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ダンジョン・ザ・チョイス~デスゲームの中で俺達が見る異常者の世界~  作者: 魔神スピリット
第4章 ケンシ

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129.黒く揺れ、儚く消え

「ふぃ~、生き返る~!!」


 ルイーサが服をはだけさせ、リビングのソファーにだらしなく腰掛ける。


 ファイヤーロード組は、シレイア以外皆あられもない格好で寛いでいた。


 ……シレイア、モモカの前ではさすがに全裸にはならないか……良かった。


「宝珠、揃ったね」


 土、風、水、火の四つの宝珠、第八ステージの隠れNPCを手に入れるためのアイテムが全て手に入った事を、メルシュが証言してくれた。


「それで、次の隠れNPCはどうするんだい?」

「どうするとは?」


 シレイアの疑問に、疑問で返す俺。


「誰に隠れNPCと組ませるかって話しさ」

「今度の隠れNPCは魔法使いだから、戦士の人間と組ませるべきだと思う」

「なら、俺はどうだ?」


 ジュリーの言葉に、名乗りを上げるザッカル。


「残念だけれど、隠れNPCと契約出来るのは異世界人だけなの」

「なんだ、残念」


 メルシュの説明に、すぐに引き下がるザッカル。


「となると、異世界人の戦士は……ルイーサとアオイか、メグミさんか」


 異世界人の戦士職、結構少ないな。五人しか居ない。


 ただ、獣人は皆戦士で固定されているから、パーティーのバランス的にはちょうど良いんだよな。


「悪いが、私は除外してくれないか。ガラじゃ無い」


 メグミさんが辞退してきた。


「今度の隠れNPCは万能型だし、攻守をこなすメグミさんかルイーサが適任だと思う」


 ジュリーの言葉に、話し合いに参加していた全員の視線がルイーサに向けられる。


「あへ?」


 はしたなく着崩したままソファーの背もたれに脚を掛けているため、色っぽい脚が丸見え!


 ――暑さで火照ったその表情に、ドキッとしてしまった!!


「コセ……今日は私とって約束でしょ」


 軽く耳を引っ張って来たのは、今夜を予約してきたナオ。


 氷と炎の属性に特化させることにしたナオは現在、“氷炎の魔道服”という赤い炎の紋様が入った淡い青の服を着ている。


 メルシュ以外の魔法使いは、皆ほとんど同じデザインの服を着ていた。


 同系統、同性能の衣服装備みたいなので、ほぼ色違いなのだろう。


「ちょっと、聞いてるの?」

「うん、聞いてる」


 石階段の町に着いてからはスタンピードラットの駆除を優先していたため、未だにジュリーとナオとはそういうことをしていない。


 二十兆匹を包囲殲滅するまでは俺は昼に、二人は夜の町に現れるネズミを退治していたため、時間が合わなかったのだ。


 モモカが一緒に寝たいと言えば、その日はお預けになってしまうし。


「もしかして、嫉妬?」

「当たり前でしょ。ライバル多すぎるんだから……不安になっちゃうよ♡」


 年上のナオにデレられると、変な気分になってくる!



             ★



「ん♡ ん♡♡」


 夜、ベッドに腰掛けながら、ナオとキスしている。


「ん♡ ……もっと、キスして♡」

「俺は、これからこの世界で生きていく。複数の女性と一緒に。それでも良いんだよな?」

「……正直、コセには私だけを見ていて欲しい。でも、それだとコセは私を選ばないでしょ?」


 誰か一人だけと言うのなら、俺はトゥスカを選ぶ。


 そこだけは、まったく揺るがない。


「ごめん」

「謝らないで……分かってるの。自分がそんなに良い女じゃないって」

「ナオは……充分綺麗だよ」


 本気でそう思ってる。


「分かってるでしょ、私の言いたいこと」

「…………多分」


 俺の中で、ナオとトゥスカでは大きな開きがある。


「トゥスカは、私よりずっと貴方を愛してる。あの子と比べたら、私の想いは薄っぺらいって……最近思うようになったの」


 ナオの目は、怖いほどに落ち着いていた。


「私はきっと、最後まで一緒には行けない。そんな気がするから……」


 アヤナと、似たような事を考えているのか?


「それでもね、貴方に愛されるような女だったって……そう思い続けたいの」


 ナオが身を寄せてくる。


「ナオ……」


 どこかで、俺とトゥスカが立っている場所と、ナオと他何人かが立っている場所が、根本的に違うと感じていた。


 初めて会った頃のユリカにも、血の繋がった家族に対しても、同様の感覚はあった。


 でも、最近のユリカに対しては感じなくなってきている。


「諦めるな、ナオ。まだそうなると決まったわけじゃない」

「……うん、そうだよね…………ねえ……シよ♡」


挿絵(By みてみん)


「うん」


 再び唇を重ね、彼女の下着を脱がせていく。

 

 どこかに消えてしまいそうなナオをこの世界に縫い止めようと、俺は執拗にナオのぬくもりを求め、ナオもまた、俺をたくさん求めてくれた。



●●●



 変な気分だ。


 シレイアさんに“波紋龍の太刀”を取り上げられた時に言われた事が、ここ数日頭から離れない。


「ん♡♡ あ♡♡ ん♡♡」


 ナオさんの喘ぎ声が、扉越しに僅かに聞こえて来るも……今までみたいに全然ワクワクしない。


 夜の雰囲気と私の内心、二人の営みの気配が交じり合い、私の意識をグニャグニャに歪めてくる。


 学校の同級生が和気あいあいと話している時によく感じた、歪な孤独感。


 私だけが、皆とは別の場所にいるような感覚。


 よく変な子扱いされる私の方が、きっと異質なのだろうと、あの頃は思ってた。


 ……最近、黒い感情が湧き上がってしまう…………気がする。


 今まではもっと静かで、青い世界に時折さざ波が起きる程度だったのに。


 その原因は多分…………。


 私は、そっと自室に戻った。



●●●



「……変な感じ」


 夜が明け、私はコセを起こさないように部屋を出た。


 バルコニーで風に当たりながら、下腹部を撫でる。


 夢のような一時だった。


 恋人ごっこが、家族に変わった。ううん。今まさに、私の中でコセが私の夫になろうとしている。


 遊びじゃなくて、私を本気で大事にしようって気持ちが伝わってきたから。


「どうしよう……幸せすぎる♡」


 幸せすぎて……この世界から私が、光になって消えてしまいそう。


 ……私はいつまで、皆と一緒に居られるのかな。


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