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106.十五人のクエスト報酬

「悪いな、疲れてるだろうに」

「いえ、お世話になりましたから」

「お互い様だよ。お前らが居なきゃ、俺達家族はとっくに餓死してたぜ」


 第七ステージの入り口で、私達”乙女騎士団”三人は、命の恩人であるカズマさんのレベリングを行っていた。


 私達が居なくなった後、身重の奥さんと子供達だけになってしまうため、せめてカズマさんのLv上げで恩返ししようとしているのだ。


「キキ!」

「パワースラッシュ!」


 カズマさんが短剣で、猿のような小悪魔、インプを両断して仕留める。


「良い剣だな。もらっちまって良いのかい、ルイーサ?」

「どうせレプティリアンから手に入れた物ですから。私達に必要が無い武具は置いていきますので、護身用か金策にでも使ってください」


 カズマさんと私達は、最低限の武具以外は売り払い、半年間そのお金で食いつないでいたから、本当になにも残っていないのだ。

 

「コセって奴と一緒に行くんだろ? いつ頃になる予定なんでい?」


「まだ、その辺は話し合っていません」


 今朝の激闘が、遠い日の出来事に思える。


 私達”乙女騎士団”は、今後コセ達と協力して攻略を進めるという条件で、レプティリアンとの戦争に手を貸してもらった。


 それまでに、少しでもカズマさん達のために出来ることを。



●●●



 激闘の翌日の昼前、ノルディック側として協力した十七人とモモカで、クエスト報酬が置いてあるという塔にやって来た。


「「……凄い」」


 アヤナとナオが、目をキラキラと輝かせていた。


 目の前に大量の武器や防具、装飾品が整然と並べられていればな。


 少なくとも、百種類以上はある。


「どの武具を手に入れるかは、俺達と相談して決めるからな。勝手に選ぶなよ」


「ああ、分かってる」


 ルイーサ、初めて会った時と違って大人しいな。


「メルシュ」

「ちょっと待ってねー」


 緑味を帯びた白髪の少女が、一通り見て回る。


「メグミにはこれかな」


 竜の頭がくっ付いた、大盾を指差すメルシュ。


「これは?」

「”ドラゴンの顎”、Aランク。攻撃と防御両方に使える、大盾に分類される防具だよ」

「ランクが高い大盾が欲しかったところだ。異論は無い」


 メグミさんがチョイスプレートを操作すると、チケットが輝きながら空中に出現。


 ”ドラゴンの顎”に吸い込まれると、”ドラゴンの顎”も消えた。


「あれ? 消えちゃったけれど?」

「大丈夫、ちゃんと手に入ってる」


 サトミさんの言葉に、メグミさんがチョイスプレートを見ながら答えた。


「私はこれでしょう!」


 リンピョンがはしゃぎながら持ってきたのは、盾にもブーメランにもなる、円剣に分類されるという武器。


「”殺人鬼の円鋸(えんのこ)”、Bランク。うん、私が目を付けてた奴だ」


 物騒な名前だな。

 見た目も、ギラギラとした黒と銀色主体で、所々血がこびり付いたように赤く光を反射している。


「よし!」


 チケットを使うリンピョン。


「サトミはこれ、”ルドラの装身具”、Aランク」


 金の板に、緑の薄い布が付いている。


「これって、どこに付ける物なの?」

「その他装備で、腕に着けるの。利き腕と逆に装備されるよ」


 使い方をレクチャーしている間に、離れた場所で光が?


「マスター、自分で選んだのかい?」

「うん……これ、気に入った」


 チケットを使ったのはユイらしい。


「”波紋龍の太刀”って言うんだ……格好いい」


 黒い柄と、龍のうな波紋が浮かぶ銀と金の刀身の日本刀。


「Sランク……”刀剣術”がなきゃ宝の持ち腐れになるとは言え、こんなもんが用意されているなんてね」


 これで、Sランク武器所持者がまた増えたな。


「シレイアさんは選ばないの?」

「隠れNPCはチケット貰えなかったみたいでね。まったく、ケチケチしやがって!」


 獣人のトゥスカやレプティリアン扱いのはずのモモカは貰えていたし、純粋に隠れNPCだけが対象外だったようだ。


 突発クエスト中、異空間に居たカズマさん達はチケットを貰えていないらしい。


「タマはこれね」


 メルシュがタマに差し出したのは、畳んだ状態の傘側面が内側に湾曲したような、綺麗な群青色のランス。


 柄は長めで、四角錐の底面側の角に丸いパーツがくっ付いている。


「あの……私、槍は強力なのが二本もある――」

「”蒼穹を駆けろ”っていう、Bランクの槍だよ」

「今更Bランクは……移動速度を上げるようなその他装備を……」

「これね、空を飛べる槍なんだよ! お得だよ! イケイケなんだよ!」


 どれだけ必死に薦めてるんだよ、メルシュ。なにかあるのか?


「タマ、メルシュを信じてあげてくれ」


 考えがあるはず……多分。


「コセ様がそう言うのなら……」


 渋々チケットを使用するタマ。


「マスターには、これが良いんじゃないですかね!」


 サキがジュリーに差し出したのは、銀の幅広の刃が生えた黄金の甲手? 


