表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/956

110.それぞれの不安

「ハイパワーブーメラン!」


 リンピョンちゃんが放った丸鋸が、ギガントの胴体を半分ほど切り裂く!


「“竜光砲”!」


 メグミちゃんが、左手に持つ盾の先、竜の顎から光線を放つ!


 総TPを半分消費して放つという、クエストの討伐報酬で手に入れたスキル。


 竜属性が含まれている、“魔力砲”のTP版らしい。スキルランクはS。


 メグミちゃんの盾、”ドラゴンの顎”から放つと竜属性の攻撃が強化される効果があるそうだから、そのせいかしら? ――一撃でギガントの胸から上が消滅し、膝を着かせた。


「サトミ!」


 ――いつの間にか、頭が吹き飛んだギガントの腕が私に向かって伸びてきている!?


 光になるまで油断するなって、こういう事ね!


「”暴虐の風”!!」


 メルシュちゃんが選んでくれた“ルドラの装身具”の効果を、左腕から発動する!


 一日三回だけ発動出来る強力な風で、ギガントの左腕を削り弾くように消し飛ばした!


 リンピョンちゃんがギガントの胴を円鋸で切り裂くと、ようやく光に代わっていく。


「……フー」

「大丈夫か、サトミ?」

「無事ですか、サトミ様!?」

「うん……大丈夫」


 アヤちゃんが居ない事に、こんなにも動揺している自分が居る。


 どっかで私は、アヤちゃんの存在に甘えていたのかもしれないわね。



●●●



 ルイーサがおかしい。


「はあああああッ!!」


 手に入れた美しい大剣を右手だけで振るい、コセから借りた剣盾でギガントの攻撃を去なし、一人でギガントと激しい攻防を繰り返すルイーサ。


 私達が出会ったのは、第一ステージのボス部屋前。


 私とアオイは皆で苦しむ方を選び、ルイーサは一人を選んだらしい。


 だから、私達がボス部屋より前に出会うことはあり得なかった。


「“闘気剣”!」


 ルイーサが聖剣に青白い光を纏わせ、ギガントを斬り付ける。


 武術スキル程の威力は無いけれど、合わせて使えば威力が底上げされる便利なスキル。


 使用中はTPが減り続けるらしいから、長期戦には向かないらしいけど。


「ハイパワースラッシュ!!」


 飛び上がり、首を切り落とすルイーサ。


 あの時……ルイーサが、魔神・四本腕の胴体を切り裂いた時と同じ光景。


 最初のボス部屋前で、推奨Lvに達していても頭数が足りないことに悩んでいた私達姉妹は、たまたまそこで出会ったルイーサとパーティーを組み、そのまま今日までやって来た。


 いつもは泰然としていて、おかしな事を口にして私の緊張をほぐそうとするくせに……あんな風になったのは、あの子が死んだ時以来。


 第二ステージに挑むとき、色んなパーティーと一緒に進める方と自分達だけで進む二種類を選べた。


 その時、ルイーサは自分達だけの方を選択したのに、私はいざという時助け合えるかもしれないと言って、色んなパーティーと一緒に進める方を選ばせた。


 私の不安が、そうさせた。


 結果、他パーティーに襲われて……奴隷として買った少女、リスの獣人の子を死なせた。


「フー……先へ進もう。アオイ、アヤナ」


 でも、ルイーサは私を責めず、自分を責めた。


 時間と共に傷は癒えていったけれど、まだ……傷跡は残ってる。


 多分、一生消えない傷跡が。



●●●



 ギガントを倒し続けること十数回、ようやく洞窟エリアの終わりが見えてきた。


 洞窟の向こうには、紫、ピンク、青が混じった空と、常に右側から下へと水が僅かに流れ落ちていっている石の坂が。


 洞窟の前、坂の半ばには幅の狭い平たい道が湾曲状態で続いており、ここを真っ直ぐ進まなければならない。


 安全エリアは、洞窟出口手前に用意されていた。


「予定どおり、今日はここまでにしよう」


 見送りの兼ね合いもあり、出発が昼過ぎになったから、もうすぐ夕方だ。


 この先は足を滑らせやすいから、集中力が途切れると危険。


 まあ、俺は“壁歩き”があるし、メルシュは魔法で飛べるから、この中で一番危ないのはトゥスカだな。


「皆はどこまで進みましたかね?」

「無理をしていなければ良いけれど」

「館に戻って確認しよ」


 メルシュの提案どおり、俺達は”神秘の館”へと

戻った。



●●●



「いよいよ明日ね、ユリカ」

「お、おう……」


 明日、私のパーティーは隠れNPCの入手条件を満たさねばならない。


 そのために夕食後、リビングでジュリーが隠れNPCの入手法のおさらいをしてくれていた。


「川地帯を抜けると林道に入るから、わざと踏みならされた道から外れて、右に進んで。そこに現れるタイラントというモンスターを倒して、“天地の大力の腰帯”を手に入れる。それで入手条件を満たせるから」


 その条件を満たして、次のステージに進んだら隠れNPCを入手。そしたら私は、隠れNPCを持つ者とはパーティーを組めなくなるから、コセ、ジュリー、ユイとはパーティーを組めなくなるということ。


 実質、パーティーリーダーをやらないといけなくなる。


 私がリーダーとか……不安だ。


「ルイーサは……ダメ?」


 パーティーリーダーを長くやってるみたいだし、私よりも隠れNPCを仲間にした方が良いと思うんだけれど……。


「第六ステージの隠れNPCはバリバリの戦士系だから、ルイーサには魔法使い系か万能タイプの隠れNPCを組ませたいんだ」


「そういう計算もしてるんだ」


 色々考えてんだね、ジュリーは。


「まあ……単純に、まだ信用しきれないって言うのもあるんだけれど」

「アオイはなに考えてるか分からないし、ルイーサはちょっと変な奴だけれど、三人ともいい人だと思うわよ?」


 この世界に来る前の私の友達に比べれば、かなりマシだ。


 ナオとアヤナは……まあ。


「二人共、ちょっと良いか?」

 

 そこに、コセが割り込んできた。



●●●



 ユリカとジュリーを、三階のエントランスに連れて来た。


「俺……二人との事、真剣に考えようと思ってる」


 ナオを受け入れると決めたとき、真っ先に思い浮かんだ二人。


 ノーザンやタマにも明確に好意を示されたけれど、二人に対して程……こう、家族云々のイメージが湧かない。


「このゲームを終わらせた後にって話をしてたけれど……二人が本当に望むなら、今からでも……妻として接したい」


 レプティリアンの件とか、モモカの存在により忘れていたけれど、ナオを妻にするって決めた以上、疎かにしたままじゃいけないと思った。


 別れ際のカズマさんの言葉に、触発されたのもある。


「でも……ナオとはシてないよね?」


 ユリカの言葉が予想外だったため、動揺してしまう!


「ああ……うん。そういうのは、さすがにゲームを終わらせた後で良いんじゃないかな?」


 どっちにしろ、今の状況下で子供を作るわけにはいかないし。


「でも、トゥスカとは毎晩のようにシてるよね?」


 ジュリーの言葉が耳に痛い。


「別に毎日じゃ……その日の体調とか、最近はモモカが一緒に寝たがるからあんまりシないし」


 なんでこんな話に……。


「時々さ……怖くなるんだよね。あの槍男みたいな奴に……コセ以外の男に、無理矢理初めてを奪われたらって思うとさ……」


 ユリカの深刻そうな告白に驚く。



「だからさ……私の処女、もらってよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