の偉大と名の付く武器は、複数装備することで恩恵があるみたいだし。


 そもそも、凄い気に入っちゃってるんだよな、”偉大なる英雄の鎧”。


「なら、私が使わせて貰おう」


 鎧はメグミさんの手に渡った。


「タマが手に入れたのは“天雷魔法のスキルカード”なので、ジュリー様に差し上げます」

「ありがとう、タマ」


 前々から、ジュリーが狙っていた魔法か。


「私は、”ドリルアタッチメント”というのを……」


 ユイが実体化したのは、本当にドリルだった。


「これ、持ち手らしい部分が無いな?」

「これ単体では意味が無い奴だね。でも、専用の装備を揃えられれば、面白い戦術が出来るようになる」


 ジュリーは使い道を知っているらしい。


「じゃあ、取り敢えず私預かりで」


 ユイのはメルシュが回収した。


「私はこれよ! “冥雷の指輪”」

「サトミのは、冥雷系専用強化アイテムだね。なら、アヤナ達が使うのが良いかな」

「そうなの? ならアヤナちゃん、はい」

「あ、ありがとうございます……サトミさん」


 アヤナ……サトミさんは苦手なのか?


「これ、”ソーマの蛇口”って言うそうなんですけれど……」


「「へ!?」」


 ジュリーとメルシュが、リンピョンが実体化させた物の名前を聞いて驚く。


 高さ三十センチ程の、白い蛇の彫像。


「あの……使い道は?」

「私が教えるよ」


 ジュリーが彫像の傍に行き、革製の水筒を蛇の口へ。


 額の青いスイッチを押すと、なにかが流れ出る音が。


 ……”ソーマの蛇口”って、そのまんまの意味?


 いつの間にかサキが用意したグラスに、水筒の中身を注いでいくジュリー。


 その水は、異様に青かった


「このアイテムは、”ソーマ”を無限に供給出来るアイテムなんだ」

「サトミの草餅と合わせたら、レギオン戦でかなり有利になるかもね」


 TPとMPの回復効果が、同時に適用されるしな。


「お手柄みたいよ、リンピョンちゃん」

「嬉しいです、サトミ様♡」


 頭を撫でられて幸せそうなリンピョン。


 以前までは主とペットみたいな関係だったけれど、今は……百合?


「私はこれだ。”走金竜の指輪”」


 メグミさんがテーブルに置いたのは、黄金の指輪。


「走竜系を召喚する、Aランクの指輪だね」

「私は鎧を貰ったし、誰に渡すのが良いだろうか?」


「欲しい!」


 精いっぱい手を上げて、アピールしているモモカ。


 動物好きだからかな?


「フム、良いか?」


 メルシュと俺の顔を見て、判断を問うメグミさん。


 信用されているという事だろうか。


「俺にはどういうのか分からないし、メルシュが決めてくれ」

「モモカは幼いし、走竜は契約モンスターみたいな物で賢い。モモカの護衛にピッタリかもね!」


「ありがとう、メルシュ! コセ! メグミ!」

「どう致しまして」


 屈んだメグミから指輪を受け取ると、さっそく金の竜を呼びだすモモカ。


 高さ二点五メートルくらいの……恐竜っぽいな。


 皮膚は黄色で腹面は白。金と黒の鎧を纏っていた。


「ちょっと遊んでくる! ハイよー!」


 難なく跨がって、外に出て行くモモカ達。


 ……そのうち、魔法少女の格好は嫌だとか言い出しそうだな。


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