「これは?」

「”轟雷龍の剣甲手”、Aランク。”雷光の甲手”の上位互換と言って良い性能ですよ♪ 多機能な分、使いこなすのが難しいですけれど♪」


 あの二人、モモカの存在によって急に距離が縮んだ気がする。


「これは使えそうね」


 サキを信頼しているように見えるジュリー。


 突発クエスト終了直後に初めてサキに会った時は、ジュリーはサキを嫌っているようにすら見えたのに。


「ユリカさんにはこれですかね」


 サキが差し出したのは、紫の宝石が嵌められた黒い指輪。


「か、格好いい指輪♡」


 ユリカ、ちょっと厨二病っぽい。


「”煉獄王の指輪”、Sランク。煉獄系のみの強化だけれど、すっごくパワーアップするんだよ♪」


「気に入ったわ! これにする!」


 嬉々としてチケットを使用するユリカ。


「アオイ!」

「とと」


 シレイアが投げてアオイに渡したのは、普通の剣と柄の向きが九十度違う短剣?


 意匠が、メグミさんの”ドラゴンの顎”に似ている。


「これは?」

「”ドラゴンジャマダハル”。突きと切り、両方に使えるAランク武器さね」


「……良いね」


 刃六十センチ程のそれを何度か振るい、感触を確かめたのち、そう呟くアオイ。


「アヤナはこれかね。”花紋の盾の指輪”、Sランク」


「あら、可愛いじゃない。良いわ、これにする」

 

 花をあしらった、イギリスのティーセットを思わせる意匠の豪奢な指輪。


「ナオはこれ。”ドラゴンナックルバスター”、Aランク」


 メルシュがナオに渡したのは、指に嵌めて拳の威力を上げるメリケンの類い。


 こっちも、”ドラゴンの顎”の意匠に雰囲気が似ていた。


「もっと女の子らしいのは……」

「マスターは、役に立つ女の方が好みだと思うけれど?」

「なるほど、確かに」


 二人は、俺をなんだと思ってるんだ?


「ノーザン、選んじまったのかい?」

「この斧に、運命的な物を感じたので」


 シレイアにノーザンが見せたのは、大きな刃と逆側に小さな刃が付いた、片手と両手の両方に対応した青い斧だった。


「”極寒の忍耐魂”か。さすがだね。良い物を見付けたじゃないか」

「そ、そうですかね?」

 

 ちょっと照れているノーザン。


「トゥスカにはこれ。”古代王の転剣”、Sランク」


 メルシュが、”古生代の戦斧”に似た雰囲気のV字ブーメランを差し出す。


「良いですね」


 これで、トゥスカはSランク武器が二つか。


「コセ。私、これが良い!」


 モモカが気に入ったのは、ユリカが使っている”塵壊の鉤爪”と同系統の大きな鉤爪。


 黄金の装甲に銀の爪が生えた、綺麗で格好いい鉤爪だ。


「も、モモカちゃん、こんな可愛くない武器は危ないよ!」


 サキが思い留まらせようとしている。


 危なくない可愛い武器って、それはもうおもちゃだろ。


「そうだよ、モモカ。こっちのなんてどう?」


 ジュリーが、適当にネックレスを手にする。


「いや!」

「「そんなぁ~」」


 俺のジュリーへの認識が、どんどん変わっていく。


「コセ~……」

「メルシュと相談してみようか。モモカにぴったりの物を見付けてくれるさ」

「うん、分かった♪」


 またお手々繋いでくれるモモカ。


「コセ、ずるい」

「昨日、モモカちゃんと一緒に寝たし」


 モモカが俺とトゥスカが良いって言うんだから、仕方ないだろう。


「それ、”ドラゴンキラー”だね。竜属性と”竜殺し”の効果があるAランク……うん、モモカのスキルとも合うし、良いと思うよ」

「ありがとう、メルシュお姉ちゃん♪」


 モモカがメルシュにハグする。


「べ、べべべ、別に、正直に言ったただけだし……」


 どもるほど照れなくても。


「これは……」


 ルイーサが、美しい白と銀の大剣を見ながら、呆然としていた。


 刀身以外は白く、刀身下部の装飾部分には二人の女性が短剣越しに向き合う様が描かれていた。


「”ヴリルの聖剣”、Aランク。これが気になるのかい?」


 シレイアが、探るようにルイーサの隣へ。


「……ああ、気に入った」


 チケットを使ってしまうルイーサ。


 ――今一瞬、彼女が人間離れして見えた。


「あ、マスターにはこれ上げる」


 メルシュが差し出してきたのは、竜を模った大剣。


「”グレイトドラゴンキャリバー”、Aランク。これも竜属性の力が宿ってるから、今のマスターにピッタリ」


「ありがとう」


 メタリックブラウンの柄と刃に、牙のような銀の刀身と黄金の装飾。


 見惚れるような、格好いい大剣だった。


「ちょっと試してみたいな」

「なら、私が相手になろう」


 手合わせを申し出てきたのは、ルイーサだった。


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