137.雪男と大蛇と鬼
「この!」
二体の攻撃を去なしていると、小柄な方の猿達も追い付いてきた!
……猿の獣人を嫌いになりそう。
”ホロケウカムイ”を発動したままじゃMPが減り続けるし、ちょっとヤバい。
「さっさと潰す!」
二体の大柄な奴さえなんとかすれば、この包囲網を抜けるのは簡単!
『キキ!』
襲い掛かってきた小猿の首に蹴りを入れ、へし折ってやった!
コイツらの相手、大分慣れきたわ!
『ギギ!』
一体目の大猿の攻撃を武器で防ぐと、すかさず反対側からもう一体が仕掛けてくる。
――もうパターンは分かってるのよ!
”ホロケウカムイ”を解いて、横に跳ぶ!!
『『ギギェ!?』』
ずっと私を見ていれば、ホロケウカムイの青い光に目が慣れていたはず。
いきなり光源が無くなれば、いくら夜行性でもすぐには視覚は戻らない!
「”紅蓮転剣術”――クリムゾンブーメラン!!」
“紅蓮魔法”と“大転剣術”のスキルカードで作成したサブ職業、“紅蓮転剣使い”を発動!
燃え上がった“殺人鬼の円鋸”が飛んでいき、片方が片方を刺した状態の猿を照らして――両断した!
円鋸が戻って来るまで襲ってきた猿を蹴散らして、私は山頂へと再び駆け出す!
「ハアハア、ようやく着いた」
鳥居を潜ると、猿達は追ってこなくなる。
○クリア報酬を一つ選択してください。
★”氷脚甲のスキルカード”
★“暗殺眼のスキルカード”
★“同調のスキルカード”
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「ふむ、相性最悪だな」
吹雪いている雪山の中、白髪のゴリラと戦っていた。
目の前のコイツ、イエティを倒さなければ、この試練が終わらない。
とはいえ、僕の斧が最初から氷属性を帯びている事で有効打にならない。
「神代文字を引き出す訓練をしたかったけれど、仕方ない。武器交換――”ゴルドサタン”」
“極寒の忍耐魂”から、黄金の大斧へと持ち替える!
「うッ!?」
急に寒気が!!
「もしかして……忍耐魂には寒さを和らげる効果が?」
この寒さの中で、長くは戦えない!
「“悽愴苛烈”!」
身を削ってでも、一気に決める!
『ウオオオオオオォォォォォッ!!』
僕より大きな雪玉を生み出し、ぶつけて来る雪男!
「”瞬足”!」
躱しながら前へ!
すると、翳した左手から連続で雪玉を発射してきた!
「ハイパワースラッシュ!!」
手に入れたばかりの”大斧術”による、斬撃を繰り出す!
雪玉を斬り散らせながら、雪男の左手を切り裂く。
「瞬足!」
懐に潜り込んで、“振り抜き”の発動を意識。
「”土星斧術”――サタンブレイク!!」
躱すことなど出来ない絶好のタイミングで放った! ――はずなのに、届いてない!!?
「なにかに覆われている?」
まるで鎧のように、青味を帯びた硝子のような物が雪男を覆っている。
――次の瞬間、その鎧が砕け散った!
もしかして、”大斧術”と一緒に手に入れた“圧壊”のおかげ?
アレには、武器が重ければ重いほど鎧や盾を破壊しやすくなる効果がある!
その時、雪男の掌底が迫ってきた!
「な!?」
咄嗟に右腕でガードしようとしたら、掴まれてしまう!?
「くッ!!?」
更には、掴まれたカ所から身体が氷に覆われていく!!
「でも、お前は終わりだ」
左腕の“牛斧の怪力甲”の“斧握り”の効果により、この甲手で掴んだ斧による攻撃の威力は増大する。
だから、利き腕である右を犠牲にした!
「ハイパワーアックス!!」
パワー特化の僕なら――我武者羅に放った一撃でも充分致命傷を与えられるらしい。
上下に両断されたイエティは、血を凍らせながら絶命した。
○クリア報酬を一つ選択してください。
★”雪玉発射のスキルカード“
★“氷光の鎧のスキルカード”
★“凍結掌のスキルカード”
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「早いね、アヤナ、アオイ」
最初にアヤナ、次にアオイが戻って来た。
「五分以内にメガジャイアントボアを倒せって奴だったから、サクッと”光線魔法”で倒してやったわ!」
なるほど。メガジャイアントボアは魔法に弱いし、魔法の中でも高威力の”光線魔法”を使うアヤナとは相性が悪い。いや、良いって言うべきか。
「アオイは?」
「なんか、和風のお城の中を四分間逃げろって奴だった。ヤバそうな鬼が居たけど、倒せなかったから“無名のスキルカード”を無駄にしちゃった」
使用後に、倒したモンスターのスキルカードが手に入るアイテム、”無名のスキルカード”。
モンスターの名前が付いた物が優先されるけれど、名前付きのスキルカードをドロップしないタイプの場合、そのモンスターが持つ複数のスキルのうちのどれかになる。
「逃走系の場合、規格外の敵が用意されてたりするからね」
アオイが遭遇したのは、おそらく酒呑童子。この試練に出て来る奴で、一番倒すのが難しい鬼系のモンスター。
マスターの“ヴェノムキャリバー”を使えば今のままでも倒せるけれど、時間制限の都合上まず不可能。
「そうなんだ。ああ、私が選んだスキルは“熱感知”よ。なんか凄そうじゃない!」
「感知系のスキルの中では、かなり便利だね」
生物系に対してなら、ほぼ全て探知可能。
「となると、”メガジャイアントボアのスキルカード”と中身が被っちゃうね」
「あら残念。ならメルシュに渡しておくわ」
自分から渡すんだ。ちょっと以外。
「アオイはどんなスキルを手に入れたの?」
「これ」
「“大鬼の手”か」
黒い靄から生えた、灰色の大きな手。
「これ、どうやって使うの?」
「イメージ通りに動くよ」
「扱いづらい、大きな武器を持たせると良いよ」
武器の重さに関係なく振り回せるし、本来自分の手や杖からしか出せない魔法とかを繰り出すことも出来るから、使いこなせばかなり便利。
逃走系、討伐系、決闘系。
試練の内容はこの三つのいずれかになる。
そこに時間制限や地形、登場するモンスターなど様々な要素がある程度ランダムに設定されるから、下手にアドバイス出来ないんだよね。
全部のパターンを教えようとすると数日掛かる上に、多分ちゃんと覚えられる人間は皆無。
「まあ、ここで脱落するなら、この先もどうせ無理だろうし」
その後、続々と戻って来た残りのメンバーは、ザッカルとリンピョン以外重傷を負っていた。
5章では、あまり活躍させられていなかったリンピョンなどに出番を与えたいと思ってます。