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111.雨降る夜に

「……」

「……」


 ユリカの告白ののち、俺は今夜ユリカと寝るように調整した。


 結果、明日はジュリー、明後日はナオの約束までされて。


 ちょっと、トゥスカの顔が怖かった……気がする。


 本当に良いのか? っていう自問自答がさっきからずっと!


「雨、降ってきたわね」


 俺の寝室の窓が、あっという間に濡れていく。


 まるで、それは過ちだとでも言うように。


「きゃ!!」


 雷が鳴った瞬間、抱き付いてきたユリカ。


 その主張性のある胸が押し付けられる!


「雷、怖いの?」

「うん、子供の頃から苦手で」

「ジュリーがしょっちゅう使ってるだろう」


 ジュリーの基本戦闘スタイルは、雷による攻撃。


「アレとは……なんか違うのよ! こう……人工の雷と制御されていない雷とは!」

「まあ、自然の雷の方がエネルギーが大きそうだよな」


 ユリカの違う発言は、なんとなくだけれど解る。


「コセは……私のこと、本当に好き?」


 急に悲しげになるユリカ。


 黒髪の左右を、肩辺りから三つ編みにしている黒縁眼鏡の女子。


 よく見ると、結構美人だ。


「……トゥスカと比べてで言えば、トゥスカ程じゃない」


 出会った頃は、むしろ嫌いだった。


 少しずつ、ユリカの纏う空気感が変わっていって……愛しても良いって思えるようになった。


 発想が生意気だな、俺!


 最初は、名前すら憶えたくないって思ってたのに、告白してきた辺りから、雰囲気が嫌な物じゃなくなってきて……。


「まあ……それでも良いって思ってはいたけれど……面と向かって言われるとムカつくわね」


挿絵(By みてみん)


 眼鏡を外して、あっという間に服を脱ぎ捨ててしまうユリカ。


 トゥスカより肉付きの良い、綺麗でエロい裸身を……稲光が彩る。


「私、初めてなんだからリードしてよ」


 このちょっと無慈悲な物言い。根っこの部分は変わらないか。


 俺も着ている物を脱ぐと、突然ユリカによってベッドに押し倒された!?


「リードしろって言っておいて」

「あんたなんて、私のエロおっぱいで私に夢中にさせてやる! ん♡ ん♡」


 上に乗っかってきて、強引に唇を奪われ、熱烈なキスが繰り返される。


 グニュグニュと胸に押し付けられる大きな脂肪の感触は、未体験の領域。


 生意気なユリカの鼻っ柱をへし折るため、俺は徐々に主導権を奪うことにした。


 まずは好きなようにキスをさせながら、お尻を攻略していこうか。



●●●



「あ、痛」

「大丈夫か?」

「うん……大丈夫」


 扉の向こうから、初々しいやり取りが聞こえてくる。


 とうとうご主人様が、私だけの者ではなくなってしまった。


「ん♡ ん♡ あ、もう痛くないかも♡」

「少し早くするぞ」


 私自身、ご主人様が他の女に手を出すのを勧めていたから、この結果は最初から受け入れるつもりで居る。


 でも……苦しい。


「ちょっと良いですか」


 誰かが、私の横に来てドアに耳を当てた!?


 しまった! 私としたことが、全然気付かなか……ユイは、いったいなにをしているの?


「そこ良い♡♡ 良いよ♡♡♡」

「ユリカの胸、触っても良い?」

「コセにだけ……特別だよ♡」


 ドアの向こうから、凄い甘い会話が!


「トゥスカさんとはまた別の……クフー! リアルハーレムのお人は、とうとうリアルハーレム王への道を拓かれたのだ!」


 この子は、神妙な表情でなにを言っているのだろう。


 ていうかさっきの発言……まさか、昨日までの私とご主人様のアレも盗み聞きしてた!?


「……ユイさん、ちょっとこちらへ」

「ちょっと雨の音が邪魔だな……へ? なんですか、トゥスカさん?」


 腹いせに、獣人流の上下関係を一晩掛けて叩き込んでやった。



●●●



「ああ♡♡! どんどん、出来上がってく♡♡! 身体、変になってく♡♡♡!」

「ユリカ、キスしよう」

「ん♡ チュパッ、んん♡♡」


 トゥスカとユイの遠ざかっていく後ろ姿を目撃後、私はサトミとリンピョンに誘われるまま、またここへ来てしまった。


 どうして私が、こんな低俗な真似を。


「とうとうユリカも。羨ましいけれど……これで私が入り込む隙が出来たと思えば!」


 発想が野蛮だぞ、サトミ。


 サトミは悪い奴じゃないんだが、ちょっと……個性的と言うか。


「サトミ様の後で良いので、私にもチャンスを恵んでくださいね」


 リンピョン……類は友を呼ぶということか。


「メグミさんも、一緒に頑張りましょうね」


 やる気を漲らせて応援してくるリンピョン。


「…………なにを?」

「もちろん、コセと夫婦になる事ですよ」


 神代文字を引き出した資質とか、人格的な部分はそれなりに評価しているし、信頼もしているが……私は一対一の恋にしか興味ないぞ。


「メグミちゃん、コセさんに結構興味あるでしょ?」

「……いや、別に」


 今世で出会った者の中では……まあそうだけれど、出会った頃にはもうトゥスカという彼女が居たから、そういう相手として対象外だった。


「サトミは、なんでそんなに――」



「サトミ、メグミ、リンピョン……そこで何してる」



 ――お腹が重くなるような、コセの低い声が!!


 調子に乗って騒ぎすぎた!


 しかも、完全に面子を特定されてる!


「……逃げよう」


 私が提案したときには、サトミとリンピョンの姿は消えていた!?


「アイツら……!」


 私を見捨てて逃げやがった!!


「メグミ……言うことはないのか?」


 この逆らったら良くない事が起きそうな、運命が敵に回りそうな感覚…………良いかも♡


「も、申し訳ありません」


 落ち着け、相手は少なくとも二股男。


 私の好みとは合わないだろう。


「そうか、さっさと部屋に戻れよ」

「……はい」


 普段あんなに優しいのに、この上位存在に叱られたような感じ。


 そう言えば、最初に会った時にも似たような空気感を纏っていた。


 部屋へと戻りながら思う。


「コセなら、サトミ達も幸せにしてくれるかもな」


 いつの間にか、雨が止んでいた。



●●●



「メグミ……堕ちたわね」


 さすがマスター。


 メグミは、神格が芽生えつつあるマスターの気に触れ、上下関係を自然に自覚したようだ。


 であれば、ネガティブ系の思考支配の影響が薄いのは間違いない。


 まあ、上下関係より互いに敬い合える関係の方が理想的だけれど……マスターとメグミは、割と良い線行ってる?


「もう少し、腹を割って話してみても良いかもね。メグミとは」


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